時間をかけさえすれば成績は上がる?
よく成績が伸び悩んでいる生徒がいる時に「どんな対策を考えているか」を質問すると
保護者も生徒自身も、
「とにかくたくさん勉強する」
「そうすれば結果が出る」
というような返事が返ってくることがあります。
そこで「時間を増やしたら、そこで何をやるか」について尋ねてみると
「たくさん問題を解く」
「たくさん教科書を読む」
というような割と漠然としたことを言います。
そんな回答を聞くと心配になってしまいます。
「具体的に今何が必要なのかをよく考えずに時間ばかり増やしてもうまくいかない」というアドバイスをすることがあります。
むしろ、「こんなにやっているんだ」という変な自信ができてしまって、自分の弱点とかに気が付きにくくなることも多く
「勉強時間を増やしたら成績が下がった」という事態は、皆さんが思っている以上に実は多いのです。
相関関係
相関関係というものがあります。
相関関係は、2つの値の相互の関係を示すもので、種類には正の相関、負の相関、無相関があるとされています。
これは、数学で資料に関する学習にも出て来ますし、統計学でも重要な指標の1つとして扱われるものです。
たとえば、「気温が上昇すること」と「屋外市民プールの利用者数」を調べたら
おそらく気温が上昇すればするほど 利用者数も多くなるでしょうから
概ね「正の相関」が認められることでしょう。
逆に「気温が下がること」と「屋外市民プールの利用者数」を調べたら逆になるでしょうから、概ね「負の相関」が認められるかと思います。
しかし「気温が下がること」と「その街の自動車の販売数」を調べても、まあ普通は関係ないですね。この場合は「無相関」ということです。
では「相関関係」は、直接そのことを生じさせている理由だと断言してしまってよいのでしょうか?
ここは、よく誤解がある所なのですが
「相関関係」は「因果関係」とは明らかに違うものです。
「因果関係」とは普通「あれなくばこれなし」というように
何かが起こった時に、それが生じた原因について検討するもので
有力な考え方として「AがなければBがなかった」と言えるなら因果関係があるというような言い方がされるものです。
法律学ではこれをさらに深堀りして「社会通念上一般人の見地から見てAなくしてBなしである事が相当と判断できる場合には因果関係ありとする」というような考え方がされますが
相関関係と話が離れてしまうので、今回ここでは詳細は省きます。
上記の例で「市民プールの利用者数の上昇」は確かに気温の上昇がなければ起こってこないので、相関関係だけでなく因果関係もありと認める要素があると思います。
ではこれはどうでしょうか?
「熱中症で病院に運ばれる人の数の上昇」と「市民プールの利用者数の上昇」
おそらく熱中症の原因の大きなものは「気温の上昇」にあり
市民プールの利用者数の上昇と同じ原因によるものですが
もちろんそれがプールの利用者数上昇の原因のはずはありませんね。
これなどは「相関関係はあるが因果関係はない」ものだと言えます。
まさかプールが混むのは熱中症が原因なんて考える人はいませんが
相関関係と因果関係は似て非なる物であることは知っておく必要があるでしょう。
勉強時間と成績上昇
冒頭の話に戻ります。
「勉強時間を延ばすこと」と「成績向上の結果」にはおそらく「正の相関」があると思います。
では「因果関係」はどうでしょうか。
もちろん因果関係がある事もあります。定着の度合いが悪い場合に、繰り返しの量により改善する事はあるからです。
しかし必ず因果関係があると言えるかというと、それは個人ごと異なるのは明らかです。
やり方が悪い場合や勘違いした解答の癖があるような場合には、その方法の改善が課題であり、悪い方法のまま繰り返しをしても全く意味がありません。
またこのブログでよく取り上げているアウトプットの問題を抱えている場合には、アウトプットの練習をするならともかく、インプットの時間を増やしても、状況は変わらずむしろ本人が辛くなるだけかも知れません。
「勉強時間を延ばす事」は人により「成績向上の結果」を出すのに役立たない場合、むしろマイナスになる事があります。
それはどこに問題があるかについての状況をよくつかんでないために起こる悲劇だと言えるでしょう。
一般的なデータで相関があるのと、結果を左右する因果関係があるという事は、全く違う事だと知っておくべきです。
「やればできる」は正確ではありません。
「状況を改善する対策をやればできるようになる」
これが正確な内容だと思います。
無駄な時間を割いて、自分自身が大変にならないようにするには、まず自分の学習状況を正確に把握して、そこから考える事が大切です。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。
もちろんあるの度合いが良いのに