習慣の力
私たちは何かを企画してそれをやり遂げようとする場合に、他人と一緒に行う場合には、他人との関係において制動力が働くため、物事が進まないということはあまりありません。
グループ全員に著しくやる気がない場合でも、お互いの気持ちや様子を察するうちに、必ず誰かが動き出します。
しかし勉強や自分だけの仕事のように、自分一人に与えられているテーマで、しかも期限が直近に迫っているものでない場合には、どうしても先延ばしをしてしまう心理が働きます。
これは古今東西、大人も子どもも共通の事だと思います。
ただそういう気持ちを制限(自制)できる人がごく一部いて、そういう人は偉人などと呼ばれます。
前にも別の稿で書きましたが、有名な野口英雄は、周りの環境が激変してそれまでとも全く違う環境に自分がおかれたその日でも、集中して自分の学習に取り組めたそうです。
しかしそんな事は普通の人には無理です。無理であることは当たり前と言っても良いでしょう。
私たちは何も偉人になる必要はなく、習慣というものが持つ特性を人間の心理から考えてよく把握しておいて、自分の持つ弱点をカバーしていくことを考えた方が良いと思います。
頑張れないのには理由があり、無理に頑張れない自分を責めていても何も変わらないばかりか、自己肯定感をなくしてしまうこともあり得ます。
勉強時間=机の前に座っている時間 ではない
テスト前の期間だけでなく普段の学習においても、自宅で学習をどう進めさせたら良いのか悩まれる保護者の方も多いかと思います。
人間心理というのは不思議なものです。
子どもでも大人でも、得てして時間がたっぷりある時の方が時間を持て余してしまって、効率よく何かを成し遂げられないことがあります。
時間をうまく使えないときに、どこに問題があったかを振り返ってみると、
開始時の取り掛かりが上手くできていなかったという場合がほとんどです。
最初になかなか重要なことに入っていけないために、結局いつもの倍くらいの時間がかかってしまうというような状況が時間を上手く使えなかった時には起こっています。
なぜ、こんなことになってしまうのでしょうか。
これは十分な時間がある場合には意気込みもあるために、心理的に本題に入る前の助走段階を自分の中で設定してしまうため、かえって時間を上手く使うことができなくなっていると考えられます。
そして机の前に座っていても肝心の勉強には実質的に入っていないので、自分では勉強時間を3時間と記録しても、正味は30分くらいしかやれていないというようなことになってしまいます。
意気込むときほど取り掛かりが遅い
たとえばテスト前の対策期には、誰もが張り切って学習に取り組もうとします。
しかし実際に勉強をするときに、いざ机の前に座ったらいろいろ雑多なことを初めてしまい、肝心の対策学習をほとんどできないで終わってしまっているなんてことはありませんか。
実はこれはよく聞く話なんです。
勉強をし始めて、あるいは計画を立てていて、「ああ、あれもあった」と思って別の事を始めてしまったり、机の回りを整えているうちに部屋の掃除を始めてしまったりする現象です。
テストに関係のない本を読みだしてしまうというのもこれです。
たぶん学習をするという繊細な頭脳の動きに対応して、細かいことが気になり始めてしまってこんなことになってしまうのだと思いますが、まったくもって時間の無駄ですね。
前に生徒の中で、テスト週間が始まると1日目は掃除になり、2日目には小説を読んでしまって、勉強になるのは3日目からなんている強者もいました。
困ったことに意気込んでやろうとするときほど、こういうことは起こるようです。
あなたのお子さんだけではないのです。
「スッと学習に入る」習慣
テスト前でなくても、学習の初めになかなかとりかかれないという生徒は非常に多くいます。
ある生徒は、まずテキストやノートを出しペンケースを置いたと思ったら、しばらくなぜか黙想して、それからおもむろにぱらぱらとページをめくっていたと思ったら、また閉じてなんてことをやっています。
「いつになったら準備ができるのか」と注意して初めて準備を始めたりします。
おそらく家庭でも同様なんだろうと思います。
このような平素の学習での時間の無駄になる行動は、潜在意識の中にある勉強に対する心理的な抵抗もあって起こっているのではないかと思いますが、
スッと学習にすぐ入ってしまえないということで時間的に毎回大きな損をしていることは間違いありません。
スッと学習に入るのと比べて、毎回2~3分、長い生徒では5分くらい学習時間が無駄になる上に、こういうことを繰り返していると、ここぞというときにも集中力を発揮することができなくなってくる傾向もあります。
逆にやり方を変えて、もし取り掛かりの時間を短縮できれば、それだけで相当大きな変化を起こせるのは間違いありません。
「座ったら必ずすぐ1問解く」というルール
ではこのようなことをなくすには、どのようにすればよいのでしょうか。
意外に簡単です。
このような取り掛かりの遅さを改善するには、「ルール作り」をすればよいのです。
それは「まず座ったら必ずすぐ1問解く」というルールです。
決めたらどんなことがあってもそれをやります。
およそ勉強の開始時には儀式のようにこれを行います。そのときにあれこれ考えたりすることは一切してはいけません。まず問題を見るのです。
これを繰り返していると、いつの間にか勉強のスタートが良くなるばかりか、少しの隙間時間の勉強などもできるようになってきます。
自分自身でも、これまで勉強というものについて何か構えてやろうとしていたことにも気づくため、時間の使い方の面でもよい効果が得られることが多いと思います。
これは単純そうに見えて非常に効果のある方法です。
しっかり守れば、自分が「取り掛かるのが嫌だなあ」と思っている日にも、自動的に取り掛かれるようになります。
机に座ることもできない場合の秘策
また、それ以前に学習態勢にすら入れないという場合もあります。学習する場所、たとえば勉強机に腰掛けもしない場合です。
こういう状況では「まず1問」と言っても、それは無理でしょう。
そういう場合「やる気がない」と言ってしまえば簡単ですが、実は本人の日々の意識の中に学習するということが抜け落ちていることが多いので、
自動的に学習をする態勢を作ってしまうことが効果的です。
具体的には、学校がある場合には帰宅したらまず
①「家の中の学習をする場所に直行する」必ずどこにも寄らずに直行します。
②「教科書を開き、今日やったページを見る」これだけをしばらく毎日実行します。
ここで気をつけるのは、最初から「10問問題を解く」とかいうノルマを課してしまわないことです。
「教科書のページを見る」だけです。
でも実際にはこれを必須のことにしておくだけで、かえって勉強をしたくなるものです。
そして「帰宅してすぐ机に向かわないとすっきりしない」というようになればしめたものです。そこから突破口が開けます。
もし学校がお休みの場合には、たとえば午後3時になったら必ず机に座るというような決めごとをするとよいと思います。
要は行動を決めてしまうことです。行動を決めてしまって繰り返しているうちに習慣が自動的にできてきます。
習慣は毎日のことですので、頭で変えようとしても上手くいかない場合があります。
「意志が弱い」と言って嘆く前に、まず行動を決めてしまうというのが案外打開策になるものです。
これらのやり方は簡単なことである割に、実際にはかなり学習の効率を変えられる方法ですので是非お試しください。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。