よく使うのに実は分かっていない言葉
私たちが日常生活で割と普通に使う言葉でも、昔から使われてきている言葉で実はよく意味を知らなくて使っている言葉があるものです。
たとえば、「かなり凄い人たち」ということを表現するのに「そうそうたるメンバー」という言葉を使いますが、よく考えると「『そうそう』って何?」と思ったりします。
そして何より漢字がわかりません。
キーボードをたたいて検索すると「錚々たる」という見慣れない漢字が出てきます。
「あれ、おかしいぞ。こんなによくつかうのに、こんな難しそうな漢字なはずがない」
そう思って「早々かな?草々かな?」と考えてしまったりするのではないでしょうか。
正解は「錚々たる」
実際には「『錚々たる』メンバー」で正解になります。
優秀な人たちや集団をさす言葉として広く使われています。
ただ実際には漢字で書くことは稀でしょう。何しろ読めない人が大半かも知れません。
「しっかり」という言葉をだれもがよく使っているのに「確り」という漢字を読み書きできる人が金融や投資に詳しい人以外あまりいないのと似ている話です。
割と多くの人が「錚々たる」を「滔々たる」と取り違えて「とうとうたる」と読んだりしてしまったりすると思います。
まあ自分が書く場合には「そうそうたるメンバー」と書けばOKでしょう。逆に「錚々たるメンバー」と書いても周りの人が読めませんね。
「鉄の中ではまあまあ」が語源
この「錚々」の語源は中国の後漢の光武帝の「鉄中錚々(てっちゅうそうそう)」という言葉から来ているようです。「鉄中錚々」とは、「鉄の中ではまあまあだ=凡人にしてはなかなかやる」というような意味で、元々は「まあまあできる」と言うような意味だったものと言われています。
「錚(そう)」は元々「金属が澄んだ音を発する様子」を指していたことから中国では「鉄でできた楽器」を意味していたらしいのですが、そんな鉄の楽器でも「金銀の楽器とまではいけないとしてもまあまあの音を出す」ということだったようです。
しかし我が国においてはどういう経緯か「特に優れている」という意味で使われるのが普通になりました。
そのため「錚々たるメンバー」は「特に優れているメンバーたち」と言う意味になります。
「ベテランで凄い人たち」とかあるいは「凄い能力を持っている人たち」と言うイメージの言葉だと言えます。
時代と共に変わる言葉
「まあまあ」が「凄い能力を持つ」に変わってしまうのも面白いですね。
言葉は時代や社会によって同じ語であっても意味が変わる事はよくあります。それがまた漢字や言葉の面白さなのかもしれません。
ただよく使う言葉は一般の人たちが使い易くて使っているわけですから、「錚々たるメンバー」という表記にこだわる事もありません。今回のような背景も、ちょっとしたエピソードという事で、「誰かにちょっとお話をしてあげるといいかな」といったものですね。
「そうそうたる方々の中で私などがスピーチをさせていただくのは身に余る光栄でございます」と言うような敬語だらけの文章でも「そうそうたる」はひらがなで良いと私は思います。