【楽しい古語の世界】「よろしく」と「よく」の微妙な関係とは?

「よし」と「あし」

 高校の古典では、いろいろな古語が登場しますが、

現代語で言うところの「良い」と「悪い」に関しては

「よし」「あし」がその意味の言葉になります。

分かりやすくするために強いて漢字にすれば「良し」「悪し(あし)」となるでしょうか。

「悪し(わるし)」ではありません。今でも「悪しき慣例(あしきかんれい)」などという表現もありますね。

あるいは物事の「良し悪し」なんていう言葉もあります。

「よろし」と「わろし」

 実は古語には「良い」「悪い」よりも少しニュアンスが弱い「悪くはない(ほどほどに良い、普通)」と「良くはない(ほどほどに悪い、普通以下)」を表す「よろし」と「わろし」があります。

「よし」「あし」が絶対的評価に対して「よろし」「わろし」は相対的評価と言うようない方もされ、程度を順に並べると

良い方から、「よし」「よろし」「わろし」「あし」という順になります。

「よろし」を「普通」と訳す場合もあるので、イメージとしては

「よろし」ははっきり「良い」を除き「普通」までを含めたかなり広めの評価であり、そして「普通には至らない」くらいから、はっきり「悪い」に至らないあたりが「わろし」となるかと思います。

こういうのは本当に微妙な表現で、だからこそ「古典は嫌」という人もいるのですが

逆に「日本語の神髄」という感じで「そこが良い」と感じる人も多いのではないでしょうか。

「よろしく」

さてそこで、タイトルにある「よろしく」ですが、

ご想像の通り「よろしく」は、この「よろし」という形容詞の連用形(シク活用)になります。

「よし」と比べると「まあまあ良いといったイメージに」というのが「よろしく」です。

そういういきさつから、現代語であらゆる場面でよく使われる玉虫色的な言葉「よろしくお願いします」という言葉が誕生したのです。

 この言葉は外国語には訳すことが難しい言葉としても有名ですが

「『良い』とまでは行かなくてもいいから、程よい程度に状況に合わせて適切で、悪くはない状態でやってもらえたら嬉しいかも知れない」

と言った感じのニュアンスを相手に伝えるスーパーワードだと言えます。

あるいは状況によっては

「これから始まるわけですが、悪くしないでまずまず程よい程度に自分を受け入れていただけると嬉しいかも知れない」

と言ったニュアンスになることもあるかと思いますが

 日本人独特の本当に微妙なイメージの言葉であることは間違いありません。

 そしてその由来は、そもそもが「良い」未満の「普通以下」を超える程度という

この「よろし」という古語から来た言葉であったという訳です。

どうです?古語って面白いでしょう。

今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA