事実と感想の違い
私たちは毎日たくさんの情報に触れています。
しかしそこで伝えられるのは純然たる事実だけはなく、伝え手の主観が入っていることも少なくありません。
何かを伝える場合には大げさに言った方が相手はインパクトを受けるため、よりセンセーショナルに情報を伝えようとする場合には、一番簡単なのは事実を捻じ曲げて伝えれば良いのですが、さすがにそれは躊躇されるので、
次に考えることは、「自分の考えや感想を織り交ぜて伝える事で誇張をする」という方法がとられることが多いようです。
たとえば、「A氏は〇〇についてこのように述べました」という記事をニュースとして流す場合に、これについて「世論の反発が予測されます」という風に書けば、まだ事実と感想が割とはっきり分かれて受け手に伝わりますが、
「A氏は〇〇についてこのように述べましたが、△△が危惧されます。どのような感覚でA氏は述べているのでしょうか」と書けば、イメージはガラリと変わります。
しかし「危惧されます」という部分は完全に事実ではなく推論になっています。また疑問形の言葉を差し挟むことで明らかに批判的な情報伝達にすることができてしまいます。
もちろん報道機関はそのつもりでやっているのですが、はっきりと事実と感想を分けて提示しないと、聞いている人が自分の意見をしっかりと持っていない場合には、簡単に伝え手の考え=事実と思ってしまう事になるでしょう。
本来一番誠意ある情報伝達の方法は、「A氏は〇〇についてこのように述べました」「これについては意見の対立があるところです。▲▲と言う反論もあります」「私たちX新聞社はA氏の考えには反対です」と報道するべきだと思います。
そのような報道はわが国では見たことがありませんが、海外ではそういう報道スタイルを取るところもあるようです。
そんなわけで受け手側は事実の中に主観が隠されている事に気づかず、漠然とイメージだけでそれを受け取っている事が多いかも知れません。
仕事の報告をきちんとできるということとは
日常の仕事における業務報告においても、情報伝達の齟齬はよく見られます。
仕事での業務の報告というものは、毎日頻繁に行われていますが、部下から上司へ、そして更にその上司へと、伝言ゲームのように伝達がされます。
皆さんは伝言ゲームをやったことがあるかもしれませんが、
最初に伝えたことが、数人を経た段階で聞いて見ると全く異なった内容になってしまっている事も少なくありません。
途中で色々な要素が話に入ってしまって、趣旨自体が変わってしまうこともあるのです。
伝えることは簡単ではありません。
よくこんな報告がされます。
「A社のB部長の感触は良くありません」
「会話の途中に苦い顔をしていたので提示した条件に不満があるのだと思います」
「3500万円の価格は高すぎるのだと思います」
「C社に3000万円くらいの提示がされているのか、これではだめという顔だった気がします」
どうでしょうか。
あなたが上司ならどう判断しますか?
事実と主観を一緒にしない
この報告は
事実としては
A社のB部長と話をした。
条件については交渉中
3500万円の価格については承諾がない
自分の感想としては
交渉の際の部長の様子や表情から察すると、感触は良くないと感じた。
という内容のものです。
駄目な報告者はこののように、自分の感想を随所に織り込んで報告をするので
聞き手としては、どれが事実でどれが報告者の主観なのかがさっぱりわかりません。
最後のC社の話は、完全に報告者の空想に過ぎません。
こんな内容は、聞き手に聞かれてから私見として話すべきで、
報告の際に上げると、聞き手が事実を正しく判断できなくなってしまいます。
報告については、私も仕事上たくさん毎日受けますが
主観を伴ってされる報告ほど、判断を誤りかねないものはありません。
聞き手のことを考えて報告をすると、仕事では上司に喜ばれると思います。
ポイントは、事実の部分と主観の部分を切り離して報告する事です。
伝えることの難しさ
こういう事は何も仕事でなくても、色々な状況で起こります。
起こった出来事とそれに対する感情や考えを一緒に伝えてしまったために、相手に上手く情報を伝えられず、時には自分への誤解を生む場合もあります。
自分では正しい事を伝えたと思ったのに、相手には勘違いをされて「嘘」をついたと言われてしまって、ケンカになったりする場合には、
得てしてこういう情報伝達上の齟齬があったりします。
現代の日本では、ずいぶん前からメディアは報道機関と言うより言論機関になってしまっていますから、今更事実と主観を切り離してと言っても無駄でしょう。
これについては、今や私たちが注意してそれを受け取るしかないと思います。
しかし私たち自身が情報の伝え手になる場合にも、同じような轍を踏む危険は常にあります。
情報を的確に伝えるという事は実に難しく、そして誠意が必要になる作業なのです。
私たちは彼らとは違い、他人を扇動したりして恨まれるようになってはいけませんから、他の人との関係を良好に保つためにも、情報伝達の際にはこの点を注意することがとても大切だと思います。
今後も皆さんのお役にたつ情報をアップしていきます。