苦手な人が多い1分野の計算問題
中学の理科1分野の中で、化学については知識問題の他に、計算問題が出てきます。
これについては数学が得意な生徒でも苦手意識をもつ生徒が多いのではないでしょうか。
多くの生徒は学習するたびに、わからないポイントがあるごと
「何か難しいことをやっている」
「高尚な理論を知らないときっと解けない」
というような誤解を募らせていきます。
そしてたいていの生徒は
「問題文が何を聞いているのか」がよくわからないという状態に陥ります。
無理もありません。計算問題の背景にはたいてい実験があるので実験の状況を事細かく書いていく都合上問題文が長くなるのは普通です。
高校の化学ではmol計算などが出てきて若干数学的になるため、短文の問題も多くなりますが、中学では問題を作る際にそういう概念を用いることができないので長くなってしまうのです。
そして生徒は、もっとわからないということになってしまいます。
まずグラフの意味を読み取れるようにする
化学の計算問題でオーソドックスな出題パターンとして、グラフを読み取りその数値を組み合わせて、化学反応の結果どのような量になるかを問うものが多くみられます。
まずこういう問題では、グラフをしっかり読み取ることが一番重要です。
縦軸と横軸に書いてあることが何かをしっかり把握して問題文を読めばできそうですが、
少し応用になり、二種類の物質が化合して中和するタイプの問題(V字型のグラフ)や、途中から完全に反応しきってしまうタイプの問題などでは、慣れないと何が書いてあるのか、どういう状況なのかがわかりません。
しかし、これは何回かやれば必ず意味がわかってきます。パターンも限られています。 したがって同じタイプの問題を何回かやって慣れるということで、突破できます。
その際の注意点はこれから述べていきますが、今回は頻出の「過不足のある化学反応」の問題を例にとって説明します。
まず比でできないか考えてみる
これは高校の化学でも同じですが、
化学の計算問題は、その多くが単純に量を比較することで解答を出せます。同じものは何かに目をつけて比を作れば、それだけでできてしまうことが実はほとんどです。
ここが大きなポイントです。
高校で化学の得意な生徒ほど、計算問題をやる前に先入観を持たずに問題文をよく読んで、比較する量はどれとどれかということを一生懸命に探しています。
比で出せてしまうことが多いからです。
これは高校の化学の基本バージョンとも言える中学の化学には、よりあてはまることです。
ただし、少しだけ知識が必要な点がある場合もあるので、そこは覚えます。
化学の計算は、中学レベルでは数学のように応用の幅が深くありませんので、このように比で容易にできてしまうことを知れば、早めに苦手意識も消えていくのではないでしょうか。
これはすべての化学の計算に当てはまると言っても過言ではないので
「まず比でできないか考えてみる」
このことをスタートラインで、いつも考えるようにしてください。
かなり重要なことです。
苦手な人が多い「一方に過不足がある場合の化合問題」も比でラクラク解ける
化合の計算問題で、「物質の一部だけ反応したが、まだ反応の途中である場合の計算(過不足のある化学反応の計算)」は、非常によく出題されるのに、とても多くの生徒が苦手にしています。
しかしこれから先の化学の学習では、こういう問題はむしろ主流になりますから、突破の仕方をぜひ覚えておきたいところです。
実際の問題の例を挙げて説明します。
問題 3.0gのマグネシウムを加熱したら、加熱後の質量が3.8gであった。このとき反応せず残っているマグネシウムの質量を求めなさい。
やり方はこのような手順になります。
①マグネシウムと化合した酸素(加熱すると酸素と化合して酸化マグネシウムになる)の質量を求めます。3.8-3.0=0.8で0.8gとわかります。増えたのは化合する相手の酸素に決まっているので、酸素の質量は引き算で出せます。
②この0.8gの酸素と実際に化合しているマグネシウムxgは、x:0.8=3:2より x=1.2gと比の計算で求められます。
③ここで3:2とはマグネシウムと酸素が過不足なく化合する場合の割合です。決まった割合で、できれば覚えておきたい数字です。
実際に反応したのが1.2gということですから、まだ残っているマグネシウムは、全体の3.0から反応した1.2を引いて、3.0-1.2=1.8で1.8gということになります。
以上から、答えは1.8gです。
さて、この問題を正答するために必要なことは3つあります。
①増えたのは酸素で、その化合相手のマグネシウムの質量を出すことが必要という、そもそもの解法を知っていること
②マグネシウムと酸素の化合の比が3:2だと知っていること(暗記していなくても普通は問題文のグラフなどでわかります)
③比の計算ができることです。
①と②は2、3回やって覚えておけば大丈夫です。
③については言うまでもありません。
複雑そうに見えるのはなぜ?
どうでしょうか。このように書きましたができそうですか?
実際は問題文を読むだけでは、多くの人が、
「これいったいどうやったらいいの?」と思うのではないかと思います。
その理由として、まず一つには
「問題文の言っている状況がわかっていない」ということがあります。
この問題であれば
「なんだか数字が複数あるけどよくわからない」というところではないでしょうか。
この場合、3.0gのマグネシウムは完全に反応したら、3:2で酸素と化合する以上、2.0gの酸素と化合して全体は5.0gになります。
3.8gしかないということは、実際にくっついた0.8gの酸素はマグネシウムの中の一部としか化合しておらず
実はこの問題の裏テーマは
マグネシウムの中に「化合できたものと、化合できないもの」があり、その区別をすることに気づくということなのです。
これは一度丁寧に図を描いて考えてみると、状況をマスターすることができますが、
ほとんどの生徒が、「先生が一生懸命図を描いている」くらいに思っていて、その状況把握に力をいれない傾向があります。
そのために何回出題されても、そのたびに「難しい」「問題がわからない」ということになるのですが、それは当たり前です。
この問題では一度も図を描かずに状況を理解することはかなり困難だからです。
なのに図を見もせずに数字を組み合わせて解いてみても、わかったということにはいつまでもなりません。
きっと次回はできなくなっています。
とにかく一度図を自分の頭を使って描いて、問題文の状況をしっかり知ることがとても重要です。
一度自分で描ければ、テストのときにもきっと描けるでしょう。そうすれば一気に正答率は上がります。
また一見複雑そうな問題ですが、上述したようにパターン化したやり方があります。
聞いてみれば、やり方もかなり簡単だとわかると思います。
そして化学の場合、簡単な知識+比の計算だけで解けるこのようなタイプの問題は実は非常に多いのです。
なのに「問題が難しい」と思い込んでいる理由の二つ目は
「パターンがあることを知らない」という点があると思います。
「その問題ごと一から考えていくのだろう」と思っているために、いつまでたっても手順が浮かんでこないのです。
やり方を単純に暗記すれば、おそらく方程式の利用の問題よりずっと簡単です。
だから、図を描くことを覚えたらパターンを暗記してください。
そうすれば、このタイプの問題は逆に得意になります。
そんなに難易度が高くないのに、上記のような理由から実際はほとんどの生徒ができないので、他と差をつけることができることは間違いないでしょう。
それを頭に入れておくだけで化学の計算問題への見方も大分変ってきて、他の問題も先入観なく解いていけるようになるのではないかと思います。
今後もお役に立つ学習のコツを書いていきます。