【化学のいろは】意外に知らない人が多い「気体の二原子分子」のお話

学習のやり方に二つの方法があります

 およそ私たちが何かを学ぼうとするとき、大きく二つのやり方があるように思います。

 まず一つは「物事の仕組みを考える」という事をベースにした学習法です。

「なるほどそうなっているのか」「なぜここはこんな決まりになっているのだろう?」

そういう思考を重ねていく学習のやり方です。

 これに対してもう一つの方法は「物事を覚える(暗記する)」という事をベースにした学習法です。

もちろん暗記だけですべてを記憶しておけるのは機械だけですから、暗記と言ってもその中には思考が当然入ってくるわけであり、

他方思考中心と言っても、本当に基本中の基本の物事については仕組みを知った後、記憶をしていく(暗記)作業は入ってくるので、

どちらか一方だけという話ではありません。私たちはこの双方を組み合わせて学習をしているのが実際だと思います。

 しかし現在の日本の学校教育がどちらによっているかと言えば、断然「暗記型」の方向性を持っている学習だと言えます。

学習の基本になる読み書きはもちろん暗記に頼る部分があるとしても、ある程度高度の内容になってきた場合にも、理由をしっかり思考するという事を飛ばして「とにかくペーパーテストで正解を書ければ勝ち」というような方向性がむしろ奨励されているところがあります。

 これは学校教育だけではなく、メディアに登場する人物など見ていても、私たちの心理の中では、深い思考力を持つ人(誰をそう見るかはまた一つの問題ですが)よりも、とにかく「物知り」の人をたたえるような傾向があります。

 学校での具体的な単元の学習でも、大枠や公式は示されているものの、「どうしてそうなっているのか」「その根本の仕組みはどのようなものか」の理解を求めないで通過してしまう場合がよくあります。

そして後になって、「そう言えばこれってどうしてこうなっているのか?」と疑問が出てくることがあり、人によってはそれを知らなかったためにずいぶんそれまで間違いをしてしまっていたというようなことも見かけたりします。

 学習の方向性を考える際には、「よし!これを覚えよう」ではなく「どうしてそうなっているのか?」を突き詰めて考えて、できるだけ暗記しないで済む方法を常に考えることが大切なのだと思います。

化学反応式の仕組み

2H2O→2H2+O

 これは、水( H2O )を水素( H2 )と酸素( O )に分解した場合の化学反応式です。

水の電気分解が有名で、中学校の理科ではこの化学反応式が、化学反応式の最も基本的なものとして題材とされています。

 そして、原子は反応の前後で増えたり減ったりしないので、反応を表す→ の左辺と右辺とで原子の数は同じであることや

係数の付け方などを、順に学習していきます。

そしてたとえば、このように説明がされます。

Hを◎ Oを●とすると 水は H2O で ◎●◎ と表せるから

  水  →  水素   +  酸素 は

 ◎●◎  →  ◎◎  +   ●●  ということになりますが

これでは左右の原子の数が合わないので、水素の数を合わせるため

左辺に水分子を1つ増やします。

◎●◎  ◎●◎   →  ◎◎  +   ●● 

しかしこれでは、また右辺の水素が不足するので

右辺の水素を増やします。

◎●◎  ◎●◎   →  ◎◎  ◎◎  +   ●● 

そしてこれで左右の原子の数がそろったので

「めでたしめでたし」と言うことで

2H2O→2H2+O となるのだと教えられます。

一番重要なことがわからない。

 しかしどうでしょうか。これだけですっきりわかったでしょうか。

おそらくほとんどの人が「?」となるのではないでしょうか。

その理由は、原子という最小の単位のことを説明しつつも

そのかたまりである分子についての、大切な情報が漏れているからです。

 その疑問は、一番初めの  ◎●◎  →  ◎◎  +   ●●  の段階で、

数を合わせるのなら

なぜ  ① ◎●◎●  →  ◎◎  +   ●●  としてはいけないのか?

あるいは ②  ◎●◎  →  ◎◎   +   ● としてはいけないのか? 

というものですが、

これに答えるためには、実際には2つの重要な情報が必要となります。 

 ここで知っておくべき知識というより、自然界の掟と言うべき事柄は、

①分子の種類ごと含まれる原子数はきちんと決まっていて勝手に変えてはいけない。

②気体の場合には、自然界での状態では二原子分子の形をなし、必ず1対になっているのが基本である。

というものです。

 つまりこの例では、①の考え方により、左辺を ◎●◎●  にしてしまうと、

それは水分子ではなく過酸化水素 HO2 になってしまい、話自体が違う話になってしまうということがわかります。

 また②の考え方より、右辺を   ◎◎  +   ● にすることは、

実際に自然界では 酸素原子O(●)が単独で存在することはなく、酸素の二原子分子O(●● )として存在することから、許されないということもわかるのです。

 ところが多くの生徒が、この①と②をほとんど意識していないところから推測するに

この重要な知識を学校でも問題集でも、強調して学ぶことが少ないのではないかと思います。

 特に②については、化学反応式を勉強していく際のおそらく一番重要な知識であるのに

明示的に意味を知っている生徒は少なく

「化学反応式では酸素はOで」というような覚え方をしている場合が多いように感じます。

だからたとえば塩素(Cl)や窒素(N)などの気体が登場した際にも、

これをClやNにして化学反応式を作ることができないという、応用の効かない状態になってしまうのです。

覚えておく肝心の部分

 このような部分は、学習をしていく際に

どのような分野の学習であっても登場してくる、いわゆるキモの部分(肝心な部分)だと言えます。

そして、この気体の二原子分子の法則(②)のように

明示的に書かれていなかったり、教えてもらえなかったりすることも少なくありません。

 何か新しい事を学んでいったときに

どうもすっきりしない、しっくりこないという場合には

こういう「肝心な部分を落としてしまっているかも知れない」という疑いを持つようにしましょう。

 実際にもこの②の部分については

実に多くの生徒がこれを知らず、この原則を教えたとたんに化学反応式を自由に書けるようになったという例がたくさんあります。

「先生、どうしてここは小さい2がつくのですか?」という質問も、過去に数限りなく受けています。

 肝心な部分を、十分に伝えない側にも大きな問題があると思いますが

「すっきりしない」のには大体において大きな理由があるものです。

まず調べたり、聞いてみることが大切ですね。

そして冒頭に述べたように「なぜそうなっているのだろう?」という疑問を常に持って学習にのぞむことが極めて重要だと思います。

今後も皆さんのお役に立つ情報をアップしていきます。

 

 

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