常用漢字
私たちは日常生活で漢字を使っていますが、一般の社会生活で使う漢字は「常用漢字」というものを基準にするようにされています。
内閣の告示の「常用漢字表」と言うものがあり、「 法令 、公用文書、 新聞 、 雑誌 、 放送 など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」 とされています。
順に改訂されているようですが、現在(2022年)の最新の常用漢字表は2010年11月告示の物のようです。
私個人としては、漢字の使い方にまで国が口を出すのはどうなのかという気分がありますが、もちろん常用外の漢字も禁止と言うわけではなく、公の文書でやたら皆が読めないような難解な漢字を使われても困るので、こういう基準が定められているようです。
ただ学習指導要領では、義務教育の国語で習うのは常用漢字のみと規定していますので、小中学校で常用外漢字を習うことはありません。学校の場合はやはり全国一律の基準がないとやりにくいのでしょう。
当用漢字
常用漢字は大正時代から指定がされてきたもので、割と歴史があるものですが、第二次大戦敗戦時の1946年に出された常用漢字案については採択がされず、「当用漢字」と言うものが採用されました。
敗戦時、連合国軍総司令部(GHQ)は占領政策として国語国字改革を行いました。
当初は漢字を廃止してしまおうという意見やローマ字を国字にしていこうというような極端な意見が出されたりしたようですが、そこまではいかず漢字使用に制限をかけて表記を単純化しようとする政策が採用されました。
この国語改革はその後のわが国の国語に非常に大きな影響を与えました。そしてこの際に国語国字改革の一環として告示されたのが「当用漢字」です。またこの時「現代かなづかい」も制定されました。
「当用」というのは「さしあたって」と言う意味で、おそらく大きく国語改革をするもののすぐに何もかも変えられないので、「当面これは変えるよ」という趣旨で出されたのではないかなと想像をしています。
さまざまな漢字のうち当時使用頻度の高かったものを中心に「常用漢字」のように公文書などで用いるべき漢字として告示されました。その後学校やメディアによって積極的に普及されて、この時の改革で大きく日本人の使う漢字を変えてしまったようです。
複雑かつ不統一だった従来の字体の一部に変えて簡易字体を正式な字体として採用したと言われていますが、最近ではこのGHQの国語国字改革で我が国の文化が大きく改変されてしまったのではないかという考え方も主張されています。
「当用漢字」についてはごく最近まで基準として使われていましたが、昭和48年の改定などでは、当て字や熟字訓のうち日常生活で高頻度に使用される106語を「付表」としてまとめたりして、それまでの制限的な色合いを大幅に緩和するなど、見直しがされています。
ただ現在は「常用漢字表」に一本化されて、廃止されています。
読みやすく簡易なら良いのか?
漢字の事を考えるときに、読みやすさとか使い易さを考えるということも確かに大切ですが、漢字がわが国の文化そのものであることを考えると、どんどん当て字や略字にしていくというもどうかと思います。
有名な話ですが、「気」という漢字は戦前は「氣」と書きました。中に入る漢字が「〆(しめる)」ではなく「米」だったのです。
「気」という漢字は「気持ち」「気合い」と言うように精神状態を表す漢字です。「その漢字の中に入る字を「米」から「〆(しめる」に変えてしまったのは、GHQが日本人の精神性を恐れてそうしたのだ」という説がまことしやかに囁かれています。
いわゆる陰謀論的な話として一笑に付す人もいますが、日本人には「言霊(ことだま)信仰というものが古くから普及していて、漢字一つの表記にもこだわりがある民族だといってもよいでしょう。
たとえば「そんな不吉な事を言うな」という事を日常でもよく言いますが、口に出して不吉な事を言えば本当になると皆漠然と信じているから、そういう言葉が広く言われているのです。
そう思うとあながち「日本人の精神性を封じ込めるため」漢字を奪ったという説も全く根拠のないものでもないかも知れませんね。
実際最近はネット界隈での話を聞くと「私は『氣』を使って『気』の文字は書かない」という人も結構いるようですよ。
確かに「米」は日本人の主食でもありエネルギーの源という感じもしますから、「元気」よりも「元氣」の方がより勢いが出そうなイメージではありますね。
今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。