代名詞の学習の問題点
中学1年の英語で代名詞の学習をします。人称代名詞と言われるものです。
この代名詞というものほど、生徒が勉強するポイントを間違えているものも少ないような気がします。
代名詞が分からないことについては、実は国語の代名詞についての理解の浅さが影響を及ぼしている部分が大きいと思います。
たとえば中学の国語で、
ジェーンが山へ行った。この文について「ジェーン」を代名詞に変えて書きなさい。
という問題が仮に出たとして、英語の代名詞を習う前に、これにきちんと答えられる生徒はそんなには多くないと思います。
ただこれには大きな理由があります。
「彼女」という言葉自体を小学校の国語の学習ではそんなに使わないからです。
また、日常で「彼女」なんて言葉を使う小中学生はほぼいませんね。
ところが、中1の国語ではなく中1の英語でいきなり、「『ジェーン』のような三人称単数の女性の場合で主格の場合は代名詞 she を使う」なんてことを言われてわかるはずはありません。
カリキュラム的に若干無理があるのです。
国語の代名詞が分かっていない
英語を習い始めて初めて「彼女は」「彼は」「彼女らは」「彼らは」という日本語の存在や意味を知るような生徒だって珍しくありません。
もちろん小学校でも「彼女は」「彼は」という言葉は習います。国語が得意な生徒は、作文にこの言葉を用いて書いたりもします。
でも私の経験するところでは、そんな生徒はごくわずかです。
もし疑うようでしたら、誰か小学生に
「友達のお母さんがそう言っていました」ということを先生に言いたいとき、「友達のお母さん」に代わる別の言葉(代名詞)で伝えるなら何て言う?
って聞いてみてください。
たぶん首をかしげた後で「おばさんがそう言っていました」とか「山田さんがそう言っていました」とか、方向違いの答えが返ってきたりするのではないでしょうか。
「彼女がそう言っていました」という形で、正しい代名詞を使える小学生はそんなにはいません。もちろんこの場合「おばさん」も代名詞的に使われていますが、学校国語文法的な正解とは言えませんね。
だから中1の英語で突然こういう言葉を自由自在に操れというのは、なかなか無理な注文ではあると思います。
代名詞の問題でほとんどの生徒が最初にできない問題
代名詞の問題が苦手になっている生徒は、国語の代名詞がよくわかっていないのに、英語でそれを考えるので混乱してしまっていることが多いと思います。
Tom is my brother . And Mike is my brother. ( ) are my brothers.
( )に適切な代名詞を入れなさい。 *答えは They
この問題は代名詞の問題としてはそんなに難しいものではありません。
ただ、初見で解いた場合の正答率は驚くほど低いです。
それは、国語的にトムとマイクを二人合わせて呼ぶ場合の呼び方が「彼ら」と言うことがピンとこないからではないかと思ったりもします。
大人の方の中にも、中学で「アイ、マイ、ミー、マイン」を習ったとき、「彼女は」「彼は」「彼女らは」「彼らは」が出てきて、「へえ~、そう言うんだ」と初めて知ったという方は案外多いのではないでしょうか。
実際のところ、多くの生徒は国語でマスターするはずの代名詞を、国語ではなく中1の英語の代名詞の学習で覚えているように感じます。
本当は中1国語の前半までに代名詞をもっときちんと教えるべきだと思うのですが、このことはずっと変わっていないようです。
どうしたら代名詞を得意にできるか
では逆にどうしたら代名詞を得意にできるのかというと、まず国語的に代名詞をしっかり確認し直すと言うことに尽きます。
方法は意外に簡単です。英語でなく日本語で、代名詞を言えるか確認していくだけです。
田中さん → 彼
洋子さん → 彼女
私とあなた → 私たち
杉山君とあなた → あなたたち
トムとジェリー → 彼ら
大谷さんの車 → それ
こんな感じです。
そしてそれが分かって来てから英語の代名詞に向かうのです。
実際にはこれらをすべて正しく答えられる生徒は中3生でもほとんどいないのです。
なぜならば、この変換を丁寧に教えられていないからです。
代名詞の学習では、前回も書いたように「アイ、マイ、ミー、マイン」の暗記が幅を利かせていますが、それを完璧に暗記したとしても、今回書いたようなことが分かっていないと問題は全然解けません。
代名詞の学習で暗記学習に向かっていって生徒がポイントを外して苦戦するのは、こういう理由があるからなのです。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。