見えなくなる「左端のマイナス」
数学の計算では、意外に同じところでミスが出ます。
繰り返してしまうには、もちろん理由がありますが、なかなか意識的に軌道修正をすることができない人が多いのではないでしょうか。
今回は、特定の所でミスを繰り返す場合の、具体的なミス回避のコツを書いてみたいと思います。
中学数学の式の計算を例に説明します。
-X-5Y+4+9X-15Y の同類項をまとめなさい。
同類項というのは文字の部分が共通な項をいいます。
この場合、同類項同士の部分を計算して簡単にすると
-X+9X は 8X
-5Y-15Y は -20Y となります。
したがって
答えは 8X-20Y+4 となります。
これが正しいやり方になりますが、
生徒たちのミスの出方を見ると、
非常に面白い特徴があります。
この問題で具体的に言うと
10X-20Y+4 というミス解答が続出します。
これは同類項を-X+9X ではなく X+9X と取り違えて計算をして
8Xでなく10Xとしてしまっているミスですが、
一番左端のマイナスを見落として計算をしてしまっているのです。
見えない「左端のマイナス」と言うのはこのことです。
なぜ見落とすのか
これは、たまたま出るようなミスな気がしますが、
実はかなりの頻度で見かけるミスです。
-X-5Y+4+9X-15Y を
(-X)【-5Y】<+4>(+9X)【-15Y】というように
文字の前の符号(マイナス・プラス)をひとまとめにして考えていけば出ないミスですが、
漠然と「ええと、Xの項はこれとこれで」
「Yはこれとこれだから…」
というように目で追うだけで計算をすると
一番左端のマイナスを見落としてしまって起こるミスです。
ミスを防止する方法
頻繁に見かけるミスなので、
私は上記のように
(-X)【-5Y】<+4>(+9X)【-15Y】と言う形に
生徒に区分けをして見せます。
実際にはマルや三角や四角で囲んでわかり易くします。
そして同じ仲間同士計算をすればいいと説明していきます。
何となく目で追う場合には
どういう加減なのかわかりませんが、
「一番左にある文字の前のマイナス」を高い頻度で見落としてしまいます。
おそらく心理的に目がいかない盲点的なところなのでしょう。
その点を説明して、
区分けするようにしっかりアドバイスをします。
マルや三角や四角で囲んでわかり易くして計算をするのがミスを防ぐのに効くことを話します。
実際のところ、このやり方を忠実に守った生徒はほぼ同じミスをしなくなります。
また見えなくなる「左端のマイナス」
ところが生徒の半数くらいは、また左端のマイナスが見えなくなってしまいます。
どうしてでしょうか?
答えは簡単です。
相変わらず同じように目で追うだけで、マルや三角や四角で囲むこともしないまま間違いを繰り返しているのです。
やり方を聞き、そのやり方を使えばほぼ間違いがなくなることを知りながら、
「そのやり方を使わない」
それではミスは止まりませんね。
このように書くと「そんなことってあり?」と思われる方も多いでしょうが
本当によくあることなのです。
これは1つには、学校の授業ではそういう解答の正確さ重視の方法よりも、きちんと式を書くというオーソドックスな方法を重視するため、
真面目な生徒ほど、途中式のパーツをマルや三角などで囲むという大胆なやり方をすることができないという事もあります。
この点は少し歯がゆい気がします。
しかし、そうでなくても
「ああ、間違えた」「そうか、そういう事か」「なるほど」
と思っても
次に「そういえばやり方を変えるんだった」
そう意識して変えていけるのは、現実にはなかなか難しいということかもしれません。
端的に言えば、ミスを防止する方法は
「ミスをなくそうとしっかり決意して実行する」
これに尽きるということです。
今回ご紹介したのは確かにミス防止のテクニックと言うことができますが、そんなに高度なものではなく、
単に「わかりやすく書いて識別する」というだけのことです。
しかしそれをなかなか実行できないというところに、ミスが止まらない原因があります。
ミスを止めると言うのは
難解な技術を必要とすることではなく、
「当たり前の防止策を必ずきちんとやる」ということではないかと思います。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。