はんこ文化と紙媒体

 昭和の頃、権利に関わる重要な文書はほとんど縦書きで、特に官公署提出書類などには様式面での制約も今より多かったことを記憶しています。

 たとえば、訂正削除の場合の捺印の横に書く訂正記載で字数を書く際には、多角文字を使うことが普通でした。

偽造を防ぐ趣旨だったのだと思いますが、今は文書は横書きが主流になり、多角文字を使う場面も少なくなりました。


 時代が変わればいろいろなことが変わります。

 インターネットを介した通信技術の発達や、本人認証技術の発達で、きちんと対策をしておけば、以前よりは他人になりすまして権利を奪う犯罪などもできにくくなりました。

 科学の進歩はこんな面でも人々の役にたっています。


 人類が何かの記録をする媒体は、最初は木簡から始まりましたが、紙が発明されてからはずっと紙を使ってきました。文字を紙に記録することにより不特定多数の人が情報を共有できるようになったわけです。

 紙が人類の発展にとって果たした役割は計り知れません。そして、思考をするためのツールとして紙に文字を記載する方式はその後絶大の力を発揮し続けてきました。

 ワープロが発明され、パソコンが普及するようになった後も、データと併行して紙面の記録も残すということが行われていましたが、最近は巨大なデータを保存できるようになったことや、データ保管の性能が飛躍的に向上したことから、次第に紙に記録を残すことをしない流れになりつつあります。 

 今後この傾向は加速するでしょう。


 先日IT担当大臣になった方がいわゆる「はんこ議連」の会長であったことから、各方面で批判が相次いていますが、本当にびっくりしましたね。

ステーキハウスの店長が動物愛護協会の会長であるようなものです。

 IT化の推進と伝統的なはんこ文化を守るということの両立を主張されているようですが、さすがにそれは無理なのではないでしょうか。 印鑑証明制度を電磁的申請の中で運用しようとでもいうのでしょうか?余計手間が増えるだけですね。


 はんこ文化自体は日本に伝統的な文化として価値があるものだとおもいます。紙しか媒体がない時代には認証の道具としての利点がありました。そして、彫刻の緻密さや美しさなど、伝統文化としての価値自体は今後も評価され続けていくものだと思います。

 しかし、現在多くの人々にとって、いまだに毎回紙媒体で何枚も何枚もはんこを押して、届け出のためにわざわざ半日費やして官公署に出向いたり、手間をかけて郵送したりするといったこれまでのやり方が、負担に感じられるようになっているということも確かです。

ネットで簡単にできる方法があり、しかも認証方式をしっかり確立すれば安全性もあるのに、それがなかなか十分に導入されないままであることに、いらだちを持つ人も多いのではないでしょうか?   

 みんなそんなに暇ではないんです。


 


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