【直喩・隠喩・諷喩・換喩・提喩】たとえが上手なあなたの言葉に、きっと相手は心を動かす。

比喩

 物事をそれと類似の事柄にたとえることを比喩(ひゆ)と言います。一般に比喩を使う事で物事はずっとわかりやすくなり受け手に伝わりやすくなります。

「僕はとても嬉しかった」と言う表現を、たとえば「僕は天にも昇る気分になった」と言えば、その嬉しさの度合いがダイレクトに伝わってきます。

受け手は彼が満面の笑顔で空に昇っていく姿を思い浮かべるかも知れません。

「ああそれほどにも嬉しかったんだな」と感じて、「とても」の言葉だけでは伝えきれない心の躍動を受け取る事ができるでしょう。

比喩の種類

比喩には色々な種類があります。

直喩・隠喩・諷喩が主なものですが、特定な技法的なものとして換喩・提喩があります。

またよく耳にすることがある擬人法はこれらとちょっと系統が違いますが、広い意味では隠喩あるいは諷喩の一種とも言えるでしょう。

 順に説明をします。

直喩(ちょくゆ)

 直喩は一番ポピュラーな比喩のスタイルです。「まるで~」や「ような」と言ったたとえ言葉を伴った表現です。

「あなたの笑顔はまるで太陽のようだ」という感じの表現になりますが、たとえてあることが明白になっているので、テスト問題では解答を見つけやすいです。

一般に比喩は、①例える事柄②例えられる事柄③例える行為の3つの要素から成り立ちますが、この直喩では①②③すべてが直接書かれています。

①太陽(例える事柄)②あなたの笑顔(例えられる事柄)③まるで・ようだ(例える行為)が書いてあるという形になっています。

 しかし文学的な深みや味わいを出せるという点では、隠喩の方が勝っているかもしれません。直喩は少し単純な感じは否めないでしょう。

隠喩(いんゆ)と諷喩(ふうゆ)

 隠喩は比喩であることを直接示さずに物事をたとえるものです。

上記の③の例える行為が言語化されていない点が特徴的です。「まるで」などの言葉は使いません。

「彼の働きは、このプロジェクトチームの頭脳となるものだった」というような場合の表現が隠喩ですが、①プロジェクトチームの頭脳(たとえ)②彼の働き(例える事柄)は書いてあっても例え言葉③はありません。

さらに例えられる事柄①さえも言語化しない場合もあり、それを諷喩と言います。

風刺や教訓を表す言葉などで見られることがありますが、

諷喩の例で「井の中の蛙大海を知らず」というようなことわざは、「狭い見識にとらわれてしまっていること」を例えていますが、

その例えられる事柄自体は言語化されていません。

しかし、そのことがかえって例えられる事柄を印象的に相手に伝える効果をもたらしていると言えるでしょう。

擬人法

擬人法は人でないものをあたかも人のように表す表現技法です。

「彼の知らせを待っている間、時計の針が踊った」というような表現です。

もちろん時計の針は踊りません。しかしこういう表現を取ることでワクワクしている感じを表すことができるのです。

他の比喩よりも自由度がかなり高く創造的な表現をできるため、擬人法は詩などで古くから多く用いられている技法です。

広い意味では例え言葉を使わずに裏からたとえているため、隠喩や諷喩の一種と考えることもできますが、

「その花の顔」というのが隠喩であるのに対して「その花が笑った」が擬人法になるという点でちょっと違っています。

前者はその花のパーツを別の言い方でたとえているだけで、人でないものを人のように扱っているのではないため、人でないものに人の動きなどを見立ててたとえる後者の擬人法とは少しニュアンスが違うと言えます。

換喩(かんゆ)と提喩(ていゆ)

 換喩と提喩は上記の大きな比喩の分類とは少し異なる視点からの比喩の種別です。

まず換喩は、概念が近いもの同士を語句の意味を広く拡張してたとえるものです。簡単に言うとお互いに共通の認識がある言葉を省略して表現する方法と言えます。

「君はスマホが得意ですね」とか「最近のマイブームはテレビドラマです」と言う表現の場合、厳密には「スマホが得意」ではなく「スマホの操作が得意」であり、「マイブームはテレビドラマ」ではなく「マイブームはテレビドラマの鑑賞」になるわけですが

そういう事をくどくどと言わなくても相手には普通伝わりますね。

これを表現技法で言うと換喩と言うわけです。

次に提喩は、全体や大きな類を表わす言葉(下位概念を含む広い上位概念の表現)で部分や特殊なものを表わすようなたとえ方です。

有名なものとしては平安時代に「花」と言えば、それは自動的に「桜の花」を指したと言われますが、これなどは提喩の例だと言えます。

具体的にわかりやすい例としては、「彼女は活字を見ると目を輝かす」の「活字」は何も「活字という文字のこと」ではなく、文章や文学全般を指しています。

あるいは「ちょっとお茶しない?」という時の「お茶」は緑茶と紅茶を指すのではなく、オレンジジュースだって良い訳です。つまり飲み物全般を飲むことをたとえていると言えます。

 このように見てきて気づかれる方も多いと思いますが、比喩は私たちが気づかないうちにかなりの頻度で使っているものだと言えます。

上手に使いこなせば、何せわかりやすさが圧倒的に増すのは間違いないので、あなたの言いたいことが相手により伝わりやすくなります。相手の気持ちも動かしやすくなるかもしれません。

表現のコツとして具体例を挙げるというのがありますが、比喩はそういう例を挙げることにかかわるきわめて重要で効果的なテクニックだと言えるでしょう。

ぜひご活用ください。

今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。

 

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