英語のことわざ
高校英語を学習すると、英語のことわざというものがたまに出てきます。
一番参考書などでもよく見かけるのは
「覆水盆に返らず」It is no use crying over spilt milk.
というものです。
私が、高校英語で最初に覚えたのもこのことわざですが、そもそも「覆水盆に返らず」という日本語のことわざ自体が、
生徒たちにとっては、そんなにポピュラーなものでなく意味が分からない人も多いような気がします。
「覆水(ふくすい)盆(ぼん)に返らず」は、「すでに起こってしまったことは元に戻せない」ということわざです。
こんな由来があります。
中国の周に呂尚という男がいました。
彼は貧乏なのに本ばかり読んでいるため、愛想をつかした妻に離縁されました。
その後呂尚は出世して有名な「太公望」として斉 の国で活躍するに至るのですが、離縁して去った妻がそれを知って復縁を求めてきました。
太公望となった呂尚は、彼女の目の前で盆の水をこぼして、「もしこの水を元に戻せたら求めに応じるよ」と言って断ったという話が、このことわざの典拠です。
妻も旧夫を信じ切れなかったのでしょうが、太公望もちょっと大人げないですね。
英語の方を直訳すると、「こぼれてしまったミルクを嘆いても無駄だ」という意味になります。
この英語のことわざの方は、もちろん中国でできたことわざではありません。
この英語構文は It's no use ~ing 「~しても無駄である」という構文の例として登場する、英語圏でできたことわざです。
ことわざの訳
実は高校で学習をした頃から、少し違和感を感じていましたが、
このようなことわざの和訳というのは、英語のことわざの意味に似た日本のことわざを大意に合わせて結びつけるという形で行われているようです。
だから「ことわざの英文訳=和文のことわざ 」ではないという点は注意が必要です。
でもだからこそ、知って「ああそうか」という納得感も生じるのかも知れません。
直訳では面白くないと言って良いでしょう。
「盆」って何?「覆水」って何?
意外に最近の子どもは「お盆」を知らなかったりします。「トレイ」という名称のものを使うことが多いからです。
だからまず「『盆』って何?」という疑問を生じる人もいるようです。
でも実際の所、この「盆」は、日本の「お盆」と違う鉢のような深めの容器らしくちょっと違うようです。
さらに謎なのが「覆水」ですね。
いきなり訳で「覆水」って言われても、意味がわからないという生徒は続出します。
「覆水」というのは「ひっくり返ってこぼれた水」という意味の言葉です。
ここがわかるとようやく、英文の「こぼれたミルク」と話がつながってくるのです。
この英語のことわざを高校で学習した際には、色々な授業で何回も登場したのを覚えています。重要度は高いことわざだからでしょう。
しかし、どの先生からも、このことわざが同義のものであるという簡単な説明はありましたが、「覆水盆に返らず」の方の説明がされることはありませんでした。
高校一年生にとって当然知っていることわざとも言えないので、
「この説明があったら、もっとすっきりしたのにな」と思ったりしたものです。
水とミルク
そして最後に疑問となるのが、「水とミルクじゃあだいぶ違う」という点です。
まあ大意が同じなのでいいのですが、
テストに出た時には、これが実はポイントになって、間違い易かったりするという事は言えるでしょうね。
さらに、ことわざの状況もだいぶ違いますね。
「覆水盆に返らず」は、その故事を見ればわかるように、ちょっとした仕返しをするための皮肉の言葉なので、「今更無理だよ」というニュアンスの言葉ですが、
It is no use crying over spilt milk.の方は、「後悔してはいけないよ」という前向きのニュアンスとも取れる英文のような気がします。
ちょっとそのあたりも違っている気もしますね。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。