【教師に求められること】早く気づきたいこと「質問するのは理解している人だけ」

「何か質問がある人」

学校の授業でもよく先生が言う台詞に

「何か質問がある人」

というのがあります。

そして、声が上がらないと

「じゃあ、ここよく復習しておいて」

などという締めくくりがあったりします。

 私の塾では授業を中心にやっていた頃からずっと、

原則として、こういう問いかけはしないように教師たちに指導をしてきました。

それは、あまり生徒の理解を上げるためには意味のない問いかけだからです。

 的確な質問ができるのは、その学習内容について8割以上くらいの内容が理解できている生徒です。

それ以外の生徒は、的確な質問はできずかなり的外れの質問しかできない場合が多いと思います。

そして何割かの生徒は、そもそも学習内容について全く理解ができておらず、質問どころではないというのが普通の状況だと思われます。

 だから「何か質問がある人」という問いかけは、

今日の勉強内容を「よく理解できている人は誰かな」

と言っているのとさほど変わりません。

 そうであれば、個別の内容について教師から理解できているかどうか問いかける方がよほど意味があるからです。

「こういう場合にはどうなる?」

「なぜこうなるか説明して?」

と言った具合に教師から質問をして確認をするべきなのです。

みなさんも何かのミーティングなどで主催者に対して質問をするとき、

大方のことはわかったが「ここが分からない」というときに質問をすると思います。

全体的に何も良くわからない段階で手を挙げることはありませんね。

 優秀な司会者だと、このあたりのことを心得ていて、

「○○さん、私が説明したやり方で当日できそうですか?」

「もし○○ということがあればどうするか、手順は大丈夫でしょうか?」

というような問いかけを逆にしていることに気づかれるのではないでしょうか。

質問に対するリアクションが生徒の意欲を失わせることもある

 生徒からの質問を受ける時に

授業でも個別指導でも、その対応には非常に注意を要します。

きちんとした対応をしないと生徒の意欲を失わせてしまうことがあるからです。

 たとえばこんなやり取りがあるかも知れません。

 英語の教師が、三人称単数のsについて30分くらい時間をじっくりかけて熱弁をふるいます。

大変大事なところなので、三人称の意味などについても難しい用語をできるだけ使わずに、自分としては精いっぱいわかり易く説明をします。

 大体みんながわかってきたというタイミングで問いかけをします。

「何か質問がある人」

「はい」

「○○君言ってみて」

「先生、He like English. ではだめな理由がわかりません」

 こういう質問は実は結構出るのですが、

慣れてないと教師はカッとなってしまうかもしれません。

「いままでずっとその説明をしてきたじゃないか」

「何を聞いていたんだ」

と言ってしまう教師もいるかもしれません。

 どうですか?

教師をやっている皆さん、

これから教師を目指す皆さん、

この質問にどう対応すればよいと思いますか?

 教師としては、三単現のsがつく場合はこういう場合という説明をしてきたので、

自分の説明をしっかり聞いていれば、Heの場合には「likes」という形になりsがつくのかはわかるはずじゃないかと教師は考えます。

 でも、実はこの教師は生徒の質問の意味をよく把握していません。

生徒は、「先生、He like English. ではだめな理由がわかりません」と聞いているのです。

「Heの場合はlike になるのではないですか 」と言っているのではないのです。

 質問者というのはどうしても緊張をしているため、その質問内容は普通舌足らずな表現になります。質問をするというのはそれだけ「怖い」行動なのです。

「こんな変なことを言って馬鹿にされないだろうか」

「笑われたらどうしよう」

そう考えるのが普通なんです。

 話を元に戻します。

この場合の質問の本当の趣旨は、

「三単現のsがつくようになった由来を教えてください」という趣旨です。

sがつくのがどういう場合かを聞いているのではないのです。

 これは実際にあった質問を元に書いているのですが、

どうですか皆さん、質問の本当の意味に気が付くことができましたか。

 もしこれを最初のイメージ(たぶん誰も最初は自分の説明を聞いていないのではないかと感じるような質問です)で感情的になってしっかり返事をしなければ、

おそらくその生徒は

少なくとも「この先生にはもう質問をしても無駄」と思うことでしょう。

 冒頭のように、漠然と質問をさせるのと同様

漠然と出された質問を受け止めるのも、生徒にとって良くない事態を生む危険をもつ教師の行動であると言えます。 

質問できるのは理解している人

 今回の2つの話は1つの共通点があります。

それは、「質問できるのは理解している人」という点です。

だから

「方向違いのことを聞いているのではないか」

「自分の話を聞いていなかったのではないか」

と決めつける前に、

生徒の質問の意味がどこにあるのかを十分に考えて対応することが重要です。

 変な質問だと思われる質問をしてくる生徒が、意外にきちんと自分の話を聞いていて、それを前提として質問をしているということは、私の経験上もよくあったことです。

 質問をしてくるという段階で、ある程度は理解をしているという前提で考えて良いのかも知れません。

 また、生徒は必ずしも教師にとってわかり易い表現で質問をしてくるわけではないということを知っておく必要があると思います。

 質問については、生徒の理解不足を疑うのではなく自分の相手の質問への理解不足を疑うべきということですね。

今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。

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