どこでもドアを抜けた人は、本当に自分なのか?

 未来というと、まず思い浮かぶのがどこでもドアでしょう。

 近時スペイン・バルセロナ自治大学の科学者らが、人工的なワームホールの製作に成功したというニュースがありましたが、どこでもドアが現実になる日は現実にやって来るのでしょうか。もしそうだとすると楽しみです。

 素人考えですが、どこでもドアを現実にするには2つの方法があると思います。

 1つは、このようなワームホールにより、現実に 時空をショートカットする方法で 物質を送ってしまうというやり方です。

 もう一つは物質を量子レベルにまで分解してエネルギーとして送り、そこで再物質化するという方法です。映画スタートレックなどのSFでよく見る「転送」はこちらの方式ですね。 


 1つ目の方法はワームホールを現実に創り出したり探す必要があるので、実際のところ、現在の科学ではまだまだ実現までのハードルは高いようです。

 2つ目の「転送」形式の方法については、量子のレベルでは東大工学系研究科の研究グループなどが量子テレポーテーション実験というものに成功しており、ワームホールよりもまだ可能性はありそうです。

量子テレポーテーション:量子もつれを利用した離れた場所での量子情報伝達

量子もつれ: ペアになっている粒子は 、たとえ宇宙の果てと果てにそれぞれがあったとしても、お互いに瞬時に影響を及ぼしっているという性質

 しかし、人が転送されるとなると1つ非常に大きな問題があります。

 それは転送先の人は、送られた人と本当に同じ人物かどうかという疑問です。細胞はもちろんDNAまで全く同じでも、人の意識は別なのではないかという疑問があるからです。個性のない量子情報伝達だけとは話が違います。


 哲学で「スワンプマン(沼男)」の思考実験というものがあるのですが、実はこの思考実験と同じ話かと思われます。

スワンプマン: アメリカの哲学者ドナルド・デイヴィッドソンが考案した思考実験。

 内容 ある男がハイキング中落雷で死亡する。ちょうどその時別の雷が近くの沼に落ちる。雷が沼の泥と化学反応を起こしたのかもしれない。何と死亡した男とうり二つの姿恰好をした男(スワンプマンー意味:沼男)が生成されてしまう。そして、このスワンプマンは何食わぬ顔で死んだ男と変わらない暮らしを始める。さて彼は死んだ男本人なのだろうか?そして、それを知る方法はあるのであろうか、というもの。

 結論から言うと、死んだ本人以外には知ることはできないということになるでしょうか?

そしてさらに突き詰めて考えると、ここでは「意識」とは何か?という問題が本質的なテーマになっていることに気づきます。

 アメリカの生理学者ベンジャミン・リベットの実験というのがあります。これによると人間が脳内で意識的な決定をする0.35秒前に、すでに決断が済まされているということが科学的に判定されたそうです。これをどうとらえるかにもよりますが、「意識」は脳の判断と別のところにあるという理論も成り立ちます。

 もし意識が脳と別のところにあるならば、どこでもドアで移動したり「転送」がされても、行き先に自分自身の意識があるかもしれません。

 しかし、意識があくまで脳の産物であるという場合には、どこでもドアの先にいるのは自分ではなく、自分と同じ顔、体つき、声をしていて考え方も同じなのに自分ではない人ということになりますね。送信前に一旦以前の脳は消滅してしまうからです。


 最初にどこでもドアをくぐる人が誰になるかはわかりませんが、実際にどこでもドアを抜けた人は必ず「私は自分だ」と言うでしょう。どこでもドアに入った記憶もあるからです。

 しかしその人が移動前の人と同じ人がどうかは結局誰もわかりません。

 科学が極限まで進むと、クローンの問題など倫理の問題が発生するということはよく言われますが、このように哲学的な問題も生じてきます。

新しい学問の分野もできてくるのではないでしょうか。



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