電子雲(でんしうん)
おそらく最近高校で物理や化学を学習している人以外は
電子雲と言ってもピンとくる方はあまりいないと思います。
専門の方は別として、以前の古典物理学を前提とした理科の本には載っていない言葉だからです。
電子はほとんどの方がご存じだと思います。「原子は原子核とその周りを回る電子によって構成されている」「原子核は陽子と中性子によって構成される」というのは昔から(私が小学生のころから)みんな習うことだったからです。
さて電子雲とは何でしょうか?
電子雲とはわかりやすく言うと、電子が存在する確率のある場所を雲のような形で示したものです。
もちろん実際に雲があるわけではありません。
電子はその雲のどこかにおいて見つかり得るけれども、その雲の外では見つかることがないというその領域を示したものと言って良いでしょう。
謎の概念
「いや、何を言っているかわからない」
普通の人ならばそういう感想を持ちますよね。当然です。
この電子雲を理解するためには、ハイゼンベルグの不確定性原理というのが参考になります。
ハイゼンベルグの不確定性原理は、要点を簡単に言えば、電子のような粒子の運動量と位置や軌跡を同時に観測することができないという原理です。
そのため電子の位置を特定のものとして示すことができないために、電子が原子核の周りをぐるぐる回っているような従来の原子のモデル(ラザフォードモデルと言います)はもはや正確ではないとされたのです。
その結果として電子雲という形で、電子がそこにある確率がある場所をぼやっと示すことになったのです。
このようなよくわからない概念をわざわざ使うようになった背景はどこにあるのでしょうか?
波動性と粒子性の二重性
以前も何回かご紹介の記事を上げていますが、有名な二重スリット実験と言うものがあります。
今回は詳細は割愛しますがこの実験で分かったことは、極小のミクロの世界では、光や電子のようなものは、波動性(波の性質)とともに粒子性(粒子の性質)を合わせ持っていて、観測した瞬間にその姿を変えるという事がわかっています。
*観測者の意識の問題かそれとも単に機械的な観測の問題かと言う議論がその後もされているようです。
SFのようですが誰がやっても同じ実験結果なのを見ると、おそらく客観的なデータとしては真実の結果なのでしょう。
だとすると、電子は波として存在すると同時に観測対象となった場合には突然粒子である電子として存在することになるので、
これを言葉にするとこうなります。
「電子は電子雲に波の状態のときは普遍的にどこでも存在しているが、観測された瞬間に1つの粒子として原子核を回るものとして現れる。その時には原子核を回っているのを観測できる」
なるほどこう考えると、電子雲というよくわからない概念でないとそれは説明が難しいということになるでしょう。
今や科学は日進月歩どころか秒進分歩くらいの勢いで進んでいます。
このように学生が学ぶテキストの内容もそれに合わせて変わっていくので
指導の現場でも日々学習しないとついていけない事態になってきています。
素晴らしい事であると同時に、今回の電子雲のように理解のためには量子力学の概念全体の理解まで必要となるものもあるので
そういう意味で情報をしっかり集めて対策を考えていくことが重要になってくると思います。
今後も新しい概念については取り上げていきたいと思っています。