分数は何を「分けた数」なのか
分数の計算が割と得意な生徒でも、「分数というものが一体どんな数なのか」を意外に理解していないことがあります。
それは5年生になって割合の考え方が登場してきて、割合と分数がミックスした問題などを解き始めるとさらにはっきりとしてきます。
たとえばこんな問題です。
1日目にある本の5分の3を読んだ。2日目には残りの5分の3にあたる30ページを読んだ。あと何ページ残っていますか。
少し複雑な問題なので、先にやり方を説明すると
1日目の残りは5分の2であり、その5分の3を2日目に読んだわけだから
2日目に読んだのは本全体に対して 2/5 × 3/5 = 6/25になります。
そしてこれが30ページにあたるので、本全体のページ数は 30 ÷ 6/25 =125ページです。
初日に読んだのは 125 × 3/5 = 75ぺージですから
2日目の30ページと合わせて105ページ読んだことになり、残りは20ページということになります。
ではこれを小学生に考えさせると、生徒はどんな計算をすると思いますか。
分数というものがよくわかっていない生徒は、決まってまず3/5と3/5を足そうとします。
「分母が同じなのでまず計算」と思うのでしょう。
そして答えが6/5になってしまうことがわかり
ようやく「あれっ」と立ち止まります。
こういう生徒は、分数が一体「何を基準として考えられている数」なのかをしっかり理解していないと言えます。
最初の5分の3は、「本全体」の5分の3ですが
二番目に出て来る5分の3は、「1日目の読み残しのページ数」の5分の3で
基準になるものが全く違います。
基準が違う分数である以上、これをお互いに計算しても何の意味もなさないのです。
分数は「1を分けたもの」
分数で基準になるのは、常に「1」です。
「1つのものをいくつかに分けた」ということを数値化したのが分数の考え方だからです。
だから、上記の例で言えば
最初の5分の3は、「本全体のページを1としたとき」の割合であり
二番目の5分の3は、「残りのページを1としたとき」の割合であって
基準とする「1」の数量が全く異なっています。
生徒がわかっていないのはこのことです。
分数の学習というと、とかく計算練習に終始する傾向があります。
ただひたすらに機械的に計算を繰り返して
正答率が高くなると、それだけで
「分数得意だよ」と言う生徒はたくさんいます。
もちろん計算力がつくのは良いことですが
その裏で、そもそも「分数というものがどういう数なのか」が分かっていないという場合が多いように感じます。
分数の考え方がわからないと、上記のような問題は極めて難しいものだと感じてしまいます。
この問題は複雑ではありますが、決して難易度の高い問題ではありません。
ところが考え方をしっかり学んでいないと、全く歯が立たなくなってしまうのです。
逆に「何を基準としているのか」ということがしっかり理解できていれば
実はさほど難しい事を聞いているのではないとわかります。
線分図を描いて考える場合も、「基準は何なのか」ということが分かっていれば、図を描くことが容易になりますが
わからないままであると、そもそも図を描く事自体ができません。
もう一度考え方を確認してはどうでしょうか
分数について言えば
「計算は出来るけど文章題が・・・」と言われる場合の大半が
分数の基準となるのが「1」であり、「その基準をどこに置くのか」を意識して問題を読むという、分数の問題の考え方が分かっていないことと絡んでいるように思います。
このことを正面から考えていかないと
割合と分数の学習や、少し複雑になった分数の問題には手も足も出なくなってしまいます。
だから、まず「分数とはどういう数なのか」ということをよく考えて
基本を確認することがとても重要だと思います。
たとえば
まんじゅう3個のうち1個というのを3分の1と呼ぶ場合
この3分の1は「まんじゅう3個」を「1」として考えた数です。
これが分数の一番最初にマスターしなくてはいけない考え方なのです。
基準が何かを意識せず、何となく考えている場合がとても多いと思いますが
問題を読むごと
「何がこの分数の基準なのかな」と考えるだけで
文章題の理解の度合いは飛躍的に上がるはずです。
ぜひお試しください。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。