【受験の未来】「世界にまだ存在しない乗り物を描きなさい」

▢+△=6

 明治以降現在に至るまで、受験で要求される能力について考えてみると、

それは単純化して言えば、4+2=? というような、与えられた課題を適切に解決する能力でした。 

 

しかし今後は、▢+△=6 「▢と△に入る数字を挙げなさい」というような、未知数を発想できる能力になって来ると思います。

 そこに入る数字は1つではありません。問題文には整数とも書いてありません。

じゃあどうするか?

自分自身で「正の整数なら・・・」「負の整数なら・・・」「もし小数も含むとすると・・・」「虚数なら?」というような場合分けだったり考察をする、これはそんな力が必要な、実は大変深い問題なのですが、

さまざまな数字を候補として考え、そのそれぞれについて色々な角度から検証をすることができる、そんな能力が要求されることになるのかもしれません。

 今回はそんなお話です。

受験制度の発端

 明治維新が成功して新しい国づくりをしようとしていた日本は、とにかく列強諸国に負けない国を急ぎ作り上げるために、藩閥や身分制度の弊害から離れて、個人の能力を基準に優秀な人材を求めようとしました。

 いわゆるエリートを選抜して、天皇の下で諸外国に負けない強い軍事力と経済力を備えていく日本を動かす原動力にしようとしたのです。

当時はまだ、幕末の動乱期を経て生きてきた人が大半であったため、柔軟な発想力と腰の据わった実行力を持つ逸材が各地におり、

いわゆる「立身出世」を目指す競争が良い効果を生み、瞬く間に日本は欧米列強と肩を並べるようになりました。

我が国の受験で問われる能力

 この発想を原点として、我が国の教育制度も、「天皇のための臣民」を育てるという目的の下次第に基礎を固めて行きます。

 当初は、豊かな発想力を重視した柔軟な能力といったものも、おそらく重視されていたのだと思いますが、

高い能力を持った官吏育成という、この時代の教育制度の趣旨から段々とペーパー試験で良い得点を取るという方向に舵が切られて行きます。

 その結果、我が国の受験制度は、「与えられた課題を正確かつ高い品質でこなすことができる者」が合格者となるような制度となっていきます。

 受験制度にも色々あり、口頭試問や思考過程を見る試験なども併用することで様々な能力を見ることも可能です。

しかし日本の受験制度は、大学にもよると思いますが、「いかに暗記能力が高いか」「いかに事務処理能力が高いか」「いかに論理的思考力が高いか」というような、所与の課題への対応能力を見ることが、その中心になっていることは間違いありません。

これが、これまでの受験であったと言えます。

先が全く見えない時代

 これまでの比較的先読みが出来る時代には、このような選抜による制度には、かなり合理性がありました。

いわゆる能吏と言える人物が、状況を精密に分析してバランスの取れた行政施策を考えて、それを実行して行くとともに、

勤勉に努力する国民性を持つ我が国の国民の経済活動を、側面からしっかりバックアップして、それが結果として対外競争力につながるという好循環が見られました。

 しかし昨今、状況が劇的に変化してきています。

世界情勢が刻々と変化しており、昨日まで普通であったことがすぐ過去の事になり、経済情勢についても我が国の事情だけでは到底判断できず、国際的な動きを見て対応していかないと適切な対応はできない時代となっています。

 こんな状況の中で、官僚を始めとする行政のリーダーに必要とされる能力も、従来とは大きく変わってきていると思います。

そこでは「与えられた課題を正確かつ高い品質でこなすことができること」は重要ではなくなります。

なぜならば、AIを始めとする機械でもそういう事は出来るからです。特に行政事務はそういう自動化に親和性が高いように思います。

 それよりも今後必要になって来るのは、四囲の状況を的確につかみ、今やらなくてはいけない「課題」自体を探索して創作する能力です。

「問題を解く」のではなく「問題を発見し創作する」のです。

 その「課題」は、従来のように自動的に流れ作業のように目に見えてやって来るものではありません。

「誰もが気づかない間に大きな問題が忍び寄り、ある日突然それが顕在化する」そんな事がとても多くなりました。そういう事態に対して予防的に対応する能力も必要になります。

 そして最近目立つようになった、民意と明らかにかけ離れた行政の動きを見るにつけ、「世界に冠たる我が国の優秀な官僚」という従来からの高い評価も、今や、少し差し引いて見なくてはいけなくなってきているような気がします。

このままのやり方では、いずれ大変な事態が訪れるかも知れません。

 であるならば、受験制度も新しい時代の流れに合わせて変わっていく必要があります。

現にそういう方向性で、受験制度を変えつつあるところもあるようですが、まだまだ端緒に過ぎません。

しかし、今後そういう流れは大きなものにならざるを得ないでしょう。

 そしてこれは、何も官僚になるための受験だけの話ではなく、これからの受験全体としての大きな流れになることは間違いありません。

たとえば、こんな問題はどうでしょうか?

「世界にまだ存在しない乗り物」を描きなさい。

こういう質問を受けて、喜々として描いてしまえるような能力が、これからの時代は高く評価されていくのではないでしょうか。

そしてこの問題には、ワクワクするような未来への展望や夢が隠されていると言っても良いでしょう。解く事自体が嬉しくなる、そんな問題です。

「考える力」や「柔軟な思考力」がなければなかなか解答を組み立てることはできないでしょう。大変面白いと思います。

 しかし、これまでの受験エリートには、対応できないかも知れません。

「何でこんな事を聞くの?意味があるの?」そう不満を言うのが関の山かも知れません。

未来の基礎は今現在にあります。

だから、目の前の事にのみとらわれるのではなく、時代の動きをよく見て、次なる時代へ向けての対策を立てていくことをお勧めします。

もう未来はすぐそこまで来ているのですから・・・

今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA