計算ミスには個人差がある
数学でも算数でもあるいは理科や他の科目でも、計算はいろんな場面で登場します。
計算が正確であることは、最終の解答がマルになるかどうかを左右するため、学習においては常に軽視することができない事柄と言えます。
生徒に計算のことを聞くと、
だいたいの生徒は「計算はたぶん大丈夫」と答えます。
複雑な理論系の問題や文章問題に比べたら、苦手意識を持っている生徒はわりと少ないのですが
「自分の計算は正確だと思う?」と聞くと、
かなりの生徒は「自信がないです」と答えます。
質問の仕方にも問題があるかも知れませんが、
「ミスが出るかも知れない」という不安要素が計算には常にある、という印象を持ってしまっているということだと思います。
けれども実際には
計算ミスにはかなり個人差があります。
「どうしてこんなにミスがでるのだろうか」と思えるほど単純なミスを繰り返す生徒もいれば
「この生徒はうっかり間違えるということはないのだろうか」と感じてしまうほど正確な生徒もいます。
なぜこのような差が生じてしまうのでしょうか。
計算ミスの種類
一口に計算ミスといってもいろいろな種類があります。
①内容自体の理解不十分によるやり方の誤り
②やり方は知っているが注意点を見過ごしたための誤り(例+-の取り違えやかけるところを割ってしまうなどのミス)
③ケアレスミス
そして理解不十分(①)といっても不十分の度合いはそれぞれ違います。
思い込みで誤っている場合もあれば、そもそも計算法を知らない、あるいは中途半端にしか覚えていないなどいろんな段階があります。
注意点を見過ごす場合(②)も、たまたま違ったやり方をしてしまった場合もあれば、どうしてもついその誤ったやり方を使ってしまうということもあります。
理屈では分かっているが実践が伴わないという状況です。
ケアレスミス(③)については、過去にも何回か記事に書きましたが、それが出る状況は千差万別です。
ちょっとした取り違えから転記ミス、頭の中で思っていた答えと違うことを気付かずに書いてしまうなどいろんな例があります。
自分が汚い字を書いていて「6を0」「0を6」のように書いてしまい、
それを自分でも見誤ってミスになるというような雑な筆記による誤りなども、わりとポピュラーなケアレスミスとしてあります。
計算ミスが出る心理は実は共通
このようにいろんな状況によるミスがあるわけですが、
ミスが圧倒的に多い生徒と、逆にほとんどない生徒が現れるのはなぜでしょうか。
単に「頭が良い悪い」「事務処理能力の違い」と言ってしまえばそれまでですが、
私はミスが出ない生徒とそうでない生徒の間には、ベースとなる心理面での大きな違いがあると思います。
ミスがほとんど出ない生徒と話をしていると
ごくたまに出たミスを見て、
大きなショックを受けていることがあるのに気がつきます。
そして様子を見ていると、かなり真剣に間違いの理由を探っています。
さらにそのミスが二度と出ないように私たちに類題を求めてきたりすることも多いのです。
つまり「ミスが許されないレベル」をかなりハイレベルなものとして自分の中で設定しているのです。
分かりやすい言葉で言うと
「とても几帳面」
「とてもチェックが細かい」
「自分に厳しすぎるくらい」
というような表現になるかと思います。
ミスが出ない理由としては十分納得ができるところです。
アバウトこそ敵
反対にミスが多い生徒は、ケアレスミスのように心理的面でどうしても生じてしまうものは別ですが
総じて、ミスについてのとらえ方に甘さが見られます。
ミスが出た際に
「たまたま間違えちゃった」
「次は気をつける」
「慣れればできるようになるだろう」
という見積もりの甘さがあることが多いように思います。
ミスを根絶するためには、次の3つの点の振り返りと検討がとても重要だと思われます。
① どうして間違えたのか
② 間違えた時と正解できた時の違いは何か
③ 今後間違いをゼロにするためにやるべきことは何か
しかしミスが多い生徒ほど、これについてしっかりと確認・検討をすることを先延ばしにしていることが多いように思います。
こちらは分かりやすいちょっと厳しい言葉で言うと
「アバウト」
「その場しのぎ」
というような表現になるかも知れません。
意識を変えればミスを防止できる
ここでは何も精神論を論ずるつもりはありません。
あくまでちょっとした意識の違いについての話です。
ミスが出るか出ないかは
もちろん学習の度合いや理解度などにより左右されてくるわけですが、
「自分は、計算はいつでも『精密にやる』」と思って計算の学習をすることが
実はミスを減らしていくために何よりも重要なことではないかと思います。
発想として
「ミスは出てても当たり前」と思ってやっているのと
「絶対ミスをしないようにやっていく」というのでは
自分の学習の精度が全く異なってくるというのは言うまでもありません。
ミスが多いというのは大体の場合、やり方が「粗い」ということです。
これを精密なものにするには、
「精密にする」という意識の転換こそが何より重要なのです。
計算については、論理的な学習の理解度などとは異なり
自分の計算についてのこのような意識の持ち方の違いが、ミスの多さに大きく影響をもっているように思います。
言ってみれば
自分の計算の精密さを測る「精密さの定規」の目盛りを、
今よりも1ケタも2ケタも小さい目盛りに変えていくということができれば
実際の計算でもミスはぐんと減るはずです。
「これくらいで多分正解」を
「本当にこれくらいで正解なのかな?」へ
「もう次は間違えないだろう」を
「今度間違えたら大変なことになる」へ
変えていくということです。
意識の違いがきっと良い結果を生みます。
ぜひお試しください。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。