試験に対する誤解
受験というものは、初めてそれを体験する者にとっては、何か特別な人生の大イベントのように感じられるものです。
もちろん実際に進路がそれで決まってしまうという点ではその通りではあるのですが、単なるペーパーテストであることを忘れてしまってはいけません。
自分の持っている解答能力を示すこと以上にできることはないのですから、試験会場で「勝負する」という意識を持ちすぎるのは危険です。
一生懸命1年、人によっては2年くらいかけて準備をして対策をしていくので、どうしても受験日や受験前には気持ちが高ぶってしまうのは無理からぬことですが、受験と言うものをそのために勘違いしてしまうということは避けなくてはいけません。
鉢巻を巻いてガリ勉
今ではもうほとんど見かけませんが、以前は、受験と言うと、鉢巻を巻いてガリ勉している子どもの部屋に母親が夜食を運んでいく、そんな姿がステレオタイプのようにテレビなどでは描かれていました。
半ば嘲笑的に当時の「受験戦争」を批判するような描き方ではありましたが、世間的には、そんなイメージを持つ人も多かったように思います。
しかし、このイメージが受験における重要なポイントを外してしまっていることについては、当時から危惧をしていました。
今回はそんな話をしてみたいと思います。
スポ根もののドラマとは違う
「受験戦争」という言葉が叫ばれていた時代は、もうずっと昔になりますが、その頃は、テレビドラマでもいわゆる根性ものが多く放映されていました。
特にスポーツ系の根性ものについては、多くの人が胸を熱くしてそれを見て闘志をわかしたものでした。
その影響もあって、冒頭の「鉢巻スタイル」も登場してきたのだと思いますが、「根性」を過度に重視する考え方というものは
特に試験当日においては悪影響を生む恐れがあります。
スポーツでも頭脳プレーというのがありますが、勉強はさらに頭脳を用いるという事が、主要な行動になっている訳ですから、
「論理性」「明晰性」「思考力」といった要素が大きな部分を占めてきます。
「根性」「ガッツ」「頑張り」というのは内面のものとして大切ですが、これを試験当日に表に出そうとすると、思わぬ失敗が起こる事があるのです。
メインの勝負が思考
たとえば100m走をする時に、スタートのタイミングや、精密なダッシュの際の足の角度や瞬発のポイントなどをしっかり考えてデータを取り、
その上で何回も繰り返して練習をして行き、よい成績を収めるということは、スポーツの世界でも今は普通にあります。
中学高校の陸上部でも、そういうことはごく当たり前に行っています。
しかしその後の全力疾走については、やはり当日のモチベーションや、発揮できる体調によるポテンシャルが大きく影響を及ぼします。
要は「頑張り次第」の部分がかなり大きいのだと思います。
しかし受験の場合には、正に正念場のメインの部分が「思考」の勝負になります。
言うまでもなく「思考」をするためにもっとも重要な事は、「冷静さ」です。
「熱い闘志」や「ガッツ」は、普段の勉強で気持ちがくじけそうな時に必要であって、テスト当日にそれを前面に出せば、頭脳の働きに、悪い影響を及ぼすこともあると思います。
練習は本番のつもりで 本番は練習のつもりで
「練習は本番のつもりで 本番は練習のつもりで」という言葉があります。
平常心を持って本番にのぞむことの大切さと、準備する際には、実戦をしっかり想定することが重要だという事をうたうものですが、
この言葉は、受験にこそよく当てはまるような気がします。
「本番で特別なことをしない」というのは、受験では最も重要なことだからです。
試験で失敗した例の多くは、試験会場で動揺してしまって、今まで普通にやっていて解けた問題を、何か特別な問題のように感じてしまい
特別なやり方をして不正解になり、そういうミスが重なって失敗をしています。
簡単に言うと「あがる」という事なのですが、その背景には、「本番は本番のつもりで」「頑張る」という意識が隠れています。
生徒にはよく話をするのですが、「テストが終わって帰宅した時に『どんな問題だったのか、それに自分はどう答えたのか』がきちんと思い出せれば、合格の可能性は低くない」というジンクス的な言葉があります。
夢中で混乱してしまった生徒は、多くの場合、出題自体をよく思い出せなかったり、自分の書いた答えを全く覚えていません。
極端な場合には「頭が真っ白になって、気が付いたら試験が半分終わっていた」なんてこともあります。
こういう場合は大抵入れ込み過ぎていて、「テストの当日に何とかしよう」とする気持ちが大きくなっています。
しかし事務処理を重視する試験を除けば、「テストの当日に何とかする」というのは受験においては戦略としては誤っています。
覚えていないことが当日頑張っても出て来ることはないからです。
スポーツなら、今までできなかったことが当日できるということはよくありますが、試験はむしろ逆で
「今まで自分ができたことを、試験会場で確実にすべてやってくる」
と言うのが正しい戦略です。
「でも、それじゃあ逆転合格できないじゃないか」と言われるかも知れません。
しかし
「準備したすべての事を、一番良い形で出し切る」という事は、実は、ほとんどの受験生が出来ない事なのです。
それほどまでに受験と言うのは緊張を生み、混乱を生じやすいものと言ってもいいのかも知れません。
だからそれを実行できれば、十分に相対的に上位に行くのです。
「今持っている力を8割以上正確に出せば受かる」
これが一番正しいアドバイスかと思います。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。