損益算
小学校の算数から「定価が100円の鉛筆を仕入れて・・・」というような損益算の問題が登場します。
また中学校では方程式の問題の中でも必ず「定価」「仕入れ値」というような言葉が登場します。
更に簿記の計算でも「原価計算」はもちろんの事「定価」「売価」などと言う言葉は当然の言葉として使われます。
しかし小学生中学生はもちろん高校生でもこれらの言葉の意味がしっかりわからないまま問題を解いている生徒を多く見かけます。
その理由は「馴染みがない」ということでしょう。
昔の日本のようにお店の手伝いをして働く子どもがわりと普通にいた時代とは異なり、実地にお金の計算に触れるようなことはあまりなくなっているからです。
今回はこれらの言葉についてわかりやすく説明をしてみたいと思います。
要はどういうこと?
よくこういう損益算のイメージを説明するのに、細かい専門用語や簿記の原価計算などまで含めて説明をしてしまう人も多いのですが
おそらく小中学生がよくわからなくなるのは、そういう細かい話が周辺に多すぎるため概略をつかみきれないのではないかと思っています。
そこで今回は思いっきり簡略化して話を進めます。
たとえば工場で消しゴムを作っているA社があり、B社がそこから直接その消しゴムを仕入れてCさんに販売したとします。
もちろん消しゴムの仕入れを1個とかですることはあり得ず実際には何百個何千個といったまとまったロット数で仕入れて店頭に並べると思いますが、そんな話も複雑になるのでここは1個だけの話とします。
原価
A社が消しゴムを作るのには原料を仕入れたり、工場のメインテナンスにお金がかかったりしてそこで1つの経済活動がありますが
B社を中心に考えるとA社からお金を払って「消しゴム1個」を仕入れるということになります。この時の値段が「仕入れ値」であり「原価」です。
仮に消しゴム1個を100円で仕入れたとすると「原価100円」という事になります。
この場合の仕入れ値や原価はこの消しゴムをB社が販売するまでに必要なお金が入っています。たとえばA社から送ってもらった送料の20円とかも含まれているということです。
実際にA社がもらうお金は80円ということですね。でもB社から見れば仕入れにかかったお金全部の100円が原価ということです。
ただこのあたりを詳しく考えると全体像をつかみにくいので、要はB社が1個の消しゴムを売る準備にかかったすべての金額と思っておいてください。
定価
普通お店屋さんでは消しゴムの値段を決めて販売します。さてその時にA社はこの消しゴムをいくらで売ればいいでしょうか?
B社の社長さんになったつもりで考えてみます。
100円で販売するとしたら・・・
A社から100円で消しゴムを買っているB社としては、もし100円で買ってもらっても損は出ませんが
それだとB社は、A社からCさんに消しゴムを受け渡す係りのようなもので、自分が1円もお金をもらえない事に気が付きます。
仕事をしてお金がなければ、何のための会社かということになりますね。
では140円ではどうでしょう?
これなら原価100円との差額40円分だけ毎回お金が入るので、消しゴム1個でそれだけ儲けが出れば大丈夫そうです。
そこでB社の社長さんはこの消しゴムを140円で売ることを決めました。この140円が販売の際に物品を売る値段として定めた価格ということになり、これを「定価」と言います。
利益
もし予定通り販売されたとすると、140円と100円の差の儲けがB社に入るわけで、
これが予定されている「利益」ということになります。
企業の経済活動はすべてこの利益を得るために行われますので、利益をいくらに設定すれば経済活動を継続していけるのかを考えることが重要になります。
今後学校でも諸外国と同様に社会での経済活動に関する授業が取り入れられていく方向に動き出しているようですが
そうなればこういった損益算や利益についての考え方をしっかり身に着けることが今後より一層大切になってくることでしょう。
売価
B社が140円で消しゴムを売ろうとしたとして、小売業ではそれより実際に高く売れるというようなことはあまりあり得ないと思いますが
たとえば人気がでなくて1年経ってもそれが売れないままになっていて、安売りをするようなこともあります。
あるいは、うっかり消しゴムの包み紙が破れてしまって140円のままでは売れないこともありますね。
実際には120円に値下げしてようやくCが買っていったという場合、実際に売れたこの120円が「売価」となります。
120円で売ったとしても原価が100円だったので、まだ20円の利益が出ます。
実際の経済活動ではたとえば80円でないと売れなかったというようなこともありますが
売価80円だったら原価100円に対して20円不足してしまうので、その場合には20円の損失ということになってしまうのです。
図を書いて説明すればわかると思っているのは先生だけかも
このように「原価」「仕入れ値」「定価」「売価」「利益」「損失」という一連の用語は
経済活動の1つのストーリーを通してみないとなかなか理解ができません。
これは実際に20年以上この損益算を授業や個別指導で教えてきた私の実感です。
図解を丁寧にすればある程度わかりやすく理解が進む面もありますが、実際にどういう事がが子どもたちには全くわかっていないため、立体的に状況が頭に入るのには時間がかかる分野なのです。
もしこのジャンルでお困りの方がいたら、今回のようにお話をたどって説明したり学習をしたりするといいと思います。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。