【身近な言葉の由来】なぜ「やっこさん」「冷ややっこ」?「奴(やっこ)」って何?

やっこさん

 よく刑事ドラマなどでお互いに知っている第三者(知人)のことを「やっこさん、いまどうしてる?」などど言っているのを聞くことがあります。

何となく雰囲気で、その人のことを指すのだろうと思って聞いている人がほとんどだと思いますが、「やっこ」って何?という疑問がわきますよね。

 そこで今回は「やっこ」の語源にさかのぼり、どんな意味なのかを書いてみたいと思います。

やつこ(家つ子)

 古来、人に使われる身分の者は「家つ子(やつこ)」と呼ばれていました。

万葉集に「住吉の 小田を刈らす子 奴(やつこ)かもなき 奴(やつこ)あれど 妹がみためと 私田(わたくしだ)刈る」という歌があります。「住吉(すみのえ)で稲刈りをしている若いあなた、あなたに下男はいないのですか。いいえ下男はいますが、彼女のために彼女の家の田(私田)の稲刈りをしているのですよ」という意味の歌ですが、ここですでに「奴(やつこ)」という言葉が登場しています。

律令制度の下でも最下層の奴隷、奴婢(ぬひ)として位置づけられていた身分であったようです。つまり「奴隷」の「奴」というニュアンスでの「奴(やつこ)」を意味していたということでしょう。「やつこ」の他に「やつご」という呼び方もあったようです。

やっこ

 このように、語源としては下人や奴婢というようなイメージで使われてきた「奴(やつこ・やつご)」ですが、やがて「やっこ」という呼ばれ方に変わり、次第に自分と同じくらいの立場の人に対しても親しみを込めて「奴(やっこ)」という呼び方もするようになりました。

それで現在では「奴(やっこ)さん」という使われ方もされているのです。

以前「あいつ」の漢字はどう書くのかという記事を上げて、その際にも「奴」についての事を少し書きましたが、「奴」は自分と同等かそれ以下の身分の人を指し、身分の無くなった現代では、自分と同じ地位(先輩後輩の場合は同輩)かそれより下の地位(後輩)を意味する言葉となっています。

なぜ冷ややっこ?

 ところで冷えた豆腐の料理を「冷ややっこ(冷奴)」と言いますが、なぜそんな呼び方をするのでしょうか?

これについては実は大変面白いエピソードがあります。

江戸時代に武家の身分の低い奴(やっこ)が来ていた着物の柄(がら)が四角い柄であったらしいのですが、豆腐が四角い形をしているのと、その四角い柄の形をかけて、奴の言葉を用いて「冷奴」と呼ぶようになったらしいです。

見ている人が豆腐をイメージするようなちょうどそんな感じだったのでしょう。何も「冷たい下人」というわけではなかったのですね。

しかし、全く関係のない豆腐の形と下僕が結びついてできた言葉というこの話は、当時の人にとっては良く意味がわかるものだったのでしょうが、後世の我々にはちょっとピンとこない話ではあります。

 私たちが日常何気なく使っている言葉にも様々な歴史があるものですね。

今後も皆さんのお役に立つ情報やエピソードをお伝えしてまいります。

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