非同期型コミュニケーション
最近非同期型コミュニケーションの台頭が著しくなっています。
非同期型コミュニケーションとは、ラインなどのチャットやメール、メッセンジャーのような、相手が即答する形(同期型)ではないコミュニケーションスタイルのことです。
おそらく大半の方がこれらの内1つ以上のツールを使っているのではないかと思いますが、まだ使い方を十分にわかっていないという方もいて、トラブルが起こることもしばしばかもしれません。
トラブルで一番多いと思われるのは、連絡を受けたことに対する「応答がない」ことによる行き違いです。
企業などからの連絡に対して自分がお客さんの立場にあるような場合には、もちろん通常返事は不要ですが、個人同士の場合には返事を打たないと、自分が思っている以上に誤解を生じてしまうことがあります。
たとえば「来週3月6日午後3時から〇〇を行いますのでよろしくお願いします」
こういうメッセージがLineやチャットワークなどのグループにおいて流れた場合に
「自分は分かった」からということで、返事を出さないという人がかなりいます。
「既読」が付くのでいいだろうと考えている人もいるかもしれませんが、「既読機能」があるアプリでも、通常はグループの場合には誰が読んでいるかはっきりしません。
「承知しました」とか「了解」の一言でもいいので返事を打てば、相手は「ああこの人は確認してくれた」という事がわかります。
人によっては「読んだら返事くらいしろよ」と怒る人もいるので、注意が必要だと思います。これは相手との円滑なやり取りとして一言返事を打つ方がいいでしょう。
ただ返事をしない人は、自分も送った際の相手の返事を期待していない事もあります。だからポイントは「他人に強制しない」という事です。まだ新しいコミュニケーションスタイルのため、実はまだ「きまり」はないのです。
非同期型コミュ二ケーションのメリット
このようなスタイルのコミュニケーションは、過去の同期型コミュニケーションと違って、「相手の時間を奪わない」という大きなメリットがあります。
電話や会議などのコミュニケーションでは、必ず相手が同時に対応をしていることが必要になるので、コミュニケーションをする双方が同時にそこに居て会話などをする必要があるのですが、
ラインやメールなどは、基本的にはいつ送っても良い一方、相手もいつ読んでいつ返事をしても良いという形です。
もちろん社会的な関係によるタイミングはありますが、そういう自由が非同期型コミュニケーションの大きなメリットだと言えるのです。
深夜のラインは平気?
ただこのコミュニケーションのスタイルはかなり新しいものなので、まだ多くの人が慣れていないものだと言えます。
たとえば「深夜に送ってよいかどうか」という問題はどうでしょうか?
これはラインでもメールでもかなり以前から色々な所で論争になっているテーマですが、考えてみるとなかなか難しいところがあります。
「サイレントモードにしていなかったら目が覚めて迷惑」という人もいれば
「それが嫌ならモードを自分で変えておけばいいのでは?」という人もいます。
さらに「モード云々でなくて相手が気にするかどうかでしょう」と反論する人もいれば
「読むことを何も強制していないのだから迷惑と考えるのはおかしい」と考える人もいます。
結局相手次第、その人との関係性次第、仕事かそうでないかなどにより異なるという結論になるしかないかと思いますが、
私の感覚では、電話ではないのでいつ送られてきても全然気にはなりません。
ネット上のアンケートではそう考える人は半数を超えるというものを見たことがあります。
しかし「こんな深夜に連絡してきて不謹慎だ」と考える人もいるはずです。
コミュニケーションツールである以上他人の所へいきなり入っていくという面は、電話ほどの強い侵入性はないとしても、少なからずあるからです。
だから一律に割り切って決めてしまうのは大変危険だと思います。
「自分は気にしないから相手も気にするべきではない」という発想は、人間関係では一番トラブルを発生させる原因となるでしょう。
もし心配なら、明日の朝に送った方が安全だと思います。
非同期型コミュニケーションのデメリット
このような新しいコミュニケーションですが、上記のような「まだ決まり事がないことによる問題」の他にも、実はデメリットがあります。
それは簡単に言えば「深い話ができない」「誤解を生みやすい」という事です。
というのは、やはり文字のみのコミュニケーションですので、相手の表情や話し方を見て対応するという事ができません。
そのため本当に相手の言いたいことや、相手の感情などについて総合的に判断を下すことが難しい面があるため、
事務的な連絡や簡易な相談事には適しているものの、突っ込んで「実際のところどう考えているのか」というような腹を割って話をするような局面では、誤解を生じてしまう恐れがあるからです。
たとえば以下のやり取りを読んで、Bはどんな感情でいると想像しますか?
A 今日のボランティア活動お疲れさまでした。Bさんにもいろいろ準備していただいてありがとうございます。
B お疲れさま。
A お仕事で早く帰られてしまったのが残念です。もっとお話しできたらよかったのですけど。
B 早く帰ったらいけなかったですか。
A いえいえそういう事ではないのですが、あれからみんなでお茶に行ったんですよ。
B 2時から仕事があったのは伝えたと思いますが。
A もちろん存じ上げています。大丈夫でしたよ。でももっと仲良くなれたらと思っただけです。
B なかなか時間が取れないのでご迷惑かと思います。
A・・・
いかがでしょうか?
これを読むとほとんどの人は、BはAの連絡に対して「自分を責めている。自分は仕事だと言っているのに何でそんなことを言われなくてはいけないのか。自分を仲間外れにしているから許せない。もう行かない」くらいの気持ちで怒って書いていると感じるかと思います。
ところが実際はそうでもないのです。文面をよくよく読んでみてください。
どうでしょう。実はBは一言もAに対して批判や攻撃する言葉は書いていません。
唯一の問題は「~だと思いますが」というような形式の書き方になっているので、それは批判を含む言動の際に多くの人が用いる表現、つまり「批判や強い反論に『読める』」という点です。
ところがそれは割と違うのです。
私はこういう非同期型コミュニケーションはそれがこの世に現れた頃からずっと仕事で使っています。
そしてBtoBの営業対応だけでなくお客様とのやり取りや社内の連絡方法などあらゆる場面でこういうものを使っていて、実際に多くの例に触れているためわかるのですが、
こういう表現を、「批判」としての表現ではなく「控え目」の表現として書く人がたくさんいるのです。
私もよく誤解をしてこういう文を書かれるたび「ああ、この人怒っている」と思ったものです。
しかしその後の直接話した際の応対の様子や、実際に「さっきはちょっと失礼だったね。申し訳ない」と言った際に相手が「何のことですか?」と聞き返したりすることが結構多く、それである時気づいたのです。
正式な文書ではない簡易な書き言葉では、自信がないときに「~と思いますが」とか「~はいけなかったですか」という表現を用いる人がかなりいるのです。
決して攻撃性のある表現などではなかったのです。
会話であれば、申し訳なさそうな顔をしたり、下手な口調で言ったりするのですぐわかることも、このように文字だけのコミュニケーションでは伝わりきらない部分が出てきます。
メラビアンの法則
皆さんは「人は言葉ではなくて相手の表情からほとんどの情報を得る」という話を聞いたことがあるかと思います、まさにその通りで、言葉の情報だけでは実は少なすぎるのです。
有名なメラビアンの法則(アメリカの心理学者アルバート・メラビアンの研究による法則)によれば人が情報を得ているのは主に視覚と聴覚によってであり、言語情報によるものはわずかに7%に過ぎないということです。
だからラインやメールでは会話以上に目に見えない部分を補うつもりで情報量を多めに送るのがトラブルをさけるコツだと言えます。
上記のBであれば
「早く帰ってしまってご迷惑をおかけしたかもしれません。いけなかったでしょうか。もしそうでしたらすみませんでした」
「2時から仕事があったのはお伝えしたと思いますが、私が抜けてまずいことが起こったりしたのでしょうか」
くらいの言い回しがあっても良かったのかも知れません。
非同期型コミュニケーションはまだ新しい文化です。
だから、今の内から賢い使い方を考えていくことが、皆さんが他の方からの評価を上げるコツになることは間違いがないと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
今後も皆さんのお役に立ち情報をアップしていきます。