学ぶの読み方
学ぶは普通「まなぶ」と読みますが、実はもう一つ読み方があります。
それは「まねぶ」です。この「学ぶ(まなぶ)」と「学ぶ(まねぶ)」は同語源とされています。
厳密には「学ぶ」という同じ漢字を使ってはいますが違う言葉ということのようです。
文法的な考察はさておき、私たちのいつも使う「学ぶ(まなぶ)」の元に「まねをする」という意味があることは間違いがありません。
そもそも学ぶということは、何かお手本があってそれを模倣して自分の中に吸収していくことだからです。
ではそういう「学び」の過程で、人により定着がうまくいく人といかない人が生じるのはなぜでしょうか。
新しいことを学び始めるときの反応
生徒が何か新しいことを学び始めた時の反応というものは、実に千差万別です。
たとえば方程式を初めて学習するときを例にとってみます。
今は小学校で文字を使った式自体は習っているので、中1ではまず最初に等式の性質をしっかり学習します。
「等式の両辺に同じ数を加えてもも等式は変わらない」という法則(この他にもあります)を説明して
A=B ならば A+C=B+C という式の上での理解を図ります。
そして実際にたとえば
X-3=4 という問題をこれに基づいて解いてみます。
左辺に3を加えて右辺にも同じ3を加えても等式であることに変わりがないという事から
X-3+3=4+3 よってX=7
こうなること丁寧に説明します。
ここで落ち着いて教師の説明を聞いている生徒からは
「そうか左辺の3がこれで消えるっていることか」
というリアクションが起こりますが
多くの生徒はまだ意味がわからず「?」という顔をしています。
順にいくつか同じような例を示していくうちに、食い入るような目をして学ぼうとしていた生徒たちは、一人また一人と意味が分かってきます。
このように学ぶということは
①まず示された新しい情報をよく咀嚼して
②具体例の中にそれを落とし込んで
③自分の過去有していた情報とそれをリンクさせていく
そんなステップをたどるように思います。
予期に反する反応
ところが実際にはこのようなステップをたどらない生徒も多くいます。
ます最初から話をよく聞いていないタイプ
これは自分が今まで持っていた情報や経験で話を理解しようとするタイプと言ってもいいかもしれません。
そもそも話自体を聞くつもりがなくて、いきなり適用の場面からスタートしようとします。
つまり「やり方」を「教えて」という姿勢です。
何とかやり方を知ることができたとしても、当然のことながらその意味をつかんでいませんので、応用は効かないということになります。
次によく見かけるのが、一生懸命聞いているように見えて、実は説明されていることの観察が不十分過ぎるタイプです。
上の例で言えば
A=B ならば A+C=B+C ということの「意味」を理解しようとするのではなく
ノートに一生懸命書き込んで、それ自体を最初から「覚えよう」とするのです。
お分かりだと思いますが、この公式は方程式の問題を解くために示された「考え方」を説明する公式です。
だからAやBと言うものが実際に問題に登場することはなく、その考え方を使う場面が登場するに過ぎません。
それを一生懸命暗記しても意味がないのです。
考え方を理解することが重要なのですが、それをいつも飛ばしてしまうのがこのタイプです。
最初のタイプの生徒と同様、何とか問題は解けても「理解」していないので、応用は効かないということになります。
観察力
ここで述べたことを総合すると、
「学ぶ(まなぶ・まねぶ)」ためには、その対象の事柄を「十分に観察する」ということが不可欠であることがわかります。
まねをするのですから当たり前ですが、うまく行かない生徒の場合には
いわゆる「ものまね」のように形だけ全く同じにすればうまく行くと思っている場合が多いのではないかと思います。
たとえば野球のバッティングフォームのように、
上手なバッターのフォームを研究してまねる場合に、「なぜ彼はよく当たるのか」という事を考えてその部分を取り入れるのと、
そうではなく一から十まで全く同じ形にするのとでは、その時は違わなくても
後に大きな違いが出てくることは明白です。
なぜその形になっているのかという理論や自分の体形や癖とあったフォームなのかなど、いろいろ考えるべき要素が絡み合って初めてヒットが出るので、
形の完全な同一性に意味があるわけではないからです。
だから、とにかく「学ぶ」時には虚心坦懐に
その対象をよく観察するという姿勢、もう少しわかりやすく言えば
対象を「研究」するくらいの姿勢で、とにかくじっくり「見て」「考えて」「味わって」内容をつかむということがとても重要だと思います。
すぐに「覚える作業に入る」ことや
すぐに「問題に適用する」ことは、むしろ有害です。
まずじっくり「吟味して意味を知る」ことが大切です。
結局大きな目で見たときに結果が出てくるのは、そういう新しい情報のつかみ方を上手に構築することができた生徒なのだと思います。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。