化学反応式の仕組み
2H2O→2H2+O2
これは、水( H2O )を水素( H2 )と酸素( O2 )に分解した場合の化学反応式です。
水の電気分解が有名で、中学校の理科ではこの化学反応式が、化学反応式の最も基本的なものとして題材とされています。
そして、原子は反応の前後で増えたり減ったりしないので、反応を表す→ の左辺と右辺とで原子の数は同じであることや
係数の付け方などを、順に学習していきます。
そしてたとえば、このように説明がされます。
Hを◎ Oを●とすると 水は H2O で ◎●◎ と表せるから
水 → 水素 + 酸素 は
◎●◎ → ◎◎ + ●● ということになりますが
これでは左右の原子の数が合わないので、水素の数を合わせるため
左辺に水分子を1つ増やします。
◎●◎ ◎●◎ → ◎◎ + ●●
しかしこれでは、また右辺の水素が不足するので
右辺の水素を増やします。
◎●◎ ◎●◎ → ◎◎ ◎◎ + ●●
そしてこれで左右の原子の数がそろったので
「めでたしめでたし」と言うことで
2H2O→2H2+O2 となるのだと教えられます。
一番重要なことがわからない。
しかしどうでしょうか。これだけですっきりわかったでしょうか。
おそらくほとんどの人が「?」となるのではないでしょうか。
その理由は、原子という最小の単位のことを説明しつつも
そのかたまりである分子についての、大切な情報が漏れているからです。
その疑問は、一番初めの ◎●◎ → ◎◎ + ●● の段階で、
数を合わせるのなら
なぜ ① ◎●◎● → ◎◎ + ●● としてはいけないのか?
あるいは ② ◎●◎ → ◎◎ + ● としてはいけないのか?
というものですが、
これに答えるためには、実際には2つの重要な情報が必要となります。
ここで知っておくべき知識は
①分子の種類ごと含まれる原子数はきちんと決まっていて勝手に変えてはいけない。
②気体の場合には、自然界での状態では二原子分子の形をなし、必ず1対になっているのが基本である。
というものです。
つまりこの例では、①の考え方により、左辺を ◎●◎● にしてしまうと、
それは水分子ではなく過酸化水素 H2O2 になってしまい、話自体が違う話になってしまうということがわかります。
また②の考え方より、右辺を ◎◎ + ● にすることは、
実際に自然界では 酸素原子O(●)が単独で存在することはなく、酸素の二原子分子O2(●● )として存在することから、許されないということもわかるのです。
ところが多くの生徒が、この①と②をほとんど意識していないところから推測するに
この重要な知識を学校でも問題集でも、強調して学ぶことが少ないのではないかと思います。
特に②については、化学反応式を勉強していく際のおそらく一番重要な知識であるのに
明示的に意味を知っている生徒は少なく
「化学反応式では酸素はO2で」というような覚え方をしている場合が多いように感じます。
だからたとえば塩素(Cl)や窒素(N)などの気体が登場した際にも、
これをCl2やN2にして化学反応式を作ることができないという、応用の効かない状態になってしまうのです。
覚えておく肝心の部分
このような部分は、学習をしていく際に
どのような分野の学習であっても登場してくる、いわゆるキモの部分(肝心な部分)だと言えます。
そして、この気体の二原子分子の法則(②)のように
明示的に書かれていなかったり、教えてもらえなかったりすることも少なくありません。
何か新しい事を学んでいったときに
どうもすっきりしない、しっくりこないという場合には
こういう「肝心な部分を落としてしまっているかも知れない」という疑いを持つようにしましょう。
実際にもこの②の部分については
実に多くの生徒がこれを知らず、この原則を教えたとたんに化学反応式を自由に書けるようになったという例がたくさんあります。
「先生、どうしてここは小さい2がつくのですか?」という質問も、過去に数限りなく受けています。
肝心な部分を、十分に伝えない側にも大きな問題があると思いますが
「すっきりしない」のには大体において大きな理由があるものです。
まず調べたり、聞いてみることが大切ですね。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。