和風月名
日本では月には異名(異称)があります。たとえば三月は「弥生(やよい)」というような呼び方です。「和」のイメージで、素敵な響きがあります。
和風月名とも言われるこの呼び方は、意外に歴史が古く日本書紀にはすでに記載があったとされています。
元々の由来は中国から来たものと言われていますが、こういう呼び名は、現在使われている新暦(グレゴリオ暦)以前の旧暦(明治初めまで使われていた太陰太陽暦)下では、一般に使用されていたものでした。
最近になって再評価されて、学校でも習うようになりましたし、カレンダーなどにも記載があるようになりましたが、和風のイメージや響きに人気があるようです。
和風月名の一覧
和風月名を12か月並べるとこうなります。
1月 睦月(むつき)
由来はこちら 「なぜ1月を『睦月』と呼ぶのか?」
2月 如月(きさらぎ)
由来はこちら 「素敵な和の響きを持つ『如月』は2月を表す言葉」
3月 弥生(やよい)
由来はこちら 「3月はなぜ『弥生(彌生)』って呼ぶの?漢字『彌』に秘められた素敵な意味とは?」
4月 卯月(うづき)
由来はこちら 「4月は桜のイメージ。でも『桜月』でなくて『卯月』と呼ぶのには理由があります」
5月 五月(さつき)
由来はこちら 「五月晴れは『梅雨の合間の晴れ』だった」(本稿)
6月 水無月(みなづき)
由来はこちら「田に水があって雨も降るのに、なぜ6月は水無月? |
7月 文月(ふみづき)
由来はこちら 「暑いのに7月に執筆?読書?『文月』の由来とは?」
8月 葉月(はづき)
由来はこちら 「8月なのに『葉が落ちる月』?」
9月 長月(ながつき)
由来はこちら 「9月に長いものって一体何?『長月』の由来とは?」
10月 神無月(かんなづき)
由来はこちら 「10月には神様がいなくなる?・・・何と留守番もいました」
11月 霜月(しもつき)
由来はこちら 「霜って11月に降りるの?『霜降(そうこう)』との関係とは」
12月 師走(しわす)
五月(さつき)
5月の和風月名は「五月」と書いて「さつき」と読みます。
ただこれは新暦になってからの文字で、元々は「皐月(さつき)」という漢字で書かれていました。
「皐月」の「皐」は音読みが普通には「コウ」訓読みすると「さわ」と読み、「水辺の土地」という意味があります。また「白く輝く」というような意味もあるようです。
「皐月」全体では「早苗(さなえ・稲の若い苗)を植える時期」という事で「早苗月」ということから、それが「早月(さつき)」となり、最終的に「皐月(さつき)」となったというのが由来とされています。
そして「早」ではなく「皐」の字に「さ」が変わったのは、「神にささげる稲」という意味を読み込んだもののようです。五穀豊穣を願う昔の人々の気持ちが込められていたのでしょうね。
また上記のように「皐」には「水辺の土地」「白く輝く」という意味があるので、春の田の水面が日光に照らされてキラキラ輝いている所に早苗が生えている様子がイメージできるかと思います。
五月晴れ
五月というと「五月晴れ(さつきばれ)」と言う言葉が浮かんできます。
5月の晴れた日と言うイメージがありますが、元々は「梅雨の合間の晴れの日」の事を言いました。旧暦の5月は、時期としては現在の新暦では6月の梅雨の時期に当たる場合が多かったため「梅雨の晴れ間」や「梅雨の合間の晴天」と言う意味があったようです。
ただ現在では時期のずれもあるため、5月の春の晴天を「五月晴れ」と呼んでも良いのではないかと思います。運動会がこの時期に行われることも多くなりましたし…
五月雨(さみだれ)
同様に五月という言葉を含む言葉として「五月雨(さみだれ)」と言う言葉がありますが
これもご想像の通り、「梅雨時に続く小雨」のことを指します。
春に降る雨のイメージを抱きがちですが、暦のずれの関係で、梅雨の際の雨であり、3月4月に降る春雨というのとはちょっと違うのです。
新暦で5月はまさに春から夏へ移り変わりつつある時期です。
最近は5月の内に梅雨が始まる事もありますから、実際にはちょっと旧暦の頃の季節感と近くなっている部分もあるかも知れませんが、日本の季節感のある言葉というのは、背景を知ると面白いものがあります。
大切にしたいですね、こういう素敵な和の言葉や気持ちというものを・・・。