夏休みの友
小学生にとって、夏休みの宿題は一つの大きなテーマです。
作文や自由研究や漢字ドリルなどの宿題も出されますが、多くの学校でメインとなるのは
「夏休みの友」、県によっては「夏休み」というタイトルの日誌、あるいは「夏の友」とネーミングされた色んな教科の内容がミックスされた宿題の冊子だと思います。
地域によっては、「夏休みの生活」というような名前や「サマースキル」などと言うカタカナタイトルになっているものもあります。
もっとも、 以前は全国ほどんどの学校でこのような課題冊子が使用されていましたが、最近では使っていない所も多くなってきているようです。
あるいは、参入する業者も様々な形になってきていて、「これ塾教材?」と思えるようなものも見かけるようになりました。結構以前よりもバラエティーに富んでいます。
しかし、どの本でも共通するのは、算数国語だけでなく理科や社会科についての内容も入っていることとです。夏休みだから幅広くということなのでしょう。
冊子によっては、更に生活に関わる科目(家庭科など)や音楽(笛の拭き方とか)などまでも含めた幅広い内容になっています。
内容の編成は、単純な計算や漢字などの学習のようなものに留まらず、考えたり実際にやってみたりすることも含んでいて、さすがによく練られているものだと感じさせます。
調べてみたところ、どうも戦前からずっとこのような日誌形式の夏休みの宿題の本と言うのは、小学校で使用されてきたようです。
長い歴史のあるものだと言えます。
実地に調べないとできないこともある
しかし実はこの夏休みの友、あるいは夏休みの日誌というもの
なかなか手ごわいという事は、皆さんよくご存じかも知れません。
それは、単に普通に学校で学習する内容というよりも、 オリジナリティのある幅広い出題がされているからです。
たとえば、こんな風な内容のものがあったりします(*実際に掲載されたものではありません)
「竹でつくってみよう。みずでっぽう」
「調べてみよう。昔のごはんづくり」
ただ読み物になっているだけならいいのですが
「自分の町の方言をしらべてみよう」
「じっさいに身のまわりの人にどんな方言があるか聞いてみよう。それを書きなさい」
なんて出題があると、本当に調べて書かなくてはいけません。
しかも、ネット検索しても本当に自分の暮らしている地元の方言なんていうのは、大阪や東北などポピュラーな方言がある地域でなければ、なかなか簡単には出てこないかもしれないので
実地に調べないと、解答のページが埋まらなかったりします。当然誰もがそういう所は後回しにしてしまったりします。
よく生徒から夏休みの終わりごろに、そういうページの相談を受けることがあります。
塾に来ていると、そんな質問もできたりしますが、そうでない場合には、親子で頭を悩ませてしまうかもしれません。
ただ、そういう風に「考える実地学習をさせる」という意味で考えれば、出題者の狙い通りで、その意味では良い本だと思います。
夏休みの敵になる理由
もう一つこの夏休みの友というもの、意外に学校で習っていないが、教養的には学習対象になるという感じの問題が出されていることがあり、それが生徒を大いに悩ませます。
一貫して生徒から相談を受けるもので特に多いのが、漢字の熟語の問題で、
「クロスワードパズル式になっていて真ん中に入る漢字を考える」という問題では、例年ほぼ決まって生徒が相談をしてきます。
国語の教師でもすぐに埋まらないような場合があります。
というのは、その学年で習う熟語のレベルを超えた思いもよらぬ熟語が入っていたりするからです。
おそらく、巷で言われる「夏休みの友」でなくて「夏休みの敵」という笑い話は、このあたりの難易度の高さから来ているのではないかと思います。
でもむしろ、このあたりの問題は、「楽しんで考える」ということを狙って作成しているような気がします。
できなくて当然というレベルの問題だからです。
しかし実際は真面目な生徒ほど、こういう問題が分からないと「自分は勉強ができないかもしれない。宿題なのに」という風に落ち込んでしまうかもしれないので、注意が必要です。
私は難易度を見て難しい場合は、「これは今わからなくて普通だよ」と言う風に説明したります。
ただ、中学受験などを目指している生徒にはちょうどいいチャレンジ問題かもしれません。
もちろん上記に書いたのは、私が対応をした夏休みの友や夏休みの日誌の中の話です。
全県の課題冊子を見ているわけではありませんので、あくまで一例として受け取ってください。
そして、保護者も生徒も「夏休みの敵」的な感覚を持ってしまうのは、この課題冊子の性質と言うものを、普段の学習教材と同列に受け取っているからだと思います。
実際、かなり普段の学習教材とは色合いが異なる教材ですので、その点は注意した方がいいです。
おそらく学校の先生も
①学習習慣を夏休みも維持してほしい
②きちんとやってあればOK
③内容の正答率などは問わない。
というような感覚で実施していると思います。
夏休み最終日、一生懸命夜中まで泣きながらやって行ったら、答えが配られて(出校日に配られる場合が多いかもしれません)「見ました」のハンコ1つだったということもよくあります。
私も小学生の頃は結構そういう事がありました。
対 策
この宿題への対策は1つです。色んな方が書いていることですが
「とにかく早く終わらせる」これに尽きます。
学校の先生はもちろん、「毎日やることが大切」と言うでしょうが
そんなことは気にする必要もありません。
「学校の宿題が残っている」という意識をずっと夏休み中抱えているというのもどうかと思います。
なぜなら今は塾や家庭教師があり、夏期講座などもあるので、学校の宿題がないと勉強を夏休みの間しないという状態には、ほとんどなることがないからです。
仮に、もしすべてやることがなくなっても、小学校の時くらい、楽しく夏休みを過ごしても私は全然問題ないと思います。
海に行き、山に行き、都会に行き楽しんだり、WEB検索をして新しい世界を見たりして
学校や塾の課題以外にも、自分を成長させてくれることは、夏休みにはたくさんあるのですから・・・。
むしろAIが台頭するこれからの時代は、そういう経験の方が役に立つ時代に代わってくるはずです。
上手なやり方
やり方としては、やはり、
①自分でできる所を早めにやり
②特殊な問題については、親だけでなく塾や家庭教師に早く質問をして片づける
という手順が良いでしょう。
いわゆる普通の学習問題と異なり、WEB上に解答や解説があまり流れていないのが、このタイプの宿題の大変なところですので、
どうしても、直接人に聞くということも必要になる部分があるかもしれません。
そして日誌形式の場合には、日付とともにその日の天気を書くところがあると思いますので
天気については注意が必要ですが、
幸い今はいい時代で、「何月何日の天気がどうだったか」なんていうことは、ネットで検索すればすぐわかります。
そういうものがなかったころは、夏休みの後半に「先生、7月21日から8月10日の天気覚えている?」なんていう質問が実際によくあったものです。
そう言う場合は、友達に写させてもらって提出をするというのが当時の手でしたが
あるとき、生徒がそれを友達に頼んだら「僕が毎日つけたのを何で教えなくちゃいけない」と拒まれて、けんかになってしまったという話がありました。
結局教えてもらって出したようですが、そんな話も今は懐かしい思い出話になりました。
友達としても、当然の主張であったようにも思いますが、結局仲直りしたと言っていました。
でも今は、当時とは違って色々便利なものがあるのですから、使える便利なものは当然使っていいと思います。
必要なことは、自分の力を伸ばすことや、好奇心にあふれた学習意欲のある状態を維持していくことであり、日々の記録をする記録官になることなどではないのですから、気にすることもないでしょう。
学校の先生は「毎日きちんと記録をすることが規則正しい生活につながる」と言うようなことを言うと思います。
それは確かに一理ありますので、そういうことにチャレンジするのは、もちろん悪くはないと思います。
でもそれだけじゃないですね。夏休みですから、楽しむことも大切です。
特に子どもの夏は、人生で一番楽しい時期と言っても過言ではないのだから、勉強以外の事もやらないといけません。
夏休みに空も見ないで勉強して、中学高校大学と学校塾予備校を往復して、東京大学に合格して、エリート官僚になっても、その先に何をするのかというコンセプトがなければ、まわりはもちろん当の本人にも幸福をもたらしません。
「世界を幸せにする」とか「人々のために何かを発見したり生み出す」というような大きな抱負や夢を子どもたちに持ってもらうには、子どもの時代の夏休みなんてものは実は最も良い機会なのです。
だから保護者の方は、そのバランスを間違えないようにしてほしいと思っています。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。