【わかる作文】自分では気づかない「主語のない文」

「主語はわかっている」

 気づいている方も多いと思いますが

日本語では、頻繁に主語を省略します。

特に会話では、一人称(私・私たち)二人称(あなた・あなたたち)の主語を言わない方が普通です。

次の会話文を見てください。

「やあ、おはよう」

「おはようございます」

「昨日のお客さんについて、何か聞いた?」

「いいえ、聞いていないです」

「ちょっと営業部へ行って確認してきます」

「よろしく」

「あとで、山本さんの所へ行くだろう。その時話を教えて」

主語は、ほとんど出てきません。

この文章に一人称・二人称の代名詞を入れて、主語や人称の目的語をはっきりさせるとするとこうなります。

「やあ、おはよう」

「おはようございます」

「昨日のお客さんについて、(君は)何か聞いた?」

「いいえ、(私は)聞いていないです」

「(私が)ちょっと営業部へ行って確認してきます」

「よろしく」

「(私たちは)あとで、山本さんの所へ行くだろう。その時(君が)(私に)話を教えて」

 こんな風に、相当省略(カッコ内が省略されていた部分)がされていたことがわかります。

 どうしてこんなことになるかと言うと

日本語の会話では

会話の流れで「主語がお互いにわかっている」以上

「わざわざ主語を言わない」という文化が、昔からあるからです。

 古文の問題で、大学入試などで高校生が頭を悩ませる分野の学習として

「書いてない主語」を考えさせる「動作の主体」の問題がありますが

最近では高校入試でも、そういう問題をよく見かけます。

「誰がこの行動をしたのか。選びなさい」というようなタイプの問題です。

自分で言うだけなら、誰が主体かは簡単にわかりますが、

逆に、これを第三者が探り当てるのは大変です。

だから総じて、難易度が高い問題になることが多いものと言えます。

 受験生を悩ませる、こういう古文の存在自体が

日本語では古来主語を明示しないのが普通であったことを、よく示していると言えるでしょう。

無意識に主語を省いてしまう

 作文でも、主語を無意識に省いてしまう生徒はかなりいます。

文章で主語が省かれてしまっていると

読んでいても、途中で話の筋がわからなくなります。

たとえば、こんな感じです。

「冬休みに入ってまもなく、A市のUSランドへ行きました。

私と妹とお父さんとお母さんといっしょに行きました。

まず、ジェットコースターに乗って、その後水中トンネルに行きました。

お父さんは見ていました。メリーゴーランドはお母さんと乗りました。

それからレストランの順番待ちをしましたが、妹は買い物に行きました。

お父さんといっしょにもどってくると、妹が待っていて「早く早く」と言いました」

どうですか?

途中からよくわからなくなりましたね。

最後の行で「あれっ」となったはずです。

 これは極端な例ですが

文章が割とうまい生徒でも主語を省いてしまったために、よく意味がわからない作文を書いてしまうということは結構あると思います。

本当の理由

 無意識に主語を省いてしまうのには、実は大きな理由があります。

それは、冒頭で書いたように、私たち日本人の文化として

「主語を省略する」という習慣がかなり根付いているということです。

だから作文を書く時もなんとなく

「読む人はわかるだろう」と思ってしまうのです。

こういう作文を書いた生徒に

自分で自分の書いた作文を読ませると

「よく分からない」と言ったりしますので

自分でも無意識に書いてしまっていることがわかります。

 日々の習慣がそれをさせてしまっていると言っても良いでしょう。

 だから、作文をする時には

日常会話から一旦気持ちを離して

一から文章を作り上げていくという心構えで

書いていくとよいでしょう。

 その際には

必ず「主語のある文を書く」ということに注意をすべきです。

 日本人の感覚だと、主語を一々書くと

何だかぎこちない文になりそうに感じがちですが

 主語がしっかり入っている文は、

読み返した時には、かえって

一読了解のものに感じられることに気が付くでしょう。

 今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。

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