夏休みが終わるのに
夏休みの終わりは通っている学校や、住んでいる自治体によって結構日付が異なります。
多くの人は8月31日に夏休みが終わると思い込んでいますが、そうでない学校はかなりあり
8月中に夏休みが終わるところも少なくありません。
ただ今年は例の新型ウィルス騒動で、夏休み終了が予想外に延びた学校が多いようです。
夏休みの終わりと言うと
昔から「宿題が終わらない」という生徒が、泣きべそをかいて勉強をしているというのが
風物詩のようなものでした。
いつごろからか、割と世間で夏休みの宿題を早く終わらそうという考えの人が増えてきて
早い生徒ではそれこそ夏休み開始前に宿題を終了してしまっているなんていう人も見かけるようになりました。
これは塾や家庭教師の普及が昔よりずっと進んで、アドバイスを受けられる人が多くなったのと
時代とともに親の教育に対しての熱心さが増してきたことも関係しているのかも知れません。
人は失敗から学ぶ
私の育った昭和時代の高度経済成長期には、世の大人はそれこそ滅私奉公のように働くという意識が主流で、なかなか子どもの教育に力を入れるというところまで手が回らない人も多かったのだと思います。
だから、子供の事は「人に迷惑をかけなければ自由にやれ」というような教育方針の親も多かったのでしょう。
私の育った家もそんな家庭で、自営業でしたので、あまり宿題のことも親にとやかく言われることがなく
小学校の低学年の頃は、夏休みが終わりそうになるまで自由研究やら作文やらを放置していて
8月31日に泣きながら仕上げた年が結構あったように思います。
でもこれは、今の自分から考えると到底考えられないことです。
どちらかというと私は、何事も人より先に手を打って準備を早すぎるタイミングでしてしまう傾向があるので
「どうしてあんなに油断できていたのだろう」と不思議に思います。
しかし振り返って考えてみると
あの失敗こそが、用意周到さを身に着けるための貴重な経験になっているのかも知れないと思ったりします。
人は失敗によって成長するものです。
大きな気持ちで見守ることも大切
今の子どもたちは、時間一つ取っても私が育った昭和のような牧歌的な時代の子どもと比べて、自由で暇な時間と言うものが見当たりません。
朝早くから部活があり、宿題の量も学校によっては半端ではなく
部活をやって学校から帰ると塾や家庭教師は当然ながら
家に帰ればSNSでまた友人と交流したりゲームをやったりして
ゆっくりと何かを考える時間を奪われている気もします。
せめて長い休みくらい気を抜いてと思っていても
意外に時間が過ぎていき、気が付いたら夏が終わっているという子どもも多いかも知れません。
確かにしっかり毎日学習習慣を安定させて、自分を管理できる人間になっていくことは重要ですが
一朝一夕にできないこともあります。
だからもし夏休みの終わりに宿題がまだ終わっていないという子どもがいたとしても
どうか必要以上に彼や彼女を追い込まないでやってください。
「自分が悪い」という事は必ずわかっているからです。
塾で指導をしていると
毎年同じように休みの終わりに宿題が終わっていない生徒を目にします。
夏休みの初めから毎回「宿題やってあるか。大丈夫か」と言い続けているのに
そんな生徒は全くお構いなしに宿題を放置してしまっていたりします。
宿題ができるように合理的なやり方をアドバイスしたり、塾に強制的に自習に来させて宿題を消化させたりしますが、それにも限界があります。
本人の意識改革なしでは変化は望めません。
しかしそんな生徒も長く教えていると
ある時期を境に急に自発的に先取りで何かを行うように変わることがあります。
自分の意識が変わりさえすれば、逆にいつでも子どもは変わることができるのです。
可塑性
刑法の勉強をすると「未成年者には可塑性がある」という言葉が出てきます。
これは成人と異なり、未成年者には未熟な考えのものも多く、時期が来れば成長をして意識が大きく変わることもかなりあるから、やり直しを認めるべきという考え方です。
刑法を勉強していた当時、
私は、「これは法益侵害をした者に甘すぎる」と感じていましたが
子どもを日常的に教える仕事についてからは
考えが変わりました。
大人にはたとえそれが悪習であって、本人に役に立つ色々なことを示唆しても、頑固に変わらないという人もたくさんいます。
しかし子どもは、本当にびっくりするほど変わります。
成長するといってもよいでしょう。
もっとも個人差もあり、大人と子ども、成人と未成年という線引きもあいまいであり
例外もたくさんありますが・・・
次へのステップと考える
今子どもの夏休みの宿題が終わっていないことを見て、あきれたり落胆している保護者の方も多いかも知れません。
本人を叱咤激励することはもちろん大切ですが
じゃあそれで、その子どもはずっとそうかと言えば
全くそんなことはありません。
だからむしろ
「これは本人を変えてあげる大チャンス」くらいに思って
上手に本人に「用意周到にしないと世の中では大変な目に遭うことも多い」ということを教えてあげると良いのではないでしょうか。
課題をやらなかったり、雑にやって出せば
今の学校制度では確実に内申点が下げられます。
いくら能力があっても志望校に内申点の面で行けなくなる可能性が出てきます。
もちろん受験でスムーズに進学することがすべてではなく、それだってやり直しはいくらでもできますが
とりあえず自分にとって大変なことになるという事がわかれば
その子はそこから大きなことを学ぶでしょう。
親は子どもには少しでもマイナスなことがあってほしくないと願いますが
マイナスな事態を経験したからこそ大きくプラスに反転することもあります。
いずれにしても考え方次第です。
本当に昔の話ではありますが、私は8月31日に泣きながら課題をやったあの夜
短時間で死ぬほど集中する経験を初めてしました。
あんなに集中したことはおそらくそれまでの人生で初めての事だったでしょう。
変な話ですが、あれが集中力の限界を知るきっかけになっている気がしています。
繰り返しになりますが
失敗は人を成長させます。
むしろそれは失敗ではなく、成長のきっかけかも知れません。