【高校化学の謎】一生懸命勉強するのに、それがどんな現象かみんな知らない「エステル結合の加水分解」って何?

エステル結合の加水分解

 今も昔も高校の化学で非常によく登場してきて、化学を学ぶ高校生ならだれもがその名前を聞いたことがあるのが「エステル結合の加水分解」です。

 加水分解(加水分解)というのは、文字通り「水を加えると分解する」という現象ですが、この学習をするときにはエステル結合(ーCOOーで表す)の学習をしていて、これが水(H₂O)と触れると結合が切れてしまって、酸とアルコールに分解されてしまうという、その部分の学習に目が行ってしまっているので、加水分解の現実の現象にはなかなか目がいきません。

 水と触れて分解されることから、加水分解は「水解」とも言われますが、これは反応物に水が反応して分解生成物が得られる現象です。水分子が生成物にH(プロトン)とOH(水酸化物)に分解した形で取り込まれてエステル結合を切ることになります。

 具体的にはポリブチレンテレフタレートやポリカーボネートが加水分解を起こしやすいプラスチック・樹脂だと色んな所にでています。

 さてみなさん。これで何のことかわかるでしょうか?

残念ながら全くわかりませんよね。

そんな難しそうなプラスチックの名前を言われても興味のある人でなければピンとこないし、「エステル結合が切れるの、ふーん」という感じではないでしょうか。

実際の現象

 エステル結合の加水分解を学習する頃は、高校化学ではヒドロキシ基-OHとかアルデヒト基ーCHOとかの有機化合物の官能基と言われるものの学習をしているので、どちらかというと記号の勉強みたいになっている所です。

そのため実際の現象についてはあまり関心もないのかも知れません。

実際「どんな反応?」って聞いても「エステル結合のここが切れてこうなって」と言える人はたくさんいますが、現実の世界で何が起こるかを知らない生徒の方が多数だと思います。

 ではどんな現象なのかと言いますと、加水分解は水が物質に付くことでそのものをボロボロにひび割れさせてしまう現象です。

その相手の物質の代表例がポリウレタンを使っている物質で、スニーカーの底のアウトソール(底に貼ってあるシートのような部分)がこれにあたります。

大切に履いているのでいいだろうと思っていたら、いつの間にかひび割れしてしまっていたという事が皆さんもあるかも知れません。

これが加水分解の被害ということになります。

水が原因ですから、水分が付いたまま保管をしないということを気を付けるだけでだいぶ違うようです。もちろん湿気のある所での保管でも同様の危険があることになりますので注意が必要かと思います。

 また合成皮革(フェイクレザー)も加水分解の被害を受けやすいと言われています。

合成皮革(合皮)は下地のマイクロファイバーの上にポリウレタンや合成の樹脂が重ねて作られている事が多いようで、そのため上記と同様に加水分解が起こりやすく、気づいたら小さな裂け目ができていたなんてことも起こります。

 対策はもちろん水分への注意ということになります。

学習の楽しさを得るコツ

 確かに官能基の学習はちょっとゲーム感覚で面白いのですが、実際に自分が何を学習しているか知っているのとそうでないのとでは、学習の楽しさは大きく変わるに違いありません。

おそらく高校で化学を学んだ人が大人になって、「エステル結合」とか言われても何も思い出せないのが普通ですが、

もし加水分解の現象を知っていてそれと結びつけて学習しておけば、「ああ、スニーカーがボロボロになるあれね」と思い出せるでしょう。

学習の面白さや楽しさを広げるには、こんなちょっとしたことが影響するのだと思います。

「これってどんな話?」というような疑問をもって学習すると、そういう楽しさを得やすくなるのではないかと思います。

ぜひお試しください。

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