学習に適した場所、「馬上(ばじょう)・枕上(ちんじょう)・厠上(しじょう)」 あわせて…「三上」
中国の宋の時代の欧陽修という文学者は、「私は文章を書くために、いつも『三上(さんじょう)』で構想を練っている。それは『馬上(馬に乗っているとき)』『枕上(寝床で枕に頭をのせているとき)』『厠上(便所に入っているとき)』という三つの場所である」という内容をその著書「帰田録」で述べています。
「三上」は昔から何かを考えるのに集中しやすい場面であると言われてきました。
確かにこの3つは、時として机の前に座っているよりも考え事に適していることがあるように思います。
人間というのは不思議なもので、机に向かい「さあ考えてみよう」といっても集中できないこともあれば、たとえば遠足のバス旅行の帰りのバスの中で窓の外を見ていたら妙にいろんなことを考えて、アイディアがいっぱい浮かんでくるということもあります。
得てして構えることは思考を硬直させてしまいがちです。
また場所的な状況が集中を生みやすくする場合もあります。
乗り物(馬上)、寝床の中(枕上)、トイレの中(厠上)はいずれも閉鎖された空間だといえます。馬の上は実際は閉鎖されているわけでもありませんが、主観的には自分だけの空間という意識があります。
このようなスペースが人間工学的にも集中に適している場所なのかもしれません。
現代の三上とは? 馬上での学習は自信につながりやすい
現代にこれを当てはめると、「馬上」は乗り物なので具体的には電車やバスなどになるでしょう。通勤や通学中に本を読んだり、勉強したりするのが効果的なのは昔から定番の学習法として言われてきました。今ではスマホで学習などもできますね。
通学中に勉強をするのは、時間節約もでき合理的というだけではありません。
このようなショートタイムで学習を集中してやると、学習の能率がよくなり、また「こんな短い時間だけど自分はそれを活用して勉強ができている」という実感を持てます。
実はこれが学習習慣全体に及ぼす影響が大きいのです。一歩自分が先行している気分にもなり自信を持てるようになります。
枕上の学習はやり方次第
続いて枕上はどうでしょうか。
ベッドの中での学習ということになりますが、これはやり方次第かもしれません。
読み物をすることの他にもイヤホンをつけて聞いて学習をするやり方なども考えられ、集中もできますが、少し方法は限定されてしまう気がします。
寝る前でもいいと思いますが、朝の寝起きの時間の方が効果的でしょう。
ちなみに私は、中学の時にベッドの上の天井に暗記する内容を大きく紙に書いて貼って、電灯を消さずに寝るという方法をやってみたことがありますが、たまに画鋲が落ちてきたりして大変でした。準備だけに時間がかかってしまったことを思い出します。
何をやるにも工夫が必要ですね。
厠上はご家庭の考え方次第
厠上は現代ではトイレの中ということになります。
トイレはやはり集中しやすい場所です。昭和でしたら、お父さんが新聞を読んでトイレから出てこないなんて話もよく聞かれたものです。今だとスマホでしょうか。
勉強の場合も、本人が気にしなければトイレに本や暗記のためのグッズを持ち込んで勉強すれば結構効果があがります。
またトイレの壁に、暗記する内容とかを紙に書いたり印刷して貼っておくという方法もあります。これも毎日定期的に見るので、覚える意識がありさえすればかなり効果的です。
しかし、トイレについてはご家庭での理解がないと難しいところがあります。勉強のためとはいえ壁に何か貼っては困るという家も多いでしょうし、何よりトイレに入って出てこないと後がつかえるという問題もありますよね。
これも工夫次第でしょうか。
学習方法を考えるという習慣をつくることが実は一番大切
三上については昔も今も集中しやすい場所ということで共通ですが、やり方にはひと工夫いるところだと言えます。
しかし重要なのは、このようなことを自分でいろいろ考えてみるということです。
学習方法というと誰かに「こうやるといいよ」「こうしなさい」と言われてやるという生徒が非常に多いのですが、良い学習方法は1つではありません。たくさんあります。
だから、自分が効果をあげられると思う方法を考えることが、実は一番大切なのです。
なぜかといえば、学習生活は長く続きます。中学高校大学、人によっては大学院、そして社会に出てもいろんな意味での学習が続きます。
その都度、「覚え方はどうしたらいいのか教えてください。やり方がわからないので全部教えてください」というのでは実際困ってしまいます。自分で工夫をして、「ああ、これはこうやって覚えてやれば、期日までにできるようになるな」というようにできるのが、どのような場面でもおそらく大切になってくることだからです。
長い人生においては、勉強の内容ではなくて勉強のやり方を学ぶということの方がよほど重要なのです。
魚をプレゼントするよりも、魚の釣り方を教えるほうが長い間その人のためになるという教えがありますが、勉強のやり方も同じです。そして基本のやり方を知ったらそこからは自分でやり方を工夫できるようにするのです。
最初にハゼの釣り方を教わったら、今度はどうやったらタイを釣れるようになるか、そしてどうやったら、やがてカジキを釣れるようになるか…、どんどん自分で工夫をしていく、それが大切なことだと思います。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。