助動詞・疑似助動詞
英語学習の大きな単元として助動詞というものがあります。
中学英語では、can(~することができる)辺りから始まって未来を示すwillや許可を示すmay(してもよい)などへと続くのが通例です。
そして同時に助動詞の役割を果たす熟語も学びます。
be going to(未来を示します) have to (~しなくてはならない) be able to (~することができる)のように助動詞と似た意味を複数の語句で示すもので、疑似助動詞とも呼ばれます。
この助動詞の学習で最も重要なことは、後ろに来る動詞が必ず原形になるという点で、テストなどで一番聞かれるのはそこです。
イディオム的な知識は中学ではやや軽く触れる程度のため、
たとえば will とbe going to のニュアンスの違いや、今回の内容でもあるmust と have to の違いについては、詳しく触れません。
最近の教科書では「まったく同じではない」というような表記も見かけますが、中学の英語としてはほぼ同等のものとして(ニュアンスの違いが問題とならない範囲で)問題も作られているようです。
must と have to そしてmust not とdon’t have to
mustは「~しなくてはならない」と訳される助動詞で義務を表します。中2の英語で登場するのが普通です。
have to もその前後で登場して同様に「~しなくてはならない」という意味とされ、must とhave to の書き換えは頻出の問題となっています。
ここまではそんなに難易度が高くはないのですが
生徒が「おやっ」と思うのは、これらの否定形を学習したあたりです。
ただこの「おやっ」は英語が得意な生徒しか気づかない「おやっ」かも知れません。よく考えるとおかしいという感じだからです。
must の否定形は must not (mustn't)ですが、この訳は「~してはいけない」です。わかりやすく熟語にすると「禁止」です。
だからこの同意表現は Don't ~(禁止の命令文)になります。
You must not ~ = Don’t ~ となります。
ところが
must と同じはずのhave to の否定形であるdon't have to の意味は
「~してはいけない」ではなく「~する必要がない」つまり「不要」なのです。
同意表現は need not ということになります。
このようなことから
「同じ意味の言葉の反対語が全く違うのはどういうことか?」そういう疑問が起こるわけです。
must と have to の違いを教えないことが混乱の元
大体の生徒はそもそもこの違いに気づく以前で、覚えることに一生懸命なので
実際にはあまり問題にはなりませんが
この違いの原因は、must とhave to の微妙な違いにあります。
must は確かに義務ですが、ニュアンスとしては主観面を重視した義務です。
たとえば I must eat. は他人にかかわりなく「オレは食べなくてはなけない」という感じです。
これに対してhave to も義務ではありますが、客観的を重視して義務と言えるでしょう。
I have to eat.は周りのみんなが食べているから「ぼくも食べなくちゃいけない」というニュアンスになるかと思います。
だとするとmust の反対は他人に関係ない義務「オレはやらなくちゃ」が前提なので、拘束が強い内容の意味になるため「「お前やるなよ=禁止」となり
have toの反対は他人との関わり上の義務「ぼくもやらなくちゃ」が前提なので、「あなたはやらなくてもいいでしょう」というような「不要」となるのではないかと思われます。
(対比をわかりやすくするため主語も入れ替えてみました)
ただ結構難しいニュアンスの違いなので、会話でつかっていないとちょっと文面上ではつかみにくいかもしれないと思ったりします。
ただmust とhave toの違いをしっかり教えないでその否定形のみイディオム的に強調して覚えさせるやり方によっては、むしろ混乱する生徒もいると思いますから、もう少し触れておいてもいいようにも感じます。
助動詞の学習は、英語の中では割と論理的な思考で切り抜けられる部分が多いように思います。
今回のmust とhave toのように一見同じでも少しニュアンスが違っているようなものが、その否定形の違いと繋がっていたりしますから、広くそういう相関を丁寧に見ておくことで一気に深く理解ができるのは間違いありません。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。