【先生向け指導のコツ】生徒にとって「一番良い先生」とは?

 「良い先生」のイメージ

 抽象的な質問ですが

「『生徒にとって一番良い先生』ってどんな教師だと思いますか」

という質問を

新人面接に来た教師候補の方に聞くことがあります。

 感覚的な印象になりますが

多いのが

「わかりやすい説明ができる教師」

「生徒の目線で教えられる教師」

といった回答です。

 また

「生徒を変えられる教師」

「話が上手な教師」

「深い知識を持っている教師」

「生徒を未来にしっかり導く教師」

というような回答も見かけられます。

 でもそういう理想を述べた新人教師が

実際に生徒に相対した時

全力でいろいろな指導の工夫をして

一生懸命頑張れば

生徒がその教師を現実に

「良い先生」と思ってくれるかというと

事はそんなに簡単ではありません。

「優秀な教師=その生徒にとって最適な教師」とは限らない

 教師に必要な能力というと、

学力やわかりやすい説明をする力、コミュニケーション能力、リーダシップを発揮できること、巧みな話術など多岐にわたると思います。

 では、そういった能力をすべて兼ね備えた教師が、常に生徒にとってベストな教師でしょうか?

 実はそうではないのです。

 ずいぶん昔の話ですが、私の知っているある塾の先生でこんな経験をした教師がいます。

 彼は黒板授業が大変上手で、生徒は引き込まれて授業に夢中になるため人気がありました。

大変優秀な先生でした。

 彼の指導方針はかなり厳しく、やるべきことをしっかりやっている生徒を大いに褒めて励ますため成績が伸びる生徒も多かったそうです。

その塾では塾長にとても感謝され責任者をしていました。

 ところが、彼は事情があって別の塾へ移籍しました。

 そこで新たに担当した生徒たちは、かなり学校の学習についていけなくなっている生徒が多く

また態度もあまり良くない生徒たちでした。

 彼は、自分が生徒たちを変えてやろうと意気込みました。

今までと同様、いやそれ以上に厳しく指導を行いました。

もちろん授業内容もとても工夫して行ったようです。

 しかし彼の思惑とは違って、生徒たちは、自分たちがわからないのに先生がどんどん突っ走っているように感じたようです。

やがて生徒から反発が生じました。

 内容的にもついていけなくなってしまって、一人また一人と塾を辞める生徒が出始めました。

いろいろ手を考えたそうですが止めることはできなかったようです。

生徒は半数以上辞めたそうです。

 彼は「もっと相手を見てやり方を考えるべきだった」と言っていました。

指導には生徒という相手が存在する

 指導というのは、教えられる生徒がいて成立するものです。

相手が存在する双方向の行為です。

一方方向の行為ではありません。

「教える」→「理解する」→「間違う」→「修正をさせる」というような相互の関係の中で学習を進めていくものだと言えます。

 教えられる生徒の状況に合っていないことをしても、それは良い指導には決してなりません。

 よく生徒が「わからない」と言ったり、やる気なさげな言動をすると、

「やる気がないからできないのだ」と短絡的に決めてしまう教師がいますが、大きな間違いです。

 どんな生徒も「できるようになりたい」ということを100%思っています。

だから、「わからない」から「やる気が出せない」のであって、

「やる気がない」から「わからない」というのは逆なのです。

 私も態度の悪い生徒を教えた経験が多くありますが、

そういう生徒は「わかった」という体験が重なると、少なくとも勉強に対しては非常に真摯な態度に変わります。

 これは間違いありません。むしろいろいろな所で正面から丁寧に教えてもらっていない分

わかったときのうれしさも大きいのではないかと思います。

「生徒にとって一番良い先生」とは?

 さて、冒頭の質問の答えになります。

 私は、「生徒にとって一番良い先生」とは

「自分の学習状況に真剣に興味を持ってくれる先生」だと思います。

 どんなに優秀と言われている教師も、自分に合ったレベルとスピードで教えてくれなければ

それはテレビの中にいて何か言っている人と変わりがありません。

いや、わからない自分に無理難題を言ってくるだけ

もっと悪い存在かも知れません。

 自分にぴったり合った内容を指導してくれて、今わからないことを教えてくれる教師は、

話し方がたどたどしかったり、

ちょっとミスがあったりしても、

自分にとっては有難い存在であるはずです。

もちろんプロですので程度はありますが…。

生徒に寄り添う教師になるための方法

 では、そんな教師になるにはどうすればいいのでしょうか。

その方法が、質問の答えにあるように

「その生徒の学習状況に真剣に興味を持つ」

ということなのです。

生徒の状況を、とにかくいつでもよく見ることです。

「ここがわからないのか」

「ここはわかっているのか」

「こういうミスの癖があるのか」

「前の単元のここを落としているな」

「10分くらい経つと眠くなってくるのか」

「宿題は適当にやってくるな。これでは頭にはいってないな」

「テスト前は張り切るけど途中でペースダウンするな」

「いつも自分で書いておいて、6と0を自分で読み間違えてミスが出るな」

「部活は大変そうだな」

「今日はスピードがあるが、ミスが出そう」

「文章題で30秒以上止まっているな?そろそろヒントがいるかな」等々…。

 生徒の様子をしっかり見れば

自然に生徒の成績を上げるための方法も見えてきます。

その生徒には「何を今話してあげないといけないか」も浮かんできます。

 そうやって生徒の学習状況に関心を持っている教師は、

必ず何かその生徒の役に立つ指導ができるはずです。

 指導で肝心なのはテクニックだけではありません。

 指導は人間の行うことですから、

人と人の関係でもっとも重要なこと

つまり「相手のことを考える」ということが

やはり一番のスタートラインなのだと思います。

 今後も皆さんのお役に立つ内容をアップしていきます。

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