漢字を使った方が良い時、使わない方が良い時
私たちは漢字を使う国に暮らしています。
大人になると漢字を知らないと、相手によってはちょっと恥ずかしい思いをすることもあるので、できるだけみんなが知っている漢字は覚えておくに越したことはありません。
でも何もみんなが漢検1級レベルの漢字を知っている必要などはありません。
漢字を使うのは文字によるコミュニケーションの場面なので、相手に伝わることが重要です。
ただビジネス文書ではやはり漢字を多用するほうがかしこまって見えるので、ある程度漢字をしっかり使った方がいいです。
たとえば「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」とか「平素よりご愛顧を賜りありがとうございます」と言った冒頭の挨拶文が
「貴社ますますごせいえいのこととおよろこびもうしあげます」であったり
「平素よりごあいこをたまわりありがとうございます」というようなひらがな主体の文では、なんとも締まりませんね。
ただ「平素よりご愛顧を賜りありがとうございます」なのか「平素よりご愛顧を賜り有難う御座います」なのかは検討の余地があります。
どちらも間違いではないですが、後者のように漢字ばかりになってしまうのも「さすがに堅すぎるかな?」という判断があってもいいかも知れません。
「ありがとうございます」なのか「有難う御座います」なのか「有難うございます」なのかによって文のイメージは結構変わりますから、相手によって変えるのもありと思います。
よく「『御座います』は使ってはいけない」というようなことも言われますが、単に相手に対して「へりくだり感」や「かしこまり過ぎ感」がありすぎて、人によっては、「慇懃無礼」と勘違いする人がいるかもしれないので、注意が必要というに過ぎないと思います。
そして、そんなことで怒るような人も逆にどうかなと思うので、あまり気にしすぎる必要はないでしょう。
「御座います」を使った手紙は実際にはよく見かけます。避けた方が良いとは思いますが、別にタブーにしなくてもいいんじゃないかとも思います。
受け取って感じることは「最大限の敬意を払ってくれている感じ」「でもちょっとわかりにくい」「よそ行きっぽいな」といったところでしょうか。
TPO
こういう問題は、結局TPOによる使い分け(状況による使い分け)が肝心だと思います。
ビジネス文なのか公的文書なのか、親しい人への手紙なのか、社内文書なのかなど色々な場面の違いがあります。それぞれにおいて文を書く相手(受け手)との距離と言うものがありますから、その距離感を考えて書いていくということになるかと思います。
でも実際には、そう言うとかえって難しくなるかもしれません。
どの書き方が最適なのか迷った時には、こんな判断方法がいいのではないでしょうか。
たとえば考えてほしいのは「此の度は御目出度う御座います」という賞賛の文を相手に送って本当に相手が喜ぶのかどうかという事です。
おそらくどんな状況においても、このような形式ばかりの表現で「ああ嬉しい」と感じることは稀でしょう。
「この度はおめでとうございます」と言うのが一番伝わる表現であることは確かです。
つまり、その文章を読む人が受け取ったときのことを想像して書けばいいだけの事です。
ビジネス文書が格式ばった表現になっているのは、
「それを読むA社の代表取締役会長が手紙文に対してどういう感性をもっているかどうか、それを取り次ぐ秘書の方はどう感じる方なのか、昔ながらの形式重視の表現を好まれるのか、あるいはざっくばらんなイメージの書き方に好感をもたれるのか・・・etc」
そういうことが何もわからないので、とりあえず形式重視で書いておくことがベターということからそうなっているだけです。
世の中のきまりごとは大体においてそういう所から始まっているのですが、いつの間にか形だけが走り出してしまって、「ここはこう書くべき」「この書き方は失礼」というようなマニュアルが次々に作られている気がします。
一番大切なことは、「読み手、受け手がどう感じるか」という事をもう一度思い出してほしいと思います。
それがきっとうまくいくコツです。