途中式を書かない生徒
数学でも理科でも、計算の際に途中式を全く書かない生徒を時々見かけます。
問題の内容にもよりますが、途中式を書かないと思考が具体化されていく過程を自分で確認できず途中で混乱してしまったり、計算ミスも出やすくなります。
そんなときは必ず途中式を書くように指導をしますが、
そういう生徒は、しばらく経つとまた書かないでやっていることも多いです。
習慣を変えることが難しいという例でもありますが
どうして書かないといけないかをしっかり自覚しないまま繰り返しているので、その理由を理解してもらうようにして
徐々に習慣を変えていくようにします。
方程式で式を書かない生徒を観察していたら…
ある時中1の方程式の学習で、式を書かないでいきなり答えを書いている生徒がいました。
最初は正解していましたが途中から間違いが続いたので、式を順に書いていくのが方程式を解く際には必須であることをよく説明しました。
しかし指示したにもかかわらず、しばらくするとまた式を書かずに答えだけ書き、すべて誤答になっています。
さすがに厳しく注意して式を書くように指示をしますが、それでも書きません。
おかしいと思って話を聞くと
式の書き方がよくわからないために、頭の中で順に適当な数字をxに入れて合っているかどうかを考えて答えを出していたのです。
さらに聞くと、何と方程式を習ってからずっとそのやり方をしてきたのだと言います。
大変驚きました。
それで式を順に書いて解く方法を一から指導したところ
すぐ式を書いて正解を出せるようになりました。
この場合は、単にやり方がわからないまま自分流でやろうとしていたということですが、
学習について何となく目の前の事態に流されたままにやっていると、このようにいろいろな事態が起こり得ます。
こういう事態を起こさないためには、自分の頭で主体的に学習ということについて考えていく「考える学習」が重要です。
どうすればよかったのか
では彼はどうすればよかったのでしょうか?
方程式を学習するとき、最初にXに順に数字を入れて方程式が成り立つかどうかを確認する学習をやります。
おそらくそこでXに数字を代入して確かめていくことをやったので、
それでできると思って暗算(順に整数を入れて答えを出すやり方)をするようになったのだと思います。
しかし、たとえば次のような問題を頭の中だけで解くのはよほど大変です。
まず普通の人は時間をかけても、なかなか解を思い浮かべる(Xに入る整数を当てる)ことができないと思います。
2X-5(X-1)=5
普通に解くと
2X-5X+5=5
-3X=0
X=0
そうです。解は0なんです。
順に数字を入れていくという意識で数字を思い浮かべるやり方をするときに、
人は順に1を入れ、2を入れ、-1を入れ、-2を入れという風にやっていきますが
なかなか0を浮かべて計算をするという発想はしません。
だから浮かぶまでに相当時間がかかるでしょう。
もちろんこのような問題でなくても分数や小数の解になる場合もあります。
こんなやり方で正解もある程度の割合であったことが、むしろ驚きです。
少しやってみればこの方法が大変困難なことは必ず気づくはずです。
だから式を書かないそのことよりも、不都合があるやり方をやっているのに、そのまま別の方法を考えることなく漫然と続けていることが大きな問題なのです。
考える学習
実は「考える学習」というのは、何も難しいことではなく、
上手くいかない場合に「別のやり方がないのかな」と一旦立ち止まって考えてみる。
時間がかかり過ぎて困ったら「早くやる方法はないのか」と考えてみる。
間違いがたくさん出たら「自分のやり方は違っていないのか」と考えてみる。
こういう単純なことの積み重ねだけなのですが
合理的でない学習方法を繰り返している生徒は、このようなことは一切考えていないように思います。
「目の前の問題を言われた通りやり、わからなかったら誰かが教えてくれる」
そういう意識が強すぎて、工夫ができなくなっているのです。
単純な計算をいつまでも筆算でやる生徒
逆に、これは以前から大変気になっていたことですが、単純な計算を一々筆算でやっている生徒がいます。
小学生ならともかく、中学生どころか高校生でも見かけます。
たとえば以前「クォーターの数」という稿で書いたような
25×4というものだと計算の工夫という面もあるので、筆算してしまう人もいるかも知れませんが
235×100とか、500×3とか、4530÷10とかいう、ごく簡単なものを筆算でやるのです。
これなどは「考える学習」をしていない典型ではないかと思います。
仮に一度は筆算で計算したとしても、注意して見ていれば
「23500は2つ0をつけるだけだな」
「5×3=15に0を2つつけるだけだな」
「453は0を1つ取るだけだな」
というように気づきがあるはずです。
しかし他人に「このやり方をしなさい」と言われないから、考えることなく漫然と時間をかけてまた筆算をしているのです。
おそらく「考える学習」がなかなかできない生徒は
「自分の学習を楽にしていこうという気持ち」が欠けています。
そして勉強は大変で当たり前と思っているのかもしれません。
学習については
「少しでも短い時間で」
「少しでも手間を省いて」
「より効果的に」行っていくことが重要である
ということを意識していくことはとても大切だと思います。
私は勉強は修行などではなく、結果を出すための単なる手段だと思います。
1日5時間かけないとできない内容を、30分でできる方法があるのであれば、躊躇なくそちらを選択すべきだと思います。
そうすれば残りの4時間30分は別のことに時間を使えるからです。
そういう意識でスタートすれば、おのずと合理的に学習をやっていこうという気持ちが芽生えるのではないでしょうか。
そこが「考える学習」のスタートだと思います。
今後も皆さんのお役にたつ情報をアップしていきます。