【高校化学の基礎】どうしてもマスターしたい「 mol(モル)という考え方」

molで悩む生徒たち

 高校化学の基礎では、mol(モル)という考え方が出て来ます。

ほとんどの生徒は、これが何であるのかが漠然としてよくわからないまま

計算問題を解いていきます。

 ある段階まで来ると「ああそうか、これは基本になる単位なんだ」ということに気が付きますが

苦手な生徒は、個別の公式を暗記しようとしているため

いつまで経ってもmolの考え方が分からず

結局わからないままに、計算式を立てていくため

苦手に拍車がかかるという仕組みになってしまっています。

 以前もmol計算については記事を書きましたが、今回はmolの考え方自体について掘り下げてみたいと思います。

molは新しく学ぶ化学の基礎的な単位

 物を数えるのには何でも単位と言うものがあります。

1000gは1kg

10dLは1L

 ただし、これは同じ単位がk(キロ)やd(デシ)などがついて変形しているだけですが

まとまった数の物が集まると、別の単位で数えるようになる形のものがあります。

鉛筆12本で1ダース 

米60gで1俵

和紙48枚で1帖 10帖で1束 など

特別なカウントをするものは、たくさんあるようです。

 molは、これと同様のものだと言えます。

「個数が6.02×1023 個集まると1mol という数え方」の単位がmolなのです。

この 6.02×1023 というのを「アボガドロ数」と言います。

 これはイタリア出身の化学者のアメデオ・アヴォガドロ氏の発見した「アボガドロ定数」による、原子や分子など物を構成する物質の個数の数え方です。

アボガドロ定数NA は、正確には6.02214076×1023 mol−1 とされています。アボガドロ数自体ではありませんので、計算の際は注意が必要です。

たとえば具体的にこれを用いると

 H(水素)原子が 6.02×1023 個集まったものがH原子1mol

H2(水素)分子が 6.02×1023 個集まったものが水素分子1mol

H2O(水)分子が 6.02×1023 個集まったものが水分子1mol

ということになります。

化学の初めにこれをしっかり押さえないと後は全く分からなくなる

 このmolというもの、化学の入り口で突然現れる新しく学ぶ単位なので

しっかりその意味を把握しておかないと後が大変になります。

およそ化学の計算では、これを基礎として使うからです。

 ところが学校の先生によっては、この超重要な単位について

他の公式と並立的にさっと説明して、先へ進む人も結構います。

そうすると本当に悲劇になります。

「molの意味がわからない」と相談してくる生徒は、化学を選択する生徒の

9割以上いるというのが私の実感ですが

もう少し学校の化学の先生は、ここを丁寧に教えるべきだと強く思っています。

molをわからなくさせる理由ともう一つの謎

 molの基本的な考え方は上記の通りで、単に数え方に過ぎないのですが

そのmolが本当にわからなくなるのには、理由があります。

そして更にmolの謎が深まってしまうのは、molと物質量(原子量や分子量)との関連に違和感があるからなのです。

順に説明しますね。

 たとえば生徒たちは最初に

O(酸素分子)1molは酸素分子が 6.02×1023 集まった集合を表す単位だと言えますが

この重さが「物質量にgをつけたものと同じになる」ということを(そういう説明はされないのですが)実は学びます。

つまり酸素分子1molの重さは、酸素分子の物質量が32(酸素原子は16でその2倍)なので32gと言うことになります。

 これはモル質量の学習になりますが、モル質量の説明において教科書も厳密な例外も含めたものを丁寧に記述することが多いため、先生はあまりこういう言い方を好みません。

そのためだと思いますが、ここで大抵の人はまず混乱します。

 要は「1molの重さは物質量にgを付けたもの」で高校の化学の問題はほぼOKなのですが

そういうことを中々端的に説明しないので、初学者にはわかりにくくなっているのです。

学校の教科書や先生だけでなく、ネット上の説明もこういう記述をするものは少ないです。

それでよくわからなくなります。

 誤解を恐れずに言えば

炭素原子(原子量12)の1molの重さは(普通)12g

水素原子(原子量1)の1molの重さは(普通)1g です。

モル質量の特別な計算問題以外はこれでOKなんです。

まずそこのところをしっかり頭に入れてほしいです。

 でもこれを前提にしたとき、ちょっと不思議に思いませんか。

冒頭に「謎」と言ったのはこの事自体を、不思議に思う人がいる(私がそうでした)からです。

だって「なぜ偶然にも1molの重さが原子量の数字と同じになるの?」と思いませんか。

人が創設した数え方の単位

 この点について「都合が良過ぎる」と感じる人は、とても勘が良いと私は思います。

大体の生徒は「一回りしてなぜか数字が一緒だな」くらいの感覚でしょうか。

 もちろんこれには理由があります。

原子や分子などには、本当に微細な数値にはなりますが重さ(質量)があります。

そしてたとえば、水素原子(原子量1)の質量と酸素原子(原子量16)の質量は

そもそも1:16になっています。

だから1個の場合に1:16の質量比であれば

アボガドロ数 6.02×1023 個集まった集合の場合の質量比も当然1:16になります。

 原子の基準は炭素原子(原子量12のもの)でこの質量が12とされているので

その12分の1の水素原子(原子量1)は、当然質量1でアボガドロ数 6.02×1023 個分の集合では1gになります。

だとすれば、比例して酸素原子は1:16の比から16gになるのです。

 そして、これらのことをまとめて簡単に言うと

実は「そう決めたからそうなっている」と言うことに過ぎません。

本当に当たり前のことなのですが、この一言がないために

「???」となってしまう人が結構いるのではないかと思います。

要は「人工的な単位の設定がされていて、その決まりを覚えていく」ということになります。

 私はよく生徒に指導をする際に

mol計算が分かるための決め手は

「質量は(物質量)g」 たとえば「分子量23の質量は(23)g」

そういうアドバイスをします。

以前の記事でも書きましたが、これをしっかり問題の中で意識すれば

ほぼこれでmol計算の仕組みが、すっとわかるようになります。

 反対に、複雑な例外や概念を一生懸命入れれば入れるほど、計算問題ではむしろ混乱してできなくなりますので、注意が必要です。

ぜひお試しください。

今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。

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