苦手と思っている人が多い時差の問題
地理を苦手と思い込んでいる生徒はたくさんいますが
そういう生徒に
「地理のどこがむずかしい?」
と聞くと
ほとんどの生徒から声があがるものとして
「時差の問題」というものがあります。
時差の問題には苦手意識を持つ人がきわめて多いです。
きっと、「ただでさえ地理に興味がないのに、理科や数学のように計算をするなんて勘弁してほしい」
そんなことを思っているのではないかと思います。
これは時差というもののイメージが、地球が動いていることや時間と空間を隔てた所相互の話で、
何か難解なことをやっているのではないかという誤解されたイメージであることによります。
しかし、実はそんなことはありません。
ごく単純な計算問題です。
しかも覚えておくことはほんの少しですから、
むしろ得意にして得点源にすることができるタイプの問題といえます。
できない理由もほぼわかっています。
だから気をつけさえすれば対策が可能なものと言えます。
これをしっかりやらずにおく手はありませんね。
まずきちんと世界全体をイメージすることが大切
時差ができない生徒の多くは、時刻と経度の数字を見て問題とにらめっこしていて
「全然わかりません」と言ってきますが、
時刻と経度の数字だけでスイスイとできるようになるのは練習を重ねた後です。
数字を見るだけで考えているからわからないのです。
まずきちんと世界全体をイメージします。
やり方は人それぞれですが、一番簡易な方法を紹介します。
問題用紙の空いたスペースに、
①まず、地球全体を大きく〇にした絵を描きます。
②次に、本初子午線の通っているイギリスを通る縦線(経度0度の経線)を大体の位置に引きます。
③更に、大体太平洋の真ん中付近に縦線(日付変更線の基準になる経度180度付近の経線)を引きます。
④そして問題に出ている2つの地点の経度、たとえば東経45度の地点と、西経120度の地点であれば、それぞれの大体の位置にそれぞれ縦線(経線)を書きます。
線の位置は全部大体でOKです。相互の位置関係と地球上でどこの話をしているのかがビジュアルで分かればよいのです。
⑤そしてお互いの線の間が何度か計算します。このときお互いの地点が東経と東経、西経と西経なら単に引き算をすればOKです。
⑥もし本初子午線をはさんで東経と西経の地点の場合(上記の④はこれにあたります)には、相互の経度をたし算します。
図を描いているので、地球が丸く西経の端と東経の端がつながってしまっていることが一目でわかります。
だからお互いの経度の違いを出すためには本初子午線を中心とした側の経度のたし算になることがビジュアルででわかり、非常にイメージをしやすくなります。
⑦最後に計算して出された度数を時間に変えます。計算は「度数÷15」で時間が求められます。
ここで覚えておくべき知識はわずかに「15度で1時間」という知識のみです。
地球は球体ですので一周360度ですが、これを1日24時間で割ると1時間が15度となるためこの数字があります。
したがって、出されたお互いの線の間の角度を15で割れば時差を出すことができるのです。
これだけです。
やり方こそ重要だということがよくわかる例
このように時差の基本問題については世界全体のイメージと略図を描けばほぼ一瞬で解けてしまいます。
教えるとほとんどの生徒は納得をします。
数字だけで考えてさっぱりわからなかったものが
簡単ですがビジュアル化されたために
一瞬で何をしているかに気づくことができたからです。
さて、ここで問題です。
「ではその生徒は次回も全員その問題を解けるでしょうか?」
残念ながら答えは、実は「ノー」なんです。
生徒に「図を描くんだよ」と言って、図の描き方を練習付きで教えても、
次回もまた数字を前に「?」という顔で説明を待っていたりします。図は描いていません。
図を見て意味がわかったから理解できたのが、図がないままではできるはずはないですね。
時差について「教えてもらってわかった」という記憶だけがその生徒に残り、
肝心の「図を描いて考える」ということを行わないから、また解けないのです。
もちろん指導した通りやり方をしっかり実行する生徒もいます。そういう生徒はもちろん毎回解けるようになります。
しかしすべての生徒が言われたやり方を行うわけではありません。
そして、やり方を取り入れずできないままの生徒は、何回も何回も同じ説明を受けることになります。
ちょっとした違いが大きな違いになる
時差の問題は本当に良い例だと思いますが、勉強においては正しいやり方をマスターするということがとても大事です。
たぶん学校でも「こうやって、簡単な図を描いて…」という感じで教えてもらっていることは結構あると思います。
時差の問題がいつまでたっても解けない場合には、問題の中身より図を描いて考えてやっているかどうかを振り返ってみてください。
数字だけでわかるほど、人間はイメージ力があるわけではありません。
数学の問題を暗算だけでやろうとしてミスが多い生徒と
時差の問題がさっぱりわからないという生徒は
かなり重なると思います。
そういう生徒の場合、
練習量とかいう以前に、まず図や式を軽視することをやめるのが急務だと思います。
飛行機で移動するタイプの問題
時差の問題では応用として、「飛行機で移動して現地時間で到着したのが何時で、これは出発地では何時?」というような問題があります。
高校地理でも混乱をして分からなくなっていて相談をよく受けるタイプの問題ですが、
これも実はかなり易しい問題です。
数字や時刻がたくさん出てくるため混乱してしまうだけです。
難しいと思い込んでいる場合がほとんどです。
●出発地 ①出発時刻 ②到着時刻
●到着地 ①出発時刻 ②到着時刻
というものを書き出して、①の出発地と到着地、または②の出発地と到着地を比べれば一瞬でできます。
これが苦手な生徒は、頭の中を整理する「書き出し」と相互を比べて考える「相互対照」ができていないまま、頭の中であれこれ考えるため混乱をしてしまっているのです。
この問題は頭の中でだけ考えても正解は難しいです。
情報を整理する力を問われているからです。
正解するためには、情報の「書き出し」と「相互対照」が必須です。
この問題は中学でしっかりできるようにすれば、実力テストや入試だけでなく、高校の地理でも相当聞かれる問題ですので、先々も得意な分野を作ることができます。
一度「書き出し」と「相互対照」をやってみて、しっかりやり方をマスターしておくことをお勧めします。
今後も皆さんのお役にたつ情報をアップしていきます。