記録タイマーの学習
中学3年生の理科の学習で「運動の表し方」という単元があります。
いわゆる物理の基本になりますが、その中で記録タイマーを使って物体の進む距離と時間をグラフにして速さを計算する学習があります。
「中3生なので速さの単純な計算くらいは楽々だろう」そう思われる方が多いと思いますが、残念ながらほとんどの生徒は速さの計算で大変苦しむことになります。
何しろ「距離」「時間」「速さ」がどれなのかを問題文から拾うことができない生徒が半数くらいいる感覚です。
小学校の時に速さの計算を学習しますが、単元として速さが真正面から聞かれるものはおそらくそれ以来であって、すっかり忘れているということもあるかも知れません。
あるいは小学校の時に十分にマスターしていないままかも知れません。
単純な単位がそろったものであればともかく、単位が異なっていて換算するようなものになると、ほぼ全滅に近い感覚です。
算数の力の低下
私の経験上、この速さの問題を単位換算含めてきちっと正解できる能力があれば、その生徒はおそらくいつでも学校で10位以内には入れる位とも思われる、そんな相対的なイメージです。
こういう基本計算能力の低下は年々大きくなっているように思います。
昔は速さについて単位が異なった換算問題も、割と結構多くの生徒が正解をしていたような気がします。
私見ですが、小学校の速さの単元の学習のスケジュール的なスピードが速過ぎるように思っています。多くの生徒がまだ公式もおぼつかない内に単位の換算を含むものに移っていたりして、生徒の能力を高く見積もりすぎている傾向があります。
もっと時間をかけてゆっくりマスターできるようにすべきですが、その分何か独特の思考力を試す問題の単元が増えてきていて時間がさけないような仕組みになっているようです。
それ自体は悪い事ではないと思いますが、算数の基本中の基本である「速さ」をおろそかにするのもどうかなと思ったりもします。
それら思考力の問題の単元で出てくることは、実は中学校高校では再び登場することがなかったりするからです。
これについては、小中高でのトータルな学習の積み上げという部分でもどうかなと前々から思っています。
考えれば簡単なのに・・・
しかしそういう事以外にも、これらの物理の「速さ」の計算ができない生徒には、また別の理由があったりします。
「何か苦手な内容をやっている」と感じるだけで自分の頭で思考しないために、逆に難しくなってしまっている場合をよく見かけるからです。
たとえば、「2.6cmを0.1秒で移動した台車の速さを求めなさい」という問題があったとします。
まず「速さ」の苦手な生徒は、どれが「距離」でどれが「時間」かがわかりません。
そこで「2.6cmが距離」「0.1秒が時間」と説明して、速さ=距離÷時間 という公式を思い出してもらいます。
それで「できるかな」と見ていると、一生懸命筆算をした結果「0.26㎝/秒」というような誤答を出したりします。
それも、単元が始まったばかりでよくわからない頃ならともかく、
単元の終わりくらいになって、ずいぶんたくさん問題を解いていてもそんな感じのやり方をしていたりします。
「答えを見て法則性に気づかないのかな?」と思ったりします。
何のことか想像しにくいと思いますので、このことを詳しく説明します。
0.1で割ることの意味に気づけるようになっている単元
実は0.1で割るという問題が、この単元では記録タイマーの仕組みの関係で実にたくさん登場します。だから0.1で割るという問題を、実際には大変たくさん解くのです。
そしてたとえばこんな感じに解答が並びます。
5.3÷0.1=53
7.2÷0.1=72
8.9÷0.1=89
もうお気づきでしょう。見てわかるように、0.1で割るという事は10倍するという事なのです。
たくさん問題を解いていれば、仕組みがわからなくともこの事には気づけると思いますが
そのことに気づく生徒はなかなかお目にかかれません。
つまり「あんまり注意しないで計算を筆算でやっている」ということになります。
逆に言うと「楽になる」ことをそんなに望んでないのかもしれませんね。
筆算なんかしなくても一瞬で答えが出せれば私はかなり楽だと思うのですが・・・
仕組み
ではどうしてこうなっているかを説明しますと
「0.1で割る」ということは分数で言えば「10分の1で割る」ということになります。
ご存じのように割り算は逆数をかけて計算をしますから
「10分の1で割る」ということは「1分の10をかける」ということになります。
つまり「10をかける」ことになりますから
「0.1で割る」ということは「10倍する」という意味なのです。
何かの計算の時には便利なのでぜひ使ってみてください。
今後もみなさんのお役に立つ情報をアップしていきます。