【五公五民】権益を持つ者に求められる「お互いさま」の心とは?

江戸時代の五公五民

 江戸時代の年貢を納める率は五公五民であったそうです。

  農民の取り分と農民が納める年貢とが5:5の割合でした。

 江戸初期には四公六民( 五公五民より緩かった)でしたが、八代将軍徳川吉宗の享保年間の頃から五公五民となったと言われています。

 私たちが歴史の勉強をしていて、この五公五民について聞くと、

「半分も持っていかれるのか。ひどいな」と感じます。

 それに比べて現在に生まれて良かったなと思うのが普通です。

少なくとも以前はそうでした。

 ところが最近は、この数字についてよく考えると、

「あれ?」と疑問に思うことがあります。

 日本では税負担がかなり大きくなってきています。そして、最近消費税も税率が上がりました。

 所得税や住民税などだけでなく自動車税など所有にかかる税、社会保障のための負担や消費税まで含めると、実質50%を超える場合もあるとの試算もあります。

数字だけで言えば

「五公五民」なんです。

 より良い社会を作るための公平な負担ということと、今後の少子高齢社会を考えると税負担が増えるのは避けることはできないことかもしれません。

 また江戸時代とは異なり、現在の税は名目上はすべて国民(納税者)のためにきちんと使われることになっているので、年貢とは異なりますが…。

既得権益だらけの現代

 しかし、どうでしょうか?

 現代の日本は学校で習う歴史に出てくるような時代とは異なり、公平で誰もが納得して笑顔で暮らせる理想的な社会になっているでしょうか?

歴史の指導をするたびにそんなことを考えます。

 年配の方は、自分が昔小学校で習ったような、皆が笑顔で暮している未来社会が今到来していると思いますか?

 現代の日本の状況を考える度に、私は室町時代の後期・戦国時代前の時代状況と今の日本がとても似ているなと感じます。

  室町時代には、いろんな利権がはびこり、同業者組合の「座」というものが発達して、新しいことをしようとしても既得権益を持つ者に利益を奪われてしまっていました。

 店を開けようと思っても、許可が厳しくてなかなかできなかったりしました。

自由に何かを売ろうとして市を開くこともできませんでした。

 権益を持つ者は、あたかもそれが天が最初から自分に与えた特権かのように振る舞い、他人に気を配る心の余裕がありませんでした。

 現代の日本でも、

「先行きが不安だから自分だけは安心でいたい」

「これで勝ち組になったから一安心」

「上手く行っていない人は努力が足りないだけ」

そんなことをいろんなところでよく耳にします。

何だか似ていませんか。

戦国時代の到来は必然だった。

 すでに権益を持っている人が自分のことだけを考えて振る舞えば、どんな時代でもやはり同じ状況は生まれてきます。

 富も権益も適正に再配分していかないと、その時は良くても結果的には社会全体に停滞をもたらし、結局利益を独り占めしようとしている人にも良くない結果をもたらします。

 社会も経済も一部だけの事象ではなく、世界はつながっているからです。

 良い例が税金です。

 税収を上げようとすることばかり考えて税率をどんどん上げていけば、肝心の経済活動が停滞して税収の元になる国民の所得や取引高が減少します。

 そうすると結局税率を上げたがために税収が減るという皮肉な現象が起こります。すでに過去にもそんな漫画のような現象が、ここ日本では起こっているのです。

 室町時代では、結局権益を持っている者同士が争い合って、応仁の乱が始まり戦国の世になってしまいました。

 織田信長が現れ、あらゆる既得権益を倒すまでは民衆は大変な苦しみを受けました。

 現代では命まで奪われることはありません。

 しかし、不公正な権益を持つ者がたくさんいるために自由な競争が阻害されてしまうのは未来に不幸しかもたらしません。

 以前より日本の経済が停滞している背景にはこのことが大きく影響していることは間違いがありません。

 そして「勝ち組」「負け組」という考え方は、もうやめたらどうでしょうか?

「勝ち組」の人はなぜ勝ったと思えるか知っていますか?

それは負ける人がいるからです。

 もし勝ち過ぎて、負ける人が皆いなくなってしまえば、最後には誰も勝つことができない世の中になってしまうのではないでしょうか。

 今の日本の問題は、権益を持つ者に心の余裕がないことにあるのではないかと思います。

「お互いさま」 

 相手も自分の立場になることがありうるし、自分もいつ相手の立場になる場合があるのかもわかりません。

 この言葉はそんな中で相手を思いやることの価値を表す素敵な言葉です。

  日本の古くからある、この思いやりの心を私たちはもっと大切にしていかないといけないのではないかと思います。

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