【記憶の宮殿とエピソード記憶】場所や風景に記憶させる記憶法とは?

記憶力がないというのは実はやり方を知らないだけ

「私は記憶力がなくて」

「全然覚えられなくて困ってしまいます」

なんてことを言われる方は子どもはもちろん大人の方でもたくさん見えます。

実際にちょっとした込み入った情報を簡単に思い出せる人もいれば、思い出す手がかりが見つからず、他人に何かきっかけとなるヒント(記憶のフック)を言われて思い出せるという人もいます。

 そしてほとんどの人がこう信じています。

「記憶力は生まれつきの頭の良さで決まる」

「記憶力がいいのは勉強をたくさんしたからだ」

確かに後者についてはある意味当たっている部分があります。でもそれは勉強の量というよりも、勉強をする際に「記憶の仕方」のアイテムをたくさん仕入れることができたからという意味合いが大きいように感じます。

前者については疑問です。記憶力が生来の脳細胞の働きだけによるとすれば、思考力に優れた天才的な人が実は記憶は苦手というようなアンバランスな面もあったりするのがちょっと不思議です。記憶は何かの情報を取り入れることによって行われる作用なので、生まれたての赤ちゃんから記憶力のポテンシャルが高いというイメージも浮かべにくい気がします。

むしろ後天的な環境の影響が記憶の力には大きな影響を与えているのではないでしょうか。

家庭環境において「学び」が強く志向される状況があった場合、たとえば親子間で楽しく会話する中で、何かを思い出したりする機会やその方法を親から承継する機会に恵まれて、記憶力が早期に伸びるというのは容易に想像ができることだからです。

逆に記憶がどうもうまくできないという人の話を聞いてみると、物事の覚え方のノウハウを知らないまま、何となく情報を受け取り、何となくそれを受け流して忘れてしまうやり方をしている場合がほとんどのように思われます。

つまり「覚え方」を学ぶ機会を経ていないということがもっとも大きな原因であるように思います。

覚え方次第で簡単に覚えられることは確実にある

 単に暗記ということで言えば、昔から語呂合わせとか歌にして覚えるとかいろんな暗記法があります。

そしてそれはそれなりに効果が認められています。

覚え方次第で暗記がうまくなるということは確実にあると思います。

そのようなきちんとした形式を備えた暗記法でなくても、実際に多くの人がやっているのが、

「問題を解いているうちになぜか覚えてしまった」

というやり方です。

たとえばおうぎ形の弧の長さを求める公式があります。

ℓ=2πr×a/360 (ℓ:弧の長さ π:円周率 r:半径 a:中心角)というものですが、これを丸暗記しようとして覚えられない生徒が続出します。

なぜかというと式からイメージをつかみにくいからです。

ところが2πrが実は演習の長さ(直径×3.14…)であることを意識してa/360というのがそのうちぐるっと一周した長さのどれくらいかを示す数字だと気づけば、二度とこの公式は忘れないし使えるようになってしまいます。

つまり単に文字だけではない、どういう話なのかをつかむ理解が入り込めば記憶は案外簡単にできていくのです。

エピソード記憶

脳科学の分野の話になりますが、記憶には種類があります。短期記憶・長期記憶などは皆さんもよく聞く言葉ですが、他にも意外に知られていないものとしてエピソード記憶というものがあります。

エピソード記憶と言うのは、単に文字や概念だけの記憶(意味記憶)と異なり個人的な体験と結びついた記憶で、時間や場所であったり感情や身体的状態などの情報が含まれているものです。

たとえば「友人と街に行って買い物をして楽しかった」というような記憶がエピソード記憶です。そしてすぐお分かりになるかと思いますが、エピソード記憶は意味記憶に比べて断然記憶しやすく忘れにくいという特徴があります。

その時友達と交わした言葉の1つ1つがありありと脳裏に浮かんでくる。そしてその中のいくつかは一生忘れないものとして記憶に残る。そんなことさえあるのではないでしょうか。

 何かを学ぶときにもこのエピソード記憶を利用すると断然覚えやすくなります。同じ物事でも自分の体験にそれを絡めることで記憶に残る度合いは全く変わってくるからです。

九州に住んでいる小学生が家族旅行で仙台へ行ったとします。そこで何日か楽しく遊んで帰ってきました。仙台について色んなことを知ることができました。この子どもが学校の社会の時間に宮城県の県庁所在地は仙台だと知ります。彼は自分の体験である「楽しい仙台旅行」とこの情報を瞬時に結び付けます。

おそらくその後兵庫県の県庁所在地が神戸であることは思いだせなくても、仙台が宮城県の県庁所在地であることは二度と忘れないことでしょう。なぜなら自分の体験が結びついているエピソード記憶だからです。そして神戸の方は単に文字として暗記した意味記憶で簡単に忘れてしまいがちなのです。

記憶の宮殿

古代ギリシャ・ローマ時代から伝わる記憶法として記憶の宮殿(memory palace・メモリーパレス)というものがあります。

場所法( method of loci /loci はラテン語で場所を意味する )とも言われるものですが、自分と馴染みのある空間環境をビジュアル化することで情報を想起させることができる方法です。

やり方は次の通り。

①まず自分がよく知っている場所、たとえば自分の部屋、住んでいる商店街、よく行くショッピングモールなどの配置や空間をありありと思い出します。部屋ならベッド・くまのぬいぐるみ・パソコン・タンス…、商店街なら薬局・中華料理屋・コンビニ・酒屋・小さな公園・自転車置き場…といった感じです。

②次に今思い出したそれぞれのアイテムに記憶したい事柄を順に頭の中で配置して歩いていきます。その際のポイントはなるべく印象が強い奇妙なものと絡めて頭の中で配置することです。

たとえばabundantの意味がどうしても覚えられないときなら

abundant(アバンダント)で豊富なギョーザが山盛りになっている中華料理屋を考えます。

「やっぱギョーザはアバンダントがいいね」と言いながら巨大なギョーザの皿にのせた巨大ギョーザを大量に配置します。

そして薬局やコンビニなどにも同様に自分が必要な覚えるべき情報をお店に順に配置するのです。

③ある程度イメージが固定するまで頭の中で繰り返します。

④たとえばテストの際に、その商店街を頭のなかであなたが歩き回れば自動的にその記憶が想起できる仕組みです。

なぜ記憶の宮殿は最高の記憶法なのか

この記憶の宮殿は古代の弁論家が記憶法として用いていて、その実用性は歴史的にも確かなものであるとともに、現代の脳科学でもその有効性が証明されているそうです。

極めて高い記憶能力を身に着けることができる方法として、過去にも記憶力を競う大会に出場する人などがこれを使って有名になったというような話がたくさんありますが、実際にわたしたちもこれを使って暗記力を高めることは十分可能です。

脳は頭の中で考えたことや想起したことと現実の体験を実はあまり区別ができないと言われています。

そのためたとえば頭の中で商店街を歩き回り中華料理屋に巨大なギョーザがありそのときにabundant(アバンダント)という札が餃子についていたという記憶を自分の「体験」と勘違いしてしまいます。

するとこの記憶は一気にエピソード記憶として自分の体験となって強く定着されてしまうということです。

つまり仙台に行かなくても、あなたの頭の中で、たとえば薬局の前に巨大な宮城県の絵が貼ってありそこに「仙台」という巨大な書道家の文字が貼ってあったら、それは宮城県の県庁所在地を生涯忘れさせなくする体験になるのです。

このような記憶の宮殿記憶法は、下ごしらえに時間がかかり、一度に大量な記憶をできないという面もありますが、私の知る限り最強の記憶法の1つだと思っています。

場所や風景に覚えさせる方法

記憶の宮殿とまでいかなくても、場所や風景に記憶を結びつける方法はもっと簡単に記憶をエピソード化できます。

私は昔からこれを無意識的にやっていたのですが、何かを暗記する時に頭の中で自分が行ったり見たことのある人生の場面を思い浮かべながら覚えると、その場所や風景画像に情報が併記されて暗記ができます。

たとえば江戸時代の五街道を覚えようとしたときに中山道・東海道・・・と情報を定着しながら自分が走った懐かしい運動会の場面を思い浮かべます。

そうやって覚えると、五街道の問題が出て思い出そうとして

「中山道・・・あとは・・・」

とまで考えたあたりで運動会の場面が脳裏に出てくるのです。

そして自然とあとの4つを思い浮かべることができたりします。

無意識にやってきましたが、これは場所法(記憶の宮殿)と割と近いことを簡易にやっていたのだなと後で気が付きました。

こちらはたくさん覚えられるのでお勧めです。皆さんもぜひやってみてください。

記憶のメカニズムはまだよくわかってないこともたくさんあるようですが、こんな風にやり方を知るというだけで暗記力も高めることは簡単にできます。

ただ正面からお経を唱えるように丸暗記するのではなく、やり方を一度見直すという事も大切ですね。

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