問題を解くときに、非常に時間がかかる生徒もいれば、なぜそんなに速いの?と思えるスピードで解く生徒もいます。
いつも時間切れになるので数学の点数が悪くて困っていたり、逆に、スピードは速いが雑でミスばかり出てしまうので、どうしたらよいかお困りという方もみえると思います。
問題を解く速さは、
①問題文を読み取るための時間
②問題の意味を把握する時間
③解答のための内容について思考する時間
④筆記をするための表現を検討する時間
⑤現実に筆記する時間
以上の時間のトータルで決まります。したがってこの過程のどこかで時間が必要以上にかかれば、相対的に遅くなるわけです。
問題文を読み取り、意味を把握する時間が長い(①②)生徒はすぐにわかります。問題文をじっと見て首をかしげていたり、困った顔をしているからです。この場合は、問題文の趣旨を読み取れるようにする練習を繰り返していくうちに、問題の類型というものがだんだんわかり、それに伴い時間も短縮できるようになっていきます。練習が効きやすい場所です。
解答の内容を考える時間(③)は、その分野の理解度と自分の思考を現場で整理する速さ次第にはなりますが、決断の速い生徒と遅い生徒で大きく違いがでるのはこの過程だと思います。
表現の仕方を検討する時間(④)、たとえば計算式の具体的順番をどうするなどを検討する時間については、これも①②と同様に問題慣れをすれば基本的に速くなりますが、文章をどう書くかといったことになると、文章を頭で浮かんだ順にスイスイ書ける生徒もいれば、書くことがほぼ決まっているのにそれをなかなか書けない生徒もいます。ここでも決断の速さと相関する部分がでてきます。
筆記する時間(⑤)は、多くの生徒でさほど変わりがありませんが、中には人が読めないような乱雑な文字を猛烈なスピードで書く者がいる一方、丁寧に書道のように書いて時間がかかる生徒もいます。
解くスピードが遅い場合には、自分が①~⑤のどの段階に時間がかかっているのかに気づくことが大切です。理由がわかればそこを意識して変えていくことで改善をすることができます。
時間を計って、繰り返し練習をたくさんやれば速くなるはずと思って、とりあえずドリル的な学習で対策を行う人が多いのですが、機械的な練習で速くなる部分と、そうではなく意識を変えないといつまで経っても速くならない部分とがあります。
まずどこで時間を食っているのか確認してから取り組むのと、そうでないのとでは効果がかなり異なってくるでしょう。
練習が効くところについては、気づきさえすれば早期に修正もできますが、決断の速さで変わる部分については、人の個性や意識の持ち方にも関わってくるため、なかなか短期に変えていくことは難しい気がします。
わたしのところでは小中高一貫指導をしています。そのため長期的に生徒を見る機会があるのですが、決断に時間がかかるという生徒も、意識をしてアドバイスを繰り返しているとだいたい1年以内程度、遅くても2年くらいまでにはかなり速さが変わってきます。
そして、時間がかかる生徒は慎重に解くタイプが多いので、スピードが伴ってくると成績も安定する傾向が高いです。
逆にどちらかというと、むしろスピードがあるが雑でミスが多いというタイプの方が、より軌道修正には時間がかかる気がします。とにかく速く結果を出したいという気持ちが強いからでしょうか。
またこのような場合、速くやって見直しをしても多くの場合自分でミスに気づくことは難しいので、苦戦することがわりとあります。
けれども、たとえば「わかった!」即解答というパターンを、「わかった!」一呼吸おいてから解答、という形に変えていくだけでも正答率がかなり違ってくることもあります。
時間はかかりますが、やはり解答をするときの意識と手順を地道に変えていくことがここでも一番重要かと思います。