文章題になるとかけ算ばかりの答えを書く生徒
小学校の算数で、文章題を苦手に感じている生徒はかなりいると思います。
計算ドリルのような問題はスイスイと解いても、文章で聞かれるとまるっきりお手上げになってしまう生徒もいます。
これは本人に能力がないということではなく、最初にやり方をしっかり教えてもらっていないことによって、苦手意識が出来てしまった場合がとても多いです。
もちろん学校の授業でも具体例を挙げて、説明はされたことでしょうが、その後自分で問題を解くときには、生徒は一旦振り出しに戻って自分で問題を見て考えます。
その際生徒は文章を目にして、これまでの単純な計算問題は、目の前に出てきた数字をとにかく使って、自分の知っているやり方をしたら正解してきたので、今度もそれでいけると思い文章の中にある目の前の数字を拾い計算をします。
そしてこれまでと同様に、何となくかけ算をしたら(かけ算だけの問題が並んでいるので当然)全部正解になります。
「ああ、これでいいんだ」と思ってしまうのです。
これは本当によくあるパターンです。
このようなことが起こるのは、学校の最初の授業で簡単な問題の立式の方法を教えても、生徒本人がそれをイメージできているか十分に確認できないまま、どんどん演習に入ってしまうことに原因があります。
また学校の算数のテストの多くが、「~のかけ算」というようなタイトルになっていて、全部かけ算すれば文章をよく読まなくても満点が取れてしまうようなものであることも、さらに理解しないまま進んでしまう要因になっていると思います。
文章問題は単純計算ではないので、十分に立式のイメージができないまま演習をたくさんやっても混乱するだけです。
まず十分にイメージをできるようにすることがとても大切です。それを最初の時点でしっかりやらないと、次第に生徒に苦手意識が出てきます。
そしてそういう生徒は、文章題を「当たった」「はずれた」という観点でしか見れなくなってしまいます。単純な計算問題と違うという意識がなかなか持てないのです。
軌道修正には何よりもイメージングが重要
文章題が苦手な生徒が一番できないことは、問題文に書いてある状況をイメージすることです。
例を挙げて説明します。
「100円のりんごが5個あります。合計でいくらになりますか」
この問題は、100×5=500という計算ができれば答えられる生徒がほとんどです。
ところが、その問題の後に、
「たまごを5個買ったら合計で100円になりました。たまご1個はいくらですか」
という問題が出てくると、驚くことにかなりの生徒は5×100=500という計算をするのです。
なぜ文章に全く違う状況がはっきり書いてあるのに、読まないで同じようにかけ算をするのか、私は最初大変疑問に思いました。
その後、こういう間違いをする生徒は問題文を読んでも、「たまご」「100円」「5個」「いくら」という情報しか読み取れず、その相関関係を文面からは全くつかめないのではないかという考えに至りました。
生徒と話をすると「ああ、そういうことか、全部で100円払ったんだね」ということにようやく気づき、納得をするからです。口頭だとイメージができるのです。
指導の際に図をかいたりすれば、イメージが浮かびすぐ納得できるということからも、このことは分かります。
イメージする練習
イメージをできる人間からすると、文章問題を見て簡単な図をかいたりしてイメージして解答をするのはそんなに難しいことではなく、むしろ図をかかないとわからないような問題もたくさんあります。
そしてやり方を教わらなくても、最初から見よう見まねでイメージができる生徒もいます。
しかし、自分だけではうまくできないという生徒も多いのです。
そういう場合には、図のかき方、イメージングの仕方自体を一から教えてあげなくてはできません。
それをせずに「よく考えて」とか「これはこうだからおかしいでしょう」などと言っていても、文章題は一向に解けるようにはならないと思います。
たとえば先ほどの問題にしても
「じゃあ自分でこの様子を図にかくか絵に描いてみて」
と言ってかかせて、それを見て考えさせるのです。
そのとき注意すべきポイントは、教える側がかくのではなく、本人にかかせることです。
実際にはかかせてみても、びっくりするほどかけません。
いかにイメージングができていなかったかがはっきりわかると思います。
焦る必要はありません。図のかき方から1つずつアドバイスしていきましょう。
一見非常な遠回りのように見えますが、こういうやり方をすれば、次第に自分の頭でイメージをすることを生徒はつかみます。
すべてはそれからだと思います。
良くないのは、文章題が出来ないからといって、イメージングを覚えないまま、たくさんの問題をやることでマスターしようとすることです。
慣れでできてくる部分ももちろんありますが、生徒によっては問題になっている状況をイメージせずに、字面だけで答えを出す自己流のやり方を作ったりしてしまうことがあります。
たとえば割合の問題で、何を何に比べて考えるのかという一番基本になるイメージの部分を頭に浮かべず、小さい方を大きい方で割るといった覚え方をしてしまうようなことは、とても危険です。
そうなると、少しひねった問題や応用問題が出てきたときには、お手上げになってしまうことになります。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。