言霊(ことだま)
古代から日本人は、言葉には特別な力が宿っている(言霊)と信じられてきました。
これは特別な宗教の話ではなく、日常会話にも意外に関連のあることです。
たとえば、「そんな不吉な話をするんじゃない」というような禁忌としての言動などは、この言霊信仰に関係があると思われます。
また逆に「プラスの言動によって運を拓く」というような考え方は、一般の人々にも広く普及しています。
人は、「言葉によって勇気や元気をもらい、言葉によって前向きになれる」
そんな生き物だと思います。
とりわけ日本語には、そういう力が隠されているようにも思います。
いろは歌や万葉仮名など古典の中にも、単なる言語というものを超えた精神性の反映を感じさせる部分があり
最近話題になっている「カタカムナ」なども、日本語の柔らかな感覚ととてもマッチしているように思われます。
*カタカムナについてはこのブログのテーマから少し外れますので、今回は詳しくは触れませんが、興味のある人は検索してみると面白いですよ。
四字熟語の世界
四字熟語と言うと、単に受験対策で暗記するものであったり
クイズに出る問題というイメージの人も多いと思いますが
実は大変奥の深い言葉のジャンルだと思います。
わずか四文字の漢字の組み合わせ(実際には実質二字熟語を2つ組み合わせたものが多いですが)によって
独特の世界観や教訓を見事に表現をするもので
漢字文化の成熟により現代まで受け継がれてきた、貴重な文化の果実のように思います。
広くこれを学習したり味わうことは、詩や短歌を味わうことなどと同様に意義があることです。
今回は言霊ということとも絡めて、人に力を湧かせる四字熟語を取り上げてみます。
「勇気凛々」(ゆうきりんりん)
「勇気凛々」は気力にあふれ失敗や危険を恐れず、内面の勢いがある状態の事を言います。
人にはいろいろな状況があり、置かれた立場も様々なため、「無条件に元気に満ちて周囲の難関に立ち向かっていける」というような姿勢には実際はなかなかなれません。
しかしこの熟語を読むと、正義の味方アンパンマンが元気溌剌(はつらつ)な状態で飛び出していくようなイメージを、人は心の中に描くことができます。
だからこそ「ああ、そんな勢いを心の中に持てたらいいな」と感じるのです。
だとすると、この「勇気凛々」という言葉には、
人を未来に向け元気にさせる言霊としての力があるのかも知れません。
「前途洋々」(ぜんとようよう)
「前途洋々」は、この先の未来までの道筋や将来への可能性が、希望で満ち溢れていることを言います。
「洋々」と言うのは、聞いたときに多くの人が「太平洋?」と言うような感じで大海をイメージすると思いますが
文字通り水が満ちて広がっているさまから来ている言葉で、「希望に満ちている」という意味です。
海上の船が、明るい陽光に照らされて希望で輝く海路へ進むような映像が浮かんできませんか?
そんな夢のある言葉です。
「明鏡止水」(めいきょうしすい)
「明鏡止水」は、一点の曇りもない澄み切った心の状態を指します。
「明鏡」が、曇りのない鏡という意味で
「止水」は、波が立っていない静かな水という意味になります。
人が社会生活を営んでいると、どうしても心に乱れが生じ
喜怒哀楽の感情に左右されてしまいがちですが
この熟語は、そういうものを乗り越えてしんと静まり返った動揺しない心の在り方を表現しています。
ここまで読んできた方は、すでにお気づきかと思いますが
四字熟語は、現実にそこにある現況を示すことよりも、
このように、実際にはまだ達成されていない、「目標となる人の心のありさま」をうたったものが多いという特徴があります。
「明鏡止水」は、言ってみれば
私たちのあるべき精神状態の理想と言っていいかも知れません。
逆にこういう静かなしんとした心が、人に力を湧かせてくれるのではないでしょうか。
「意気軒昂」(いきけんこう)
「意気軒昂」は、気力にあふれていて、心が奮い立っていることを表す言葉です。
「軒昂」は普段は見かけない言葉ですが
「軒」は家屋の軒「のき」のように高い場所を表し、また「昂」は「たか」い、あるいは「あ」がるという読みがあります。
合わせて「軒昂」で「高く上がる=心が奮い立つ」というような意味を構成しています。
イメージとしては
何か成功を収めた後で、次へのチャレンジへ向けて益々元気が出てくるような、そんな状況を描くことができます。
「成功が成功を導く」
そんな幸運に恵まれた感じの熟語ですね。
このような四字熟語は
別にその状態でなくても「ああ、そんな状況だったらどんなかな」という事を連想させてくれます。
学習で覚えていくことも大切ですが
その前向きな言霊としてのイメージを、頭の中に描くと
覚えていても楽しいし、実際に幸運がやってくるかも知れませんね。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。