【塩と塩化ナトリウムの秘密】「この世で一番うまいもの」をとらなければ健康。それって本当ですか?

無塩トマトジュース

 私は子どもの頃から割と自然派だったのか、トマトジュースが大好きでいつも飲んでいました。

年配の方ならご存じの方もいるかもしれませんが、ちっちゃな缶切りのようなもので缶を開けて飲むようなスタイルの頃から飲み続けています。

近年トマトジュースに含まれるリコピンの効能に注目が集まり、トマトジュースは以前と比べものにならない程人気が出て、多くの人が飲んだり料理に使ったりしているのはご存じのとおりです。

 でも最近トマトジュースを飲んでいる方が昔のトマトジュースを飲めば、びっくりしてしまうかもしれません。それは塩分の含有量の多さです。

当時はかなり塩っ辛いジュースのイメージがありました。

最近は炭酸水とかも出て来たので少し変わりましたが、昔からジュースといえばほぼ甘いものばかりだったので、塩気のある辛い飲み物を飲みたかった私にはぴったりでした。私は飲み物についてもちょっと変わり者だったのです。

 でも近頃のトマトジュースの主流は「無塩」トマトジュースです。近年の、減塩を良しとする健康志向にぴったりのスタイルとなっていると言って良いでしょう。

でも「塩入り」トマトジュースが好物の私はやはりそれでは物足りません。たまに「低塩」トマトジュースがあるとそちらを必ず買ったりしてしまいます。

あるいは「無塩」トマトジュースを買ってきてがっちり塩を入れて飲んだりしています。

 いつ頃だったか俳優の渡哲也さんがトマトジュースを旨そうに飲むCMがありましたが、この低塩ブームが来る前は、おそらくですがトマトジュースは「酒飲みのためのドリンク」というイメージがわりとあったように思います。

おじさん向けの飲み物だったのですね。

でも企業はたぶん「それじゃあいけない。女性にヒットするようにしよう」ということで「無塩」「低塩」戦略を打ち立てたのでしょう。

賢明な戦略だったと思います。いまや十分に一般的な飲み物になりました。

「減塩は健康に良い」には逆らえない。

 トマトジュースだけではなくすべての食品について、今や国をあげて「減塩」運動が盛んです。

医療機関や保健所では「『減塩』しないと大変なことになる」という啓蒙が繰り返し行われています。

現に塩分取り過ぎの影響による病気は多くあるため、誰も「減塩は健康に良い」という金科玉条には逆らえない状況です。

辛い漬物や塩気がたっぷり入ったトマトジュースが大好きな私のようなおじさんたちは、肩身が狭くなってしまいました。

健康診断の際にはメタボの上に塩気が好きな私などは、いつもお叱りを受けてしまっています。

 公の機関の人たちが一生懸命そんな心配をしてくださるのは本当にありがたいことです。

徳川家康の側室の話

 話はちょっと変わりますが・・・

戦国時代に武力制覇を果たして天下を統一して幕府を開いた徳川家康には、側室がたくさんいました。その家康の側室の話として「塩」に関する逸話が残っています。

家康に関わる逸話を見聞を元にまとめた書である『故老諸談(ころうしょだん)』という書物にその話が出てきます。

 家康の側室にお梶の方という賢い女性がいました。

あるとき家康が家臣たちと昔語りをしているときに家康が「この世で一番美昧いものは何か」と尋ねました。天ぷらの食べ過ぎが死因という話もあるくらいなので、家康は晩年は美食家だったのかもしれません。

 家臣たちは考えられるだけの珍味やごちそうの名前を答えていきますが、家康のそばでお梶の方が微笑んでいます。それで家康はお梶の方にも尋ねました。

するとお梶の方は「この世で一番おいしいものは塩です」と答えたのです。

確かに塩がなければどのような料理も昧を調えられず美味しくはなりませんから、一理ある考え方です。

家康は「では一番まずいものは何か」とも尋ねました。

お梶の方は「それも塩です。どんなに美味しいものでも、塩を入れすぎたら食べることができません」と答えたそうです。

 この言葉を聞いて家康は「男子であれば良い大将として活躍しただろう」と言ったと言われます。

まあその場の議題は食べ物で美味しいものは何かということだったので、お梶の方が自分の利口さを披露したような話で「ちょっとどうなの?」というような話ですが、

内容自体はまことに物事の本質をついている逸話だと言えるでしょう。

そして「塩」は「この世で一番うまいもの」という事はおそらく真実です。

お梶の方は後に英勝院と名乗り、水戸徳川家の祖である頼房の養母となりました。

塩と塩化ナトリウム

 ではその「塩」がなぜ最近はこんなにも敵視されてしまっているのでしょうか。

それは国の政策ということもありますが、私たちのイメージ上の勘違いがあると思います。

まず理解しなくてはいけないのは「塩化ナトリウム」は「塩」と同じではないという事です。

多くの人が学校で「塩は塩化ナトリウム」という風に誤解して学習をしてしまっていて、「塩」=「塩化ナトリウム」=「NaCl」という理解をしている可能性がありますが、

私たちが一口に「しお」と言っているものには大きく分けて3つの種類があります。

一つ目は専売公社が長く製作と販売を独占してきた、いまでもどこでもよく見かけるタイプの塩です。

これは精製塩と呼ばれるもので、工業的に作られます。成分の99%以上がNaCl(塩化ナトリウム)です。

専売公社制度は、日露戦争の頃に戦費を賄うためにも役立つということもありわが国で導入されて、やがてそれまで日本各地で塩づくりをしていた塩田(えんでん)が実質的に禁止されるに至ります。

その後長く「塩」=精製塩という事が常識になってしまっていて、多くの人があの「食塩」の瓶に入っている精製塩を「しお」だと思い込んでしまったのも無理はありません。

二つ目は最近流行になりつつある自然塩です。

天日塩とか天然塩とも言われるもので、海水をそのまま蒸発して作る塩です。塩田はそのための田んぼです。

自然塩には色々な種類がありますが、単にNaClだけでなく、そのほかにカリウム、カルシウムを始めたくさんのミネラルを含んでいます。多いものでは約70種類ものミネラル成分が含まれているそうです。
自然の力だけで結晶化するため身体に優しいとも言われます。体に良いのは、加熱を経ていないため海水中の酸素や酵素が活用されているからではないかとも考えられています。

三つ目は再生加工塩と言われるものです。

これは多くは海外から輸入した塩を溶かして再加工したものです。塩化ナトリウム以外のミネラル成分を含む塩ですので精製塩とは異なりますが、すべてが天日でできた塩ではありません。

このように見てくると「塩化ナトリウム」=「塩」と言えるのは精製塩だけであってそれ以外は全く違うものであることがわかります。

専売による製塩の独占と「塩分控えめに」の真意

 その精製塩しか販売できないという塩の専売制度は1997年に廃止され、その後2002年には完全自由化となりました。

それで最近の自然塩ブームが到来したわけですが、その頃からだったと思います。色々な所で「塩」を敵視するようなキャンペーンが多くみられるようになりました。

しかし実は、皆さんもよく聞いたことのある「塩分控えめに」というキャッチフレーズは、聞く人が非常に勘違いしやすい言葉なのです。

高血圧を招くなど様々な理由で、「控えめにしなくてはいけない」と言われるのですが、

そこでは単に「塩分」という言葉で、良くない摂取の対象が一括りにされているので、皆「塩(しお)」がいけないんだと考えてしまっています。

けれども実はそうではなく、ここで「塩分の取りすぎ」として制限した方が良いとされているのは広く「塩(しお)」の摂取を指していたのではなく、それは元々は「塩化ナトリウム(NaCl)」の過剰摂取を指していたのです。

つまりこれは「精製塩なら取り過ぎはダメ」という趣旨で、言われ始めた言葉だということです。

確かに塩化ナトリウムが99%以上の入っている精製塩を過剰に摂取するようなことが、あまり体に良くはないのは素人でもわかりますね。

逆に天日塩(自然塩)のようにミネラルが豊富な塩は体によく、お梶の方が言ったようにそれ一つで料理の味がすべて変わってしまうような「この世で一番うまいもの」なのですから、そんなにも目くじらを立てて一律に禁止するというのは、逆にどうかしています。

美味しさだけではありません。体に良いとされるミネラルの補給が出来なくなってくる恐れも十分にあります。

 江戸時代や第二次大戦下のシベリア抑留においては、「塩抜きの刑」と言われる刑罰があったそうです。

食事から塩を抜くことで、人間は体に力が入らなくなって衰えてしまうそうですが、塩と言うのは生命維持に欠かせないものである面が間違いなくあります。

最近の猛暑の中、炎天下で水分を体が欲する際に、同時に塩分を体が欲していることに気が付くことがあります。しかし今やコンビニに行っても多くの製品が減塩のものばかりで、塩分補給を最短でできるものが少なくなってきているような気がします。単に私が知らないだけかもしれませんが・・・。

 減塩政策というものは、日本人全般の体力を弱めるために、わざとやっているのではないかと言う人もいますが、このような状況を見るとその意見にも頷ける部分があります。

 健康の為に色々考えることは大変重要ですが、昨今のメディアの虚偽情報の氾濫を見ると、一から十までメディアや政治発信的な要素がある情報を信じきってしまうのは逆に危険かもしれません。

少なくとも極端な今の減塩政策の背後には医療利権やそのことによって多大の利益を受けている人がいるのは間違いがないと思います。

 そもそも日本だけ塩の販売を国が独占して、たくさんあった塩田をつぶし、良い塩づくりを放棄させたという事実や、製塩工場でないと塩(塩化ナトリウムという工業製品)を作れないようにした結果、それを国民が口にすることを実質的に強制していたという歴史を、私たちは不思議に思わなくてはいけないのではないかと思います。

塩に関する話は大変政治にも関係がある話なので、今回はこれくらいにしたいと思いますが、

ただ「塩は体に悪い」というような思い込みをして、何でも塩抜きの生活を徹底していたりするのは、かえって良くないと言われています。

ぜひ一度検索などをして、正しい情報を知るようにすることをお勧めします。

今後もみなさんのお役に立つ情報をアップしていきます。

 

 

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