スコトーマとは
最近流行の言葉で「スコトーマ scotoma」というものがあります。
これは直訳すると「暗点」という、周りより暗くなっていて見えない点を指しますが
脳科学的には「心理的盲点」という意味で用いられています。簡単に言うと「気づかずに見落としてしまっている事柄」です。
私たちは常時周囲のすべての物事を注視しているわけではありません。
その時々で興味を持っているものや、自分にとって好ましいものをしっかり見ていたり探そうとしている反面、自分に興味のないものや心理的に避けたいものは目に入らない傾向があります。
スコトーマはそういう意味で見落とされて視界に入ってこなくなっている事柄を言います。
たとえば自分がテニスを始める前は、テニスコートでプレイヤーがテニスをやっているのを見かけても興味がなく、近くの公園の中にテニスコートがある事自体に気づいていなくて
テニスを初めたとたんにそのことに初めて気づき「あれ、こんなところにテニスコートがあったんだ」と言ったりすることがあります。
いつも見ている場所でも興味外のため、それはスコトーマになっていて隠されてしまっていたということですが
興味を持った途端にスコトーマが外されて見えるようになったということです。
成功のカギ
私たちが何かをするときにこういうスコトーマが多ければ多いほど
発想の柔軟性はなくなり幅広い思考は難しくなります。
つまり思考の壁ができるということです。
たとえば、テストの順位がいつも50番を切ることができない状況にある場合には
彼は50番くらいを取るための学習法やアウトプットの方法は熟知していても
10番以内になるための学習法やアウトプットについては、全く想定ができていない可能性があります。
それは「準備の精密さ」であったり「学習の丁寧さ」や「能率の良さ」であるかも知れませんし「当日の記憶喚起の正確さ」であったりするかも知れませんが、
その真の意味を吟味して想定していないために現状にとどまっている可能性が高いのです。
おそらく50番を取るための学習の際にも、「準備を怠りなく」「丁寧に」「能率よく」と言ったことや「当日が大切」と言うような言葉は聞いているはずであり、
何回となくお題目のように唱えたことがあるに違いありません。
でもそれは、実際に役に立つ立体的なイメージの物として彼が受け取っているものではないのです。
彼が目にしているのは今の現状内(コンフォートゾーン内)での注意すべき事項であって
一ランク上の精密な方法には興味がないから、同じように見えていても本当に役に立つ方法として見ることができないのです。
何かの達人が「どんなにすごい技を持っているか」と思っていたら
「すべて自分が見たことのある技ばかりだった」
「しかしどれも恐ろしく基本に忠実で正確だった」と言うような逸話を聞くことがありますが
一ランク上の名人というものは
基本を徹底的にしっかりやっているという事が多いように思います。
50位と10位以内の話も同じで
両者の実力は実際にはさほど違わない場合が結構あるのですが
50位前後の彼が基本事項を割とアバウトにやっているのに対して
10位以内の生徒はそれを本当にきちんと丁寧にやっているという事は十分にありうるのです。
この場合に彼は「基本を丁寧に」という言葉をただのお題目程度にとらえていて
その言葉の真の重要性については全く盲目になっていると言えます。
これがスコトーマなのです。
have to とwant to
これもよく色んな所で最近耳にすることが多くなってきましたが
have to (しなくてはいけない)ではなくwant to (したい)という姿勢や思考が目標達成には重要だと言われます。
つまり興味をもってやっている状態に義務感を持ってやっている状態は及ばないという事です。
学習においてはこれはとても顕著で、いわゆるやる気というのは義務として強制されている中でも生じますが、それは到底興味津々でやっている状態のモチベーションとは比べ物にならないという事が言えるでしょう。
なぜそんなことになるかと言えば
have to の中では思考は硬直して、どちらかと言えば最低限の安全策を考えて行ってしまいがちなのに対して
want toの中では「これはどうだろう」「こんなやり方は?」というように思考が柔軟に広がりを見せるため、考え方の壁が崩れスコトーマが外れやすいからだと思われます。
これは社会人の仕事を例にとってみるとわかりやすいかもしれません。
上司から細かい事まで口出しをされて、その反面催促や期日指定がひどい中で叱責されつつ仕事をしているAさんと
上司からプロジェクトの大きなコンセプトや夢を語られて、「お前に任せる。責任は俺がとる」と言われて資金も与えられて裁量のある状態で仕事をしているBさんでは
アイディアの出方が大きく違ってくることでしょう。そして「何か面白い方法はないか」とあれこれ日夜考えているBさんには「これは叱られないよな」と恐る恐る仕事をしているAさんには見えないものがたくさん見えてくるはずです。
have to の世界に住むAさんにはたくさんのスコトーマができてしまうのです。
こういうことを考えてみると
物事を成功するにはスコトーマを外して広い視野で物事を柔軟に考えるということが大切ですが、
それはwant to (したい)という思考の中で楽しみながら何かをすることでより可能になるということが言えると思います。
ぜひこのことをヒントにして成功をつかんでください。