化学記号の規則性に気づく
よく「考える学習」が大切であるという事が言われますが
それは何も難しい事を言っているのではありません。
簡単に言えば、勉強をすべて「覚える事」だと思い込むのをやめればいいだけの話なのです。
たとえば化学式の学習を中2で普通始めますが
生徒たちが順番に Naはナトリウム Kはカリウム Hは水素 Oは酸素と言った具合に暗記をしていって
その後で化合物の名称を覚えようとしてまた暗記を始めます。
教科書には、稀に化合物の表記の仕組みを詳しく書いてあるものもありますが
ざっとしか書いてないものが多いかも知れません。
塩化ナトリウム は化学式ではNaClで 「塩化」とある場合は「塩素Cl」がくっついていて、それが「ナトリウムNa」と日本語の場合とは逆の順番で表記されている
そんな簡単な決まりなのですが、それを詳しく書いてなかったり学校の授業で詳しくやらなかったとしても、順にそういうものが登場していけば、ある程度の規則性があるということには気づくことが多いと思います。
しばらく勉強をしていれば、塩化が「塩素Cl」と絡んでいて、硫化が「硫黄S]と絡んでいて酸化が「酸素O」と絡んでいることにも気づくでしょう。
覚えるだけの勉強は大変
そうやって「あっこれは決まりがあるぞ」とひらめいてほかの物も見たりするのが「学ぶ楽しさ」そのものなのですが
残念ながら、そういう気づきに日々近づいていこうとする生徒は年々減っている気がします。
これは学校も塾も、そしてネット上のさまざまな情報も、すべてが「結果を教える」という方向へ志向してしまっていて
大げさに言えば「ゆっくり」「じっくり」結論が出ないようなことを「のんびり」「考える」ことは意味がないと考えてしまってきていることによるのではないかと思い、大変危惧しています。
「えーっとこれ何だろう」
「まって先生答え言わないで」
そういってニコニコして考えている生徒の姿が減ってきているように感じてしまっています。
「先生答え何?」
「やり方を教えてください」
そんな言葉が先に来ることが多いかも知れません。
でも実は覚えるだけの勉強は大変で、しかも大きな目で見ると大変効率が悪いものであると言えます。
まずモチベーションを維持するのが大変です。国語辞典を端から端まで覚えろといわれれば普通の人は嫌ですね。覚える学習は突き詰めればそういうところに行きつきます。
これに対して考える学習の場合、自分が「なぜ?」というところに出発点があるので、なかなかモチベーションは下がりにくいという傾向があると思います。
そして上記の例で言えば
NaCl 塩化ナトリウム KCl 塩化カリウム などと覚えなくても
Na と K だけ知っていれば それが「塩化物」として頭の中で体系的に整理されていきます。
Hを水素だと知っているのに
「先生、じゃあHClは何ですか?教えてください」という質問が、本当にちょくちょくあるのです。
Clを「塩化」であると知っていれば、「塩化水素」に決まっているのですが、
とにかく別々に暗記していこうとしているのでこういう質問が起こってしまうのです。
ちょっとしたところのように思えるかもしれませんが
実はこの差は大きいもので、さまざまな面で「考えない学習」は弊害が広がっていき、そのうち学習全般に及んでしまいます。
その最も大きな弊害は時間不足です。
人間は機械ではないので、記憶の方のためのメモリーやCPU(中央演算処理装置=コンピューターの頭脳)が何もかも限界まで知識を入れていって、それを忘れないというようなことは不可能です。
しかし物事を相互に頭脳の中で有機的につなぎ合わせて情報をうまく処理する能力は機械やAIなどでは遠く及ばないものをもっているのだと思います。
だとすれば、記憶で勝負するのではなく「思考」で勝負するのが、
人間的な頭脳の使い方なのであって、そういう面では素晴らしいポテンシャルを秘めているのではないかと思います。
まずは「これとこれはどうつながっているのだろう?」
「なぜこうなっているのだろう?」というような色々不思議に思うことから
スタートしてみてはどうでしょうか。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。